午後の授業も終わった放課後。そこにいつもの光景は存在しなかった。
「何事だぁ!?」
教室内に麗日の叫びが響く。ザワザワとA組の教室前で生徒が大量に集まり、大渋滞となっている。
敵襲撃事件は雄英の全校生徒に知らされている。
メディアにも取り上げられているし、知らない人は殆どいないだろう。
自分達と年が変わらない学生が敵の襲撃に耐え抜いたのだ。興味を持つのは当然と言える。
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ!」
「敵情視察だろ、雑魚。ヴィランの襲撃を経験した俺等だ。体育祭の前に見に来たんだろ」
峰田の疑問に爆豪が答える。然り気無くディスる爆豪に峰田は悔しそうな顔で爆豪を指差すが、緑谷から「あれがニュートラルだから」と慰められていた。爆豪はそんな峰田を無視してドアの前まで歩く。
「とりあえず、そこどけモブ共」
「取り敢えず知らない人達をモブって言うのは止めよう爆豪君!」
教室の前を遮っている生徒達を睨む爆豪。
後ろから飯田が注意するが効果は薄そうである。
「どんなもんかと見に来たが、偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?幻滅するなぁ」
「馬鹿言うな。常に喧嘩を安売りしてんのはコイツだけだ」
爆豪の発言に人混みを割って出てきたのは、目の下にクマができている生徒だった。明らかに爆豪というか、A組に挑発してきてるので狂夜は訂正を入れた。
「んだと、コラ!」
「悪いな、コイツは素でこうなんだ。で、オメー等は何のようだ?」
沸点の低い爆豪の隣に立ち、先程の生徒に話しかける狂夜。
「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構いるんだ、知ってた?体育祭のリザルトによれば、普通科からヒーロー科に編入検討をしてくれる。その逆もまた然りらしいよ」
個性の向き不向きで入試の試験を突破出来なかった者達が在籍する普通科や他科。成果を上げた普通科はヒーロー科に異動出来るかもしれないし、成果を残せないのならヒーロー科から普通科に移動もあり得る。
「少なくとも俺は調子に乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞって、宣戦布告しに来たつもり」
「そりゃ、随分とやる気だな。そりゃ結構……こんな真似してなければ……な」
先程の生徒の発言に並々ならぬ気迫を感じた狂夜。だが、それは真っ向から来た場合での事だ。
「へぇ……どういう意味だい?」
「宣戦布告は兎も角、ヒーロー目指す奴が教室を遠巻きにみたり、教室前を占拠して帰れなくしたり、陰湿な事してなければ……」
「ハッ……姑息って事だな」
狂夜の言葉を遮って爆豪が更なる挑発をした。
それぞれがガンを飛ばし合う中、A組の前を占拠してる集団の後ろの方から誰かが出てきた。
「隣のB組のモンだけどよ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思っていたんだがよ!エラく調子づいてんなオイッ!調子づいて体育祭本番で恥ずかしい事になんぞコラッ!」
A組前を占拠してる集団とは別にB組からも敵情視察に来ている者が居た。その様子を見て、A組全体で「また不敵な人キタ!」と心の中で思っていた。
「ちょっと鉄哲!迷惑かけてんじゃないよ!」
「何故、止める拳藤!俺は……」
鉄哲と呼ばれた生徒の前に同じくB組から拳藤が出てきた。拳藤は鉄哲を嗜めるが止まりそうにない。
「いや、恥ずかしい事になってんの、お前だからな。ヴィラン襲撃の件は情報漏洩を防ぐために箝口令敷かれてるって先生から聞かされなかったか?」
「な、なんだとっ!?」
「だから、止めに来たのに……」
狂夜の発言に鉄哲は驚愕し、拳藤は頭を痛そうに押さえた。
先生の話を聞かなかった上に違反を犯したとあっては鉄哲の立場がない。故に拳藤は止めに来たのだが間に合わなかった。
「恥ずかしいなヒーロー科……A組もB組もマトモなのが居ない」
「ああん、テメェはマトモなつもりか、モブが!」
「取り敢えず息を吸うように喧嘩を売るなよ!」
ヒーロー科全体を鼻で笑う目の下にクマを持つ生徒に爆豪が更なる挑発を重ね、峰田のツッコミが入る。
狂夜はいい加減呆れてきていた。今までの会話で周囲の生徒達からの視線も随分とキツい物になっていた。
「どうすんだよ、爆豪!オメーのせいでヘイトが集まりまくってんぞ!」
「関係ねえよ……上に上がりゃ関係ねぇ」
切島は慌てるが、爆豪はそんなこと問題じゃないと教室を出ていく。
爆豪の発言に全員が驚いて目を丸くして反論できなくなっていた。
「く……!シンプルで男らしいじゃねぇか!!」
「乗り越えるか……一理ある」
「爆豪……言うね」
「騙されんな、無駄に敵が増えただけだぞ!」
切島、常闇、砂藤、上鳴の順にコメントを溢していく。確かに不敵だったかもしれないが爆豪はこの場に居る誰よりも上を見ていた。
「先生方に注意される前にオメー等も帰ったら?」
狂夜の発言にA組前を占拠して生徒達はゾロゾロと帰っていく。先程、鉄哲に対していった言葉が効いているのかも知れない。
目の下にクマを持つ生徒は最後にA組を一睨みしながら、その集団と共に帰っていった。
「ゴメン、迷惑かけたね」
「まあ、こっちは構わないが……大丈夫かソイツ」
「俺は……俺はなんて事を……」
拳藤が狂夜に謝るが、狂夜は打ちひしがれてる鉄哲を気にしていた。
「後でブラド先生の所に行かせるよ。と言いつつ私も間桐が心配だったから話を聞きたかったけど」
「取り敢えず無事だから大丈夫。多くは語れないけどな」
拳藤も襲撃の話を聞きたかった様だが、先生の注意を聞いていたので狂夜の安否を確認したかったらしい。
「良かった……でも、体育祭じゃ負けないからね!」
「こっちも負ける気はねーよ」
狂夜の安否を確認出来た拳藤はビッと拳を狂夜に突き出す。先程までA組前を占拠して集団と違って清々しいと狂夜は思い、拳藤から突き出された拳に合わせる様にコツンと自分の拳を突き出した。
その光景を見ていた峰田と上鳴が悔しそうにしているのはご愛嬌。