バーサーカーのヒーローアカデミア   作:残月

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雄英体育祭③

 

 

狂夜と轟は第二関門『ザ・フォール』まで来ていた。

崖から複数の足場へと渡るロープ一本しかない綱渡りなのだが…ただの綱渡りで終わらないのが雄英体育祭。

 

 

「高ぇな、オイ。高所恐怖症の奴がいれば動けないで終わるぞ、これ」

「なら、好都合だ。先に行くぞ」

 

 

崖下を眺めながら、うわー……とコメントを溢す狂夜に轟は個性を使用してロープを凍らせて、その上を滑りながらロープを渡っていく。

 

 

「轟の個性ってオールマイティーだよ……なっ!」

 

 

今回は流石に轟の後を付いていくのを無理だと判断した狂夜。少し距離を離すと助走を付けて走り出してジャンプした。狂夜は距離の短い足場へと『狂化』で一瞬強化した脚力でジャンプして渡っていく。

 

 

『コイツぁー、シヴィー!A組の轟はロープを凍らせて滑って進み、間桐は距離の短い足場をジャンプして行く!進み方は違うが先頭争いだぁ!』

『轟は直線距離で短いルートを選んでいるが間桐は足場の距離が短いルートを選んでる。少し遠回りだが足場から足場への移動時間は短い、ほぼ同タイムに到着するな』

 

 

プレゼント・マイクのコメントに相澤は説明をする。そして相澤の説明した通り狂夜と轟はほぼ同着で第二関門をクリアした。

 

 

「ほば……ぜぇ……同じか……ぜぇ……」

「息切れしながら言うか……無茶すんな」

 

 

しかし狂夜は体力を消費していた。短い足場を渡るルートを選んだ結果遠回りをする羽目になり、その度に個性を使用していた為に体力の消耗が轟よりも大きかった。

 

 

「逃がすかクソ共がぁ!」

「やべ……爆豪が追い付いてきた」

「アイツ、スロースターターだったのか」

 

 

連続で爆破を起こし、空を飛んでどんどん進んでいく爆豪。

更にその後ろには飯田が追いかけていた。

 

 

「恐らく、兄も見ているのだ…カッコ悪い様は見せられん!」

『カッコ悪ィィィィィッ!』

 

 

足のエンジンを鳴らしながらロープを一直線に進んでいく飯田。バランスを取りつつ、速度を緩めることなく直進していくが、ポーズが格好悪いせいで色々と台無しだった。寧ろ、その様は笑いを誘う。

 

 

 

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態。上位何名が通過するかは公表していないから安心して進め!。そして早くも先頭集団は最終関門まで辿り着いてんぞ!。最後の障害物、その実態は一面地雷原の『怒りのアフガン』!』

 

 

狂夜、轟、爆豪の目の前には有刺鉄線で囲まれた地雷原が広がっていた。よく見ればコースの看板には『danger』の文字が刻まれている。

 

 

『目を酷使すれば地雷の位置はよく見れば分かる仕様になっている。ちなみに地雷の威力は大したことはないが音と見た目は派手なので失禁必至だぜ!』

『人によるだろ』

 

 

プレゼント・マイクのアナウンスに相澤がツッコミを入れた。威力が大した事がないと言っても地雷原を走れとは酷である。

 

 

「先頭ほど不利な障害だな、これ」

「エンターテイメントだな」

「はっはー!俺には関係無ぇ!」

 

 

狂夜は足を止めてしまったが、轟は地雷の埋まっている地面を凍らせながら氷の道を走って行きながら炎で溶かしていく。爆破で空中移動ができる爆豪は一面の地雷を避けて、飛んで行く。それを見た狂夜は慌てて立ち止まっていた足を動かすが地雷を踏まない様に進む為に明らかにペースダウンしていた。

 

 

「ヤバっ……って言ってもさっきみたいにジャンプじゃ無理だなコレは……」

『おーっと!轟と爆豪は颯爽と進むが間桐は足止めを食らった!これで先頭争いは間桐、轟から轟、爆豪に変わった!』

『間桐の個性では地雷原を抜けにくい。第二関門の時みたいにジャンプして着地地点に地雷があったら洒落にならんからな』

 

