バーサーカーのヒーローアカデミア   作:残月

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職場体験①

 

 

シンリンカムイの指名を受けた狂夜。一週間の職場体験を共に過ごす事となる。狂夜はヒーロースーツに身を包みシンリンカムイの隣を歩きながらパトロールとなった。

 

 

「我々はヒーローとは言っても国から給料を貰っているので一応公務員だが成り立ち故に公務員とは何もかも著しく違う。仕事の基本は犯罪の取り締まり。事件発生時に警察から応援要請が届き出動となる。事務所に待機しているヒーローも居れば我の様に常にパトロールをしているヒーローもいる」

「成る程……事件の時に直ぐに動くか、有事に備えて待機するかの差って事ですか」

 

 

シンリンカムイの説明に狂夜は自分なりの解釈を言うとシンリンカムイは頷く。

 

 

「そうだ。そして貢献した度合いにより専門機関の調査を経て給料と言う形で報酬が支払われる。我は事務所に籠るよりもパトロールで市民の安全や事件への対処を優先している」

「そして、それをマウントレディに横取りされた、と」

 

 

狂夜の一言にシンリンカムイは「うぐっ」と言葉を詰まらせる。事務所が近い事もあり、シンリンカムイとマウントレディは現場が一緒になる事が多い。狂夜の言った事とはシンリンカムイの現場に現れたマウントレディに何度か手柄を奪われた事である。

 

 

「そうならぬ様に……パトロールを強化せねば……」

「警戒してるのはヴィラン?それともマウントレディ?」

 

 

目が血走ってるシンリンカムイに狂夜はどっちに警戒してるんだか……と思ってしまう。でも現場で一緒になる事もあるんだし、相性は悪くないとは思うんだけど……と考えていた。

この日はパトロールはしていたもののヴィランは現れず、ひたすらパトロールだけとなってしまった。

 

それから三日後。毎日、変わらぬパトロールをしている最中、シンリンカムイが口を開いた。

 

 

「この数日見ていたが……キミは個性の使用を控えているんだな。怯えていると言っても良い様に見えたが」

「俺の個性はハッキリ言ってヴィラン寄りなんです。何度も使ったり、使用時間が長いと暴走してしまうので」

 

 

シンリンカムイに指摘された通り、狂夜は個性をなるべく使わない様にしていた。必要な時にしか使わず、使用時間も短く。それは雄英に入学する以前からのスタイルだった。

 

 

「『狂化』か……確かに凶悪な個性の様にも見えるが、それはキミが未熟だからだ。強過ぎる個性に体も心も追いついていないのだろう。個性を恐れるのは必要だ。だが、怯えて使わなければ成長もしないだろう」

「成長……か」

 

 

シンリンカムイの言葉に狂夜は立ち止まり、自分の掌を見つめた。言われてみれば確かに狂夜は自身の個性を恐れて必要最低限しか使って来なかった。だが、それは自身の成長を止めていたのと同義だ。

 

 

「恐らくキミが個性に飲まれてしまうのは慣れていないからだ。限界を知り、努力を惜しむな。何、心配するな。安心して失敗しろ。何の為の職場体験だ」

「シンリンカムイ……はい!」

 

 

シンリンカムイの宣言に感動した狂夜。その時だった。

 

 

「ご、強盗だーっ!」

「事件か!ついて来い、バーサーカー!」

「はい!」

 

突如、街中に響き渡る悲鳴。シンリンカムイは即座に切り替えて事件現場に向かおうとする。狂夜もシンリンカムイの後を追って走り出した。

個性を使い、ビルからビルへと飛び移るシンリンカムイを狂夜は前に気をつけながら走って追った。個性を使ってジャンプして追おうかと思ったが許可も無くやる訳にはいかないので見失わない様に気を付けながら走る事を選択したのだ。

 

 

「あれ、間桐?」

「お、耳郎……とデステゴロ」

「お前、シンリンカムイの所の職場体験か?シンリンカムイはどうした?」

 

