バーサーカーのヒーローアカデミア   作:残月

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雄英体育祭⑧

 

 

 

「悪かったな、飯田。やりすぎた」

「いや、それだけ全力で戦ってくれたと言う事だろう」

 

 

 

試合終了後、ダメージが大きかった飯田に謝る狂夜だったが真剣勝負だったのだから気にするなと言われていた。

 

 

「それに手加減……と言うか、こちらに気を使った戦い方でもあっただろう?あの時、背中から投げ落とされたからダメージも少なかった訳だしな」

「ああ……確かに頭から落としてたらジャイアントスイングまでいかなかっただろうからな」

「確かにパワースラムじゃなくてパイルドライバーだったら確実にK.O.されてただろうね……」

 

 

飯田の言葉に砂藤や尾白が納得する。狂化で理性が少なからず薄れていた狂夜でも相手を気遣った戦いをしていたと判断された。

 

 

「さてと……そうなると次は……」

 

 

狂夜が呟くと共にスクリーンに視線を移すと三回戦の対戦表が映し出される。

 

 

第一試合 間桐VS轟

 

第二試合 常闇VS爆豪

 

 

「次は手加減とか気遣いとか考えられねーな。じゃないと……『どんまい』ってなってしまう」

「言うなよ、チキショー……」

 

 

狂夜の発言に瀬呂がへこむ。試合結果を気にしていたらしい。そんな瀬呂に笑みを浮かべてから狂夜はリングへと向かった。

 

 

第一試合

『間桐VS轟』

 

 

「さぁて……どーすっかな」

「………」

 

 

試合開始前に対峙する狂夜と轟。

スクワットをして、轟とどう戦うか悩む狂夜に無言で俯く轟。

その姿は対照的で戦いに望む者と悩む者に分けられていた。

 

 

 

『それでは三回戦レディ……ゴー!!』

「おおっと!」

 

 

試合開始と同時に狂夜を凍結させようと氷を放つ轟に狂夜は跳躍し、地を這う氷を避けた。

 

 

「何度もやってれば見切れるっての!」

「……そうかよ」

 

 

氷を飛び越えた狂夜はそのまま蹴りを放つが轟は体勢を低くして、それを避ける。

 

 

「だったら……こうだ!」

「なっ!」

 

 

轟は狂夜に凍結攻撃が効かないと判断すると周囲に氷の壁や氷の刺を発生させる。その氷はリングや場外にも及ぶ。

 

 

「お前の戦いはパワーを活かしたものに見えるが基本的には狂化で増したスピードが主体が多い。こうすりゃ動けねぇだろ」

「おいおい……デスマッチじゃねえんだぞ」

 

 

轟が作り上げた氷の結界。それは狂夜の動きを封じる為の戦法だった。更に轟は動きを封じた上で狂夜を凍らせようと氷を放つ。

 

 

「GRUAAAAAAAAA!!」

「なんだとっ!?」

 

 

狂夜は『狂化』を発動し、地面を這う氷を砕く。更に狂夜は砕いた氷を掴むと轟に向かって豪速球を投げる。

 

 

『おーっと、間桐。砕いた氷を轟に向かって投げる!物凄いスピードだ!』

『狂化のパワーで加速された氷は最早、弾丸と変わらんな。当たれば大ダメージだ』

 

 

 

プレゼントマイクと相澤の解説通り、狂夜の投げた氷は凄まじいスピードとパワーで轟を狙いつける。更に轟は避けているが避けられた弾丸は周囲の氷の結界を砕いていく。

しかし、狂夜の狙いはそれだけではなかった。

 

 

「何っ!?ぐうっ!」

『氷の弾丸の嵐を投げ込んでいた間桐だが、一瞬の隙を突いて轟の背後を取った!チョークスリーパーだ!』

『氷の弾丸は周囲の氷の結界を砕くと同時に目眩ましだったな。本当の狙いは接近する為か』

 

 

プレゼントマイクと相澤の解説している様に狂夜は轟の背後を取ると首に腕を回し、チョークスリーパーの体勢になっていた。

 

 

「て、め……」

「このまま勝負を決めさせてもらうぞ。凍らせたとしても俺のフックを外せるかな?」

 

 

狂夜がチョークスリーパーを選んだのは凍結させられる事を防ぐ為である。仮にこのまま狂夜を凍らせてしまえば轟は首を絞められたまま狂夜を固定する事になる。そんな事をしてしまえばダブルK.O.の可能性が高くなるだけだ。

 

 

「ぐ……が……」

「ギブアップか?それとも……って熱!」

 

 

轟にギブアップを進めようとした狂夜だが突然感じた熱さに思わずロックしていた腕を離してしまう。

轟から離れた狂夜が視線を轟に戻すと轟は半身から炎を燃え上がらせていた。

 

 

「そうなる前に……決着をつけたかったんだがな」

「ちっ……クソ……」

 

 

狂夜の呟きに轟は舌打ちと共に炎を更に燃え上がらせていた。狂夜は氷柱を引き抜くと狂化を再び発動させて轟に迫る。

 

 

『氷柱を持った間桐、それを剣みたいに扱って轟に迫る!対する轟は防戦一方だ!』

「quick!」

「氷が溶けねぇ……どうなってんだ?」

 

 

狂夜が持つ氷柱を溶かそうと炎を放つ轟だが狂夜は手にした氷柱で逆に炎を斬り裂いた。

轟の呟き通り、何故か狂夜の持った氷柱は炎を浴びても溶けなかったのだ。そして、その隙は決定打となった。

 

 

「burst!」

「ぐおっ!?」

 

 

氷柱を投げ捨てた狂夜は右拳を鳩尾に叩き込んだ。その威力に轟の体は宙に浮き、更に場外にも吹き飛ばされる。

 

 

『クリティカルヒット!轟、遂に場外か……って、あれ?』

 

 

 

プレゼントマイクは解説の途中で気の抜けた声を上げる。それもその筈、狂夜は吹き飛ばした轟の後を追うと轟の体を反対方向へと蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた轟はリングの中央に戻され、逆に狂夜は場外の氷の塊に頭から突っ込んだ。

 

 

『えーっと……間桐の場外負け?』

『さっき吹き飛ばされた轟があのまま場外に行くと尖った氷柱の塊に突っ込む所だった。意識が朦朧としていた轟は受け身が取れそうになかった。それに気付いた間桐は轟を助ける為にリングに戻し、自分が氷の塊に突っ込んだんだ』

 

 

呆然と呟いたプレゼントマイクの発言は観客達の言葉を代弁したかの様な物だった。それに対し相澤の解説が入り、観客達は漸く事態を把握していた。

リングに戻された轟は信じられない物を見る目で狂夜が突っ込んだ氷の塊を見詰めていた。

 

 

『間桐君、場外!よって勝者、轟君!』

 

 

結果がどうであれ、ルール上で場外となった狂夜は敗けと判定された。

 

 

 

 

 

『勝者 轟』

 


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