轟の個性による凍結で足止めをしようとしたが、ある程度の人数を凍結させただけでA組を始めとするヒーロー科の生徒は回避していた様だ。
「クラスの奴等は当然にしろ…意外と残っちまったな」
「まあ、クラスの皆は予想してただろうからな」
「馬鹿め!お前らの裏の裏を読んでやったわ!」
先頭を轟と狂夜が並んで走る。その最中、そうは行くまいと言わんばかりに峰田が走り寄ってくる。
「ん?」
「お、無事だったか峰田」
「喰らえ!オイラの必殺グレー……ブルァァアッ!?」
峰田は頭の丸い髪を千切り掴んで轟を標的に定め、いざ投げようとした瞬間、突然横から鉄のような物体に突き飛ばされて飛んで行く。
『ターゲット、確認』
『ターゲット、大量』
「入試の時の仮想ヴィラン?」
「二体だけか?随分と少な……あ?」
峰田を突き飛ばしたのは入試の際に受験生が戦った仮想ヴィランだった。しかし、いくら仮想ヴィランだといっても二体だけで何が出来るのだろうか?そう思った狂夜だったが、その言葉は途中で言えなくなってしまう。
『さあ、最初の障害物と行こうじゃねーか!!』
プレゼント・マイクのアナウンスに狂夜のみならず、その場の全員が空を見上げた。
ただしくは前方なのだが、現れた物が巨大な為に見上げた者が多い。
ズシンと巨大な足音に皆驚きその音が発生したと思われる前方を確認する。
ヒーロー科の実技試験を受けた人ならば見覚えがあるだろう存在。
『まずは手始めの第1関門……【ロボ・インフェルノ】!』
プレゼント・マイクのアナウンスに皆が足を止めてそれを見た。そう、入試の0P仮想ヴィラン。そのサイズはビルにも匹敵する。しかも巨体が今回は一体だけではない。フィールド内に10体近くも道を塞いでいた。
「あれ、試験の時のドッスン!」
「あんなんと戦ってたのかよ、ヒーロー科!?」
「つーか、大量すぎて通れねぇ!」
道を塞がれた選手達は口々に叫ぶ。雄英の入試で出会っていなかったらヒーロー科の生徒達も同じリアクションだっただろう。
「一般入試用の仮想ヴィランって奴か」
「どこからこんなお金出てくるのかしら」
「あ、そっか。轟も八百万も推薦だったからコイツ等を知らないのか」
轟と八百万の発言に二人は推薦枠だった事を思いだし、推薦の入試では仮想ヴィランが出なかった事を知った。
狂夜がそんな事を考えていると、先頭に居た狂夜と轟に狙いを定めた0P仮想ヴィランが二人を潰さんとばかりに腕を振り下ろしてきた。
狂夜は後ろに退がろうとしたが、隣の轟は体勢を低く地面に手を這わせた。
「折角ならもっとスゲェの用意して欲しいもんだな……クソ親父が見てるんだからよ」
そう呟いて右腕を振り上げた隣。それと同時に生じた風が0P仮想ヴィランに命中すると、たちまち0P仮想ヴィランの全身が凍りついた。機能は停止し、腕を振り下ろすポーズのまま静止し続ける。
「こんなもんか」
「いやー……入試の時に苦労してたのが馬鹿みたいに感じるな」
凍らせた0P仮想ヴィランの間を走る轟とそれに並走する狂夜。
「アイツが止めたぞ!」
「今の内だ!」
「あの隙間から行けるわ!」
轟と狂夜に続き0P仮想ヴィランの下を走り抜けようとする生徒達。轟は振り返ると後を追う生徒達に話し掛ける。
「やめとけ、体勢悪い時に凍らせたから……」
「志村、上」
「ん?」
「ほえ?」
轟の発言と狂夜が右手の人差し指を上に示す。その意味が理解できなかった生徒達だったが、その意味を即座に知る事となる。何故ならば凍った0P仮想ヴィランがグラグラと体勢を傾き始め、そのまま前に倒れ込んで来たからである。
「崩れるぞ」
「忠告が遅かったかな」
『1-A轟!攻略と妨害を同時に行った!こいつぁ、シヴィー!と言うか隣の間桐は何もしてないのに、ちゃっかり先頭に居るのはズルりーぜ!』
『間桐は上手い位置を走ってるな。あの位置なら轟は間桐を妨害しにくい。あまり間桐ばかり妨害をしていれば後続に追い付かれる。間桐が轟の隣を走るのは合理的だ』
凄まじい音と振動が辺りに響く。そしてプレゼント・マイクは狂夜が何もしてないのがズルいと言うが相澤は狂夜をフォローしてくれていた。