バーサーカーのヒーローアカデミア   作:残月

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入試試験②

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 

狂夜は3P仮想敵を蹴り飛ばし、その反動で素早く近くに居た1P仮想敵に飛びかかる。

 

 

「これで!確か35ポイントくらいか?」

 

 

1P仮想敵を力任せにバキッ!と捻り上げて破壊する狂夜。『狂化』でパワーを増した体で仮想敵を破壊、この作業を繰り返して正確な数を数えてはいない狂夜だが、既に35ポイントを稼いでいた。

 

 

もう少しポイント稼ぎたいけど仮想敵も減ってきたか? 狂夜がそんな事を思っていると、地面が揺れる位の地鳴りを感じた。何事かと地鳴りの響く方に視線を移してみると、立ち並ぶビルと同じ位の大きさのロボットが顔を覗かせていた。その大きさ故に地面を踏んだ時の揺れは半端じゃない程にデカイものだった。 

 

 

「あ、あんな化け物もこの試験に出るのかよ!?」

「なんでもありか雄英!?」

「あんなの相手にしてられっか!」

「今は他の場所に!」

「0Pなら逃げないと!」

 

 

その場に居た他の受験生達は我先にと逃げ始めていた。狂夜もポイントの無い相手だし俺もサッサッと離れるか。そう思った次の瞬間、見覚えのあるモサモサ頭の少年が飛び出していた。

 

 

「な、アイツ!?」

 

 

狂夜は驚いた。先程までビクビクしてた奴が0Pに立ち向かった事や一瞬であの場まで跳ぶ跳躍力。何よりも一瞬で自分達を追い抜いたモサモサ頭の少年の姿は、この場にいる誰よりも『ヒーロー』だった。

 

 

「だけど、急にどうし……って、まさか」

 

 

モサモサ頭の少年走り出した方角。つまりは0P仮想敵の足元。そこに茶髪の女の子が動けずにいた。つまりモサモサ頭はポイント関係なく、女の子を助ける為に仮想敵に突っ込んで行ったのだ。

狂夜が驚いたま呆然としているとモサモサ頭の少年は大きく拳を振りかぶった。そして……

 

 

「スマァァァァァシュ!!」

 

 

モサモサ頭の少年はオールマイトと同じ掛け声と共に拳を振り抜き、0P仮想敵を一発で吹っ飛ばしてしまった。

 

 

「って、なんか様子が……まさか!?」

「お、おい!待ちたまえ!」

 

 

嫌な予感がした狂夜は駆け出した。聞き覚えのある声が聞こえたが、狂夜はそれどころじゃない。モサモサ頭の少年は慌てた様子で自由落下している。受け身は明らかに取れそうにない。

 

 

「間に合うか……いや、間に合わせる!」

 

 

そう言って狂夜は自身の『狂化』のパワーを増した。一瞬目眩がしたが、自身の体に駆け巡る力が増した事を感じると狂夜は加速しながらモサモサ頭の少年の救出に向かった。

ほんの僅かな距離が届かないかと思ったが、先程の茶髪の女の子が瓦礫を浮かして宙を舞い、モサモサ頭の少年の事も浮かした。だが、そんな彼等の頭上に先程、モサモサ頭の少年が吹っ飛ばした仮想敵の破片や残骸が降り注がれそうになっていた。

それを見た狂夜は飛び上がり、落ちてくる破片に拳を振り抜いた。

 

 

「ULAAAAAAAAA!」

 

 

狂夜は、モサモサ頭の少年が吹っ飛ばした0P仮想敵の破片や残骸がモサモサ頭の少年や茶髪の女の子に降り注ぎそうだったので、拳や蹴りを駆使して破片や残骸を弾く。これでひと安心と気を抜いた狂夜の耳に、茶髪の女の子の苦しそうな声が届く。

 

 

「う、うぷ……けぽぽぽぽぽ……」

 

 

茶髪の女の子は青い顔をしたと思ったら盛大にリバースした。多分、個性の使いすぎでキャパオーバーしたのだろう。狂夜がその光景を見ないようにと顔を背けたのは武士の情けである。

そう思った狂夜の視界の端で何かが動いた。

 

 

「ワン……ポイント……せめてワンポイントでも……取らないと……」

 

 