 

同じ様に通報を聞き、駆け付けたデステゴロと耳郎が走ってきた。デステゴロは兎も角、耳郎は疲弊している感じが出ていて心配になったが狂夜はデステゴロの質問に答える事にした。

 

 

「彼処です。個性を使用して飛んで行っちゃったんで、こっちは地道に走って追いかけてました」

「アイツの個性は応用が効くからな。お、あの場所か!」

 

 

 

現場に急ぐシンリンカムイと距離が空いてしまってはいるが、シンリンカムイがビルから地上に降りていくのが見えたデステゴロは彼処が現場なのだと確信して叫ぶ。

 

 

「イヤホンジャックは避難誘導と怪我人が居た場合救助に回れ!お前は……」

「シンリンカムイに追い付いてから指示を仰ぎます!」

 

 

耳郎に指示を出すデステゴロに対し、狂夜は個性を発動せずに加速しながら答えた。現場に到着すると二人のヴィランがシンリンカムイと対峙していた。片方はシンリンカムイの個性で捕縛されているが、もう片方のヴィランは札束の入った鞄を抱えて逃げようとしているがシンリンカムイを警戒しているのか、仲間を助けようとしているのか睨み合いが続いていた。

 

 

「もう貴様等は逃げられん。投降しろ!」

「へっ……誰が降参なんかするかよ、そりゃ!」

 

 

するとシンリンカムイが捕まえていたヴィランの体から煙が吹き出して周囲を煙で覆った。

 

 

「煙幕か?ぬおっ!?」

「ハハハッ!あばよ!」

「シンリンカムイ、状況は……なんだ、これ!?」

 

 

視界を奪われ、更にトラブルがあったのか動揺しているシンリンカムイに突如現れた煙に狂夜も驚くばかりだ。

 

 

「くそっ!逃げれたか、我が拘束を破るとは!」

「シンリンカムイ、腕が……」

 

 

煙で見えなかったがシンリンカムイが個性で煙を振り払ったが腕の部分が一部欠けていた。

 

 

「煙を出したヴィランとは別の奴の個性だろう。煙幕に乗じて恐らく、刃か何かで仲間の拘束を解いたんだ」

「アイツ等、車で!」

 

 

逃げられた事を悔やんでいるシンリンカムイに狂夜はヴィラン二人が車で逃走を図ろうとした所を目撃する。

 

 

「くそ、車でとなると我の個性では追い付けん!他の地区のヒーローに連絡をして先回りを……」

「シンリンカムイ、俺に考えが…」

 

 

車で逃げられると流石のシンリンカムイも追い付けず他のヒーローに救援を送ろうかとした。狂夜は周囲を見渡して、『ある物』を見付けて浮かんだアイディアを実行に移すべくシンリンカムイに話しかけた。

 

 

その頃、避難誘導や他にヴィランが居ないかと警戒しながら現場に来たデステゴロと耳郎。しかし、現場には後処理をしている他のヒーローと警察だけでシンリンカムイと狂夜の姿は無かった。

 

 

「状況はどうなった?」

「シンリンカムイがヴィランの拘束に失敗して車で逃げたヴィラン二人組を追い掛けて行きました。黒い格好のヒーローも一緒でしたよ」

「あー……やっぱり間桐も一緒だったんだ」

 

 

警察から事情を聞いたデステゴロだったが耳郎の表情は苦笑いになっていた。何かを知っているのかとデステゴロは耳郎に話し掛ける。

 

 

「追いかけた?アイツの個性は車に追いつける個性なのか?」

「いや、最初はウチも目を……いや、耳を疑ったんですけど」

 

 

耳郎はイヤホンジャックをカチカチと鳴らす。個性で狂夜の動きを把握していたらしいが、それでも信じられない状況だったのだろう。未だに苦笑いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「へへっ……ちょろいもんだぜ」