 

先程までと違って明らかに移動速度が落ちた狂夜に、プレゼント・マイクのアナウンスと相澤の解説が入る。ジャンプして進もうかと思った狂夜だが相澤の指摘通り、着地地点の事を考えると実行できなかった。

 

 

その時だった。後方からの大爆発音が鳴り響く。それと同時に破壊された仮想ヴィランのパーツに乗った緑谷が空を飛んでいた。

緑谷は壊された仮想敵ロボのパーツを使い、地面に埋められている地雷を掘って数十個程度集めていた。

仮想敵ロボの装甲を盾にしながら、集めた地雷を全部同時に起爆させて大爆発を起こした。爆豪と同じように爆発を利用した大爆速ターボで一気に一位に躍り出た。

 

 

『後方で大爆発!?何だ!?あの威力!?A組緑谷爆風で猛追ぃぃぃぃっ!!?』

「げ、緑谷まで前に出てきた!?どうする?どうすれば……あ」

 

 

突然、緑谷が先頭に出た事で狂夜は更に焦る。先程まで先頭争いをしていたのが地雷原に足を止めてしまい、後続に追い付かれつつ状況に焦る狂夜は辺りを見回して、ある事を思い付いた。

 

一方で爆豪と轟は、緑谷に追い抜かれた事で足の引っ張りあいを止めると直ぐに緑谷を追い始める。

 

 

『元・先頭の2人、足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!共通の敵が現れれば人は争いを止める!争いはなくならないがな!』

『何言ってんだ、お前』

 

 

プレゼント・マイクのコメント通り、緑谷に先を越された轟と爆豪は走り出していた。その背後から自身達に追い付いた影に気づかないまま。

 

 

『緑谷、間髪入れず後続妨害!なんと地雷原即クリア!イレイザーヘッドお前のクラスすげぇな!どういう教育してんだ!』

『俺は何もしてねぇよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろう』

 

 

そして再びの大爆発。緑谷は轟と爆豪に追い抜かれない為に再び、仮想ヴィランのパーツを地面に叩き付け、爆発で加速を付けて先頭に躍り出た。更に爆発で轟と爆豪は足止めをされてしまう。

一番最初に戻ってきた生徒が確認されるとスタジアム内からはプレゼント・マイクの実況が聞こえてくる。

 

 

『さぁさぁ、序盤の展開から誰が予想出来た!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男、緑谷出久の存在を!!』

 

 

大歓声に包まれるスタジアム。中継を見ていた者達は次いでスタジアムに来るのは轟か爆豪だと予想していたが、予想外の人物が二位通過してきた事に驚愕する。

 

 

『ってアレェ!?なんで間桐!?地雷原で遅れてなかった!?』

『お前が気付いてなかっただけだ。間桐は緑谷達が競いあってる最中、地雷原を囲ってる有刺鉄線の杭を足場にジャンプして進んで轟と爆豪を追い抜いたんだ。地雷原を囲ってる有刺鉄線の杭を走ったから遠回りになったが後から追い越したんだろ』

 

 

観客やプレゼント・マイクは驚いていたが相澤は狂夜を見ていたらしい。相澤の解説通り、狂夜は緑谷に追い抜かれた段階でコースの端に行くと、有刺鉄線を刺している杭の上に乗るとジャンプを繰り返して進んでいき最後には轟と爆豪を追い抜いた。緑谷の妨害もアシストされ、緑谷の次に狂夜は二位通過を果たしたのだ。

 

 

「悪いな、先に行かせてもらったぜ」

「ちっ……クソがっ!」

 

 

狂夜の発言に爆豪は明らかに舌打ちをして轟は無言のまま狂夜と緑谷を見詰めていた。

そして順次後続がゴールしていく。順位が決まるまで予選通過が決まらないので少しインターバルとなった。


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