それぞれのヒーロー名が決まって、次は職場体験にどのヒーローの下へ行くか、悩んでいた。
「え、轟は親父さんの所に行くのか?」
「……ああ、色んなもんから逃げるのも、目を逸らすのも止めたんだ」
何処に行くかを話し合っていた狂夜と轟。その中で轟は自身の父であるエンデヴァーの所へと職場体験に行くと決めた事に狂夜は驚きを隠せなかった。
「間桐はどうするんだ?」
「まだ悩み中。出来たら個性を頻繁に使うヒーローの所に行きたいんだがな。コントロールのコツを聞きたいし」
クラスの何人かは即決で決めたが狂夜も含めて、決めあぐねている者もいる。狂夜と同じ様にまだ決めていない緑谷はブツブツと自己分析をしながら、近寄りがたい雰囲気を出しながらノートを書いていた。
その日の授業を終えて放課後になっても狂夜は職場体験先に悩んでいた。
「いっそ、直感で決めるのもありかもよ?」
「オイラみたいに決めるのもありだぜ!」
「うーん、それも考えたんだよなぁ」
机に項垂れながら、悩む狂夜に芦戸や峰田がアドバイスを送り、狂夜はリストアップされたヒーロー事務所を見ながら悩み続けていた。
「あれ、緑谷は?」
「ああ、間桐が悩んでる間にオールマイトが来て、連れて行ったよ」
自身と同じ様に悩んでいた緑谷が居ない事に漸く気付いた狂夜。それを見ていた上鳴が教えてくれた。
「オールマイトが?んじゃ、緑谷も指名が無かったけど目ぼしいヒーロー事務所でもあったのかな?」
緑谷とオールマイトは接点が多い事を狂夜は知っていたし、緑谷は指名が無かったから相談にでも乗っていたのだろうと考えていた。
「俺も先生方に相談すっかなー」
狂夜はリストと睨めっこをするだけの結果になり、その日は決まらず悩み続けて、翌日にあるヒーローの所への職場体験を決めた。そして職場体験当日。駅に集合した後にそれぞれのヒーロー事務所に行く事となり、担任の相澤から注意事項を説明され、気を付けて行く様にと促され、それぞれが新幹線に乗って、ヒーロー事務所へと向かって行った。
「間桐と耳郎はオイラと事務所が近いな」
「良くも悪くも一緒に行動してるヒーロー達が集まってる街だからな。もしかしたら何処かで会うかもな」
「チームアップとかで合同で動く時に一緒になりそう。ウチ達は職場体験だから手伝うくらいだろうけど」
おおよその行先が同じな狂夜、峰田、耳郎は並んで話をしながら一緒に電車に乗り込み、談笑を続けていた。本来なら緊張しそうなものだが、友達と会話しながら移動しているから緊張感も薄れて行った。
「此処からは別行動だな」
「うっひょー!美女がオイラを待ってるぜー!」
目的の駅に到着すると峰田は目を血走らせながら足速に駆けて行った。欲望丸出しの顔で。
「何考えてるか、分かりやすいなアレ」
「本当に男って……って間桐を前にして言う事じゃ無いか」
峰田の背を見送る形になった狂夜と耳郎は苦笑いを浮かべながら会話を続ける。並んで駅から出ると揃って立ち止まる。
「んじゃ、俺もこっちだから。そっちも頑張れよ」
「うん、お互いにね」
駅を出れば行き先はそれぞれ違う。峰田は先に行ってしまったし、耳郎とも分かれた狂夜は一人、目的地まで歩こうとしたが足を止めた。
「まさか、お出迎えしてくれるなんて思いませんでしたよ」
「何、パトロールのついでで来たんだ。気にするな、それよりも我の所に来た事を感謝するぞ」
足を止めた狂夜の前にスタっと人影が降り立つ。そのヒーローが誰なのか確認した狂夜は「これから、お世話になるのに気を使わせた。いや、木かな?」と苦笑いを浮かべる。
「ようこそ、我の職場体験へ。歓迎するぞ、バーサーカー」
「一週間、お世話になります。シンリンカムイ」
パトロールついでに狂夜を駅に迎えに来たのは若手実力派ヒーローのシンリンカムイだった。