それは狂夜の足元からだった。先程助けたモサモサ頭の少年は唯一無事だった左腕で這って前に進もうとしてる。まさか、0Pの後がない状況で助けに行ったのかと驚く狂夜。

 

 

「試験終了!」

 

 

そして無慈悲にもプレゼント・マイクの叫びと同時にブザーが鳴る。それは実技試験が終了したという事だ。

 

 

「そ、そん……な……」

「おい、大丈夫か!?」

 

 

モサモサ頭の少年は絶望からなのか、そのまま気絶してしまった。周りの受験生は凄い個性だとか言うだけでモサモサ頭の少年を助けようと動くものはおらず、狂夜はその事に苛立ちを感じていた。

 

 

「は~い、お疲れさま~お疲れ様、お疲れ様。はいはいグミだよ、グミお食べ」

「あっ、あざっす」

 

 

そんな狂夜の気持ちを察してなのか救護班が丁度到着する。その人物はリカバリーガール。雄英高の看護教員である。だが、何故かリカバリーガールは受験生にグミを配っていた。

狂夜は自身の『個性』を解除するとリカバリーガールに叫んだ。

 

 

「怪我人がいる!かなり重症だ!」

「はいはい。おやまぁ……自身の個性でこうも傷つくかい」

 

 

リカバリーガールは狂夜に支えれながら横たわるモサモサ頭の少年の前に立つと、いきなり唇を伸ばしてきた。

 

 

「チユ~」

 

 

リカバリーガールは伸ばした唇でモサモサ頭の少年の頭にキスをした。突然の事態に狂夜は固まるが、モサモサ頭の少年の腫れあがった右腕と両足が、みるみると元通りになっていくのを見てホッと溜め息をついた。

 

 

「傷は治したから後は起きるのを待つだけだよ。アンタ、悪いんだけど搬送ロボが来るから、その子を乗せてやってくれないかい?」

「分かりました……おい、持ち上げるからな」

 

 

リカバリーガールに頼まれて狂夜はモサモサ頭の少年を抱き抱え、担架を運んできた搬送ロボへ乗せる。そしてモサモサ頭の少年の安否も気になっていたので医務室へと歩き始める。

 

 

「気絶しちまったけど……コイツは今日一番カッコいいヒーローだな」

 

 

狂夜は気絶してるモサモサ頭の少年を見ながら、そう呟いた。

その後、狂夜は気絶したモサモサ頭の少年が目覚めるまで待とうとしたが中々起きず、最終的にプレゼント・マイクから帰るように促されて渋々、家路についた狂夜。

 

狂夜は合格通知が届く一週間程の間、受験合否とモサモサ頭の少年の安否を心配する日々を過ごす事となる。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

受験から既に一週間、狂夜は落ち着きの無い日々を過ごしていた。それというのも、家に帰ってから筆記試験の結果を自己採点してみたのだが、その結果は下手をすれば不合格になるかもしれない結果だったのだ。

 

 

「もう、兄さん。そんなに心配しないでも大丈夫ですよ」

「そうは言っても心配なんだよ」

 

 

桜は狂夜に心配ないと告げるが狂夜は不安だと呟く。寧ろ、何故に桜は此処まで大丈夫だと念を押すのか逆に聞きたくなっていた。

 

 

「だって……兄さんは頑張ったじゃないですか。それに先輩も大丈夫って言ってましたよ?」

「頑張ったのは他の人も同じだし……先輩の話は少し当てにならないし」

 

 

桜が大丈夫と念を押し、更にいつの間にか知り合いの先輩にも連絡をしていたらしい。狂夜と桜にとって共通の知り合いである先輩の太鼓判があったらしいが、狂夜からしてみれば正直、心配が増しただけである。

 

 

「もう、酷いですよ兄さん。先輩は頼りになる人なんですから」

「そりゃ……わかってるんだけどな」

 

 

そう言ってリビングから出ていく桜。狂夜はその先輩に過去に世話になっていたから彼女の事は信頼している。だが、それと受験の合否は別である。

因みに本日、雁夜は仕事で家には居なかったりする。

 

 

「そういや……先輩も雄英に受かるまでは部活の時もぼんやりとしてたっけ」

 

 

狂夜が思い出すのは先輩が合否の結果が出るまで引退した部活に幾度となく顔を出していた時の事だった。思えば妙にそわそわしていたなと先輩とよく顔を会わせていた頃を思い出していた。