「捕まったくせによく言うぜ。俺の個性がなきゃ逃げられ無かっただろ」

 

 

車を運転しているのは煙を出したヴィランでそのヴィランを笑っていたのはシンリンカムイの拘束を破ったヴィランだった。そのヴィランの指はノコギリの様に鋭い刃の様になっていた。シンリンカムイの予想通り、刃のヴィランは個性でシンリンカムイの拘束を切り裂いたらしい。

 

 

「へへ、そりゃお互い様だろ。俺が煙幕で隙を作らなきゃお前だって捕まってたんだからよ」

「まぁな。だが、最近人気のヒーローってのも大した事が……」

「GRAAAAAAAAA!」

 

 

車中で笑いながらシンリンカムイを嘲笑っていたヴィラン達だが突如、後方から凄まじい叫び声が聞こえ、同時に振り返り……言葉を失った。

 

 

「AAAALaLaLaLaLaie!」

「逃すかっ!」

「い、一輪車!一輪車で車に追い付きやがったのか!?」

「何て非常識な奴だ!」

 

 

ヴィランが驚くのも無理は無かった。なんと狂夜は一輪車に跨り個性を使用しながら全力で漕ぎ、シンリンカムイはその狂夜に肩車されながら車に肉薄しているのだから。通常ならあり得ない光景にヴィラン達の思考は停止してしまう。そして、それはヒーローからしてみれば決定的な隙だ。

 

 

「今度こそ、捕まえる!先制必縛ウルシ鎖牢!」

「し、しまった!?」

「馬鹿が!今度も俺の個性で……ふぐっ!?」

「SMASH!」

 

 

シンリンカムイは車の屋根に飛び移り、先制必縛ウルシ鎖牢でヴィランを車ごと拘束する。煙のヴィランは窓から侵入した木に完全に捕縛されてしまい、刃のヴィランは先程と同様にシンリンカムイの木を切り裂こうとしたが追い付いた狂夜の拳でK.O.された。

捕縛され、相棒も倒された煙のヴィランは観念したのか車を止めて今度こそ投降した。

 

 

「捕縛完了。今度は逃げられんぞ。警察が来るまで大人しくしていろ」

「も、もう抵抗しないって……」

「FUUUUU……FUUUUUU……」

 

 

煙のヴィランは大人しくなって刃のヴィランは狂夜によって気絶させられた為に無抵抗。狂夜は必死に暴走しそうな自分自身を抑えようとしていた。

 

 

「バーサーカー。個性を押さえつけるのでは無く、個性を掌握するんだ。無理に抑え込むのでは反発もあるだろう。個性も自分の一部だ、そう感じてコントロールをしてみろ」

「……… composure」

 

 

シンリンカムイの助言通りにすると狂夜の中の荒ぶる何かが僅かだが抑えられた感覚になる。その様子を見たシンリンカムイは満足そうに頷いた。

 

 

「それが個性のコントロールの基本だ。特別な力なのは違いないが自身の一部として認識を深めろ」

「ありがとう……ございます」

 

 

狂化を解いた狂夜はシンリンカムイに礼を言う。丁度、シンリンカムイ達の後を追って警察が到着したし始めた。

 

 

「警察も来たし、ヴィランの引き渡しと……」

「一輪車を返しに行かなきゃですね」

 

 

シンリンカムイはヴィランを引き摺り、狂夜は一輪車を担いだ。先程の言葉通り、狂夜はヴィランが車で逃走した際に近くにあったスポーツショップで事情を話して一輪車を借りたのだ。そして前途の様に乗り回し、一輪車で車に追いつくと言うサーカスもビックリな事をやり遂げたのだ。

 

 

これは後の話となるが、この一輪車のメーカーは『ヒーローが全力で漕いでも壊れない一輪車』として本格的な売り込みを開始し、プロモーションVTRにはバーサーカーが一輪車で車に追いつくシーンが起用される事となる。

 

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