 

 

「に、ににに兄さん!」

「落ち着け、桜。どうした?」

 

 

ぼんやりと先輩の事を考えていた狂夜だが、その思考は慌てた様子でリビングに飛び込んできた桜によって中断される。

 

 

「き、来ました雄英からのお手紙!」

「……遂に来たか」

 

 

狂夜は手紙を受けとると自分の部屋へと戻った。合否の結果は先ずは自身で確認しなければならないからだ。

狂夜は手紙の封を切る。すると中には一枚の小さな円盤が同封されていた。

 

 

『私が投影された!』

「うわっ!オールマイト!?」

 

 

突然、小さな円盤が光ったかと思うと渋い声と共に眼前一杯に人の顔が映し出された。その人物はナンバーワン、ヒーローのオールマイトだった。

 

 

『色々と話はしたいが先に合否の発表から行こう!安心したまえ!君は合格だ!』

「よっしゃ!」

 

 

オールマイトから合格通知を告げられると狂夜は立ち上がり、ガッツポーズを取った。そんな狂夜を尻目にメッセージは続く。

 

 

『筆記は合格ラインギリギリだったが、実技は飛び抜けていて、合格ラインを超えて合格だ!』

「良かった……でも、ギリギリだったか……」

 

 

実技は兎も角、筆記に不安を感じていた狂夜はギリギリの合格だった事に安堵を感じる。そしてオールマイトの話は終わっていなかった

 

 

『そして先の入試!見ていたのは敵ポイントのみにあらず!』

 

 

オールマイトは手で×を作ると新しい画面が映った。

 

 

『救助活動、レスキューポイント!しかも審査制!我々、雄英が見ていたもう一つの基礎能力!間桐狂夜、君のレスキューポイントは40点!レスキューポイントだけなら三位だ!』

「おいおい、マジですか……」

 

 

筆記と実技だけではなく、他の審査も極秘に行われていた事に驚きを隠せない狂夜。実のところ、狂夜は仮想敵を倒す中で他の受験生が危ないと思った際には、庇うように飛び出して仮想敵の殲滅を優先させていた。

それに加えてモサモサ頭の少年と茶髪の女の子を助けたのも大きいところだろう。

  

 

『来いよ間桐少年!雄英……ここが君のヒーローアカデミアだ!』

「よっしゃ……合格、やってやろうじゃん!」

 

 

この日、狂夜は雄英行きのキップを手に入れた。そして桜に合格を告げると桜は両手を上げて喜び、この日は桜が存分に料理の腕を奮ってご馳走となった。

 

 

「ああ、親父?雄英から手紙来て……ああ。合格」

『そうか……頑張るんだぞ狂夜……』

 

 

夕食を済ませた狂夜は夜になってから義理の父である雁夜に電話をしていた。勿論、雄英の合格を伝える為である。

 

 

『本当なら直接誉めてやりたいんだがな』

「親父も仕事なんだ、仕方ないのはわかってるよ」

 

 

電話口で悔しそうにしている雁夜に狂夜は仕方ないと告げた。狂夜や桜が小さい頃は逆に雁夜に迷惑をかけてばかりだったから今は我慢するよ、と遠回しに告げていた狂夜。

 

 

『頼もしくなったもんだな。帰ったらお祝い、楽しみにしとけよ?』

「ああ……そうする」

 

 

雁夜に雄英の合否を告げた後、狂夜は次の電話相手にコールした。

 

 

『もしもし。狂夜君、どうしたの?あ、試験どうだった?合格した?合格したよねー?』

「お久しぶりです、先輩。雄英に合格したんで、その報告をと思いまして」

 

 

電話の相手は件の先輩だった。狂夜が合格したと告げる前から質問攻めだった。そして狂夜の報告を聞いた先輩のテンションは最高潮になっていた。

 

 

『受かったんだ!良かった、これでまた一緒の学校だね!先輩になんでも聞いて良いよ!』

「相変わらずッスね、先輩。そんときはヨロシクお願いします。んじゃ、今日はこの辺で失礼します」

 

 

夜も遅いので電話を切った狂夜は天真爛漫な先輩の事を思い出してい改めて雄英に受かったんだな……と笑みを浮かべた。

 

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