放課後になり、ねじれの機嫌伺いに行っていた狂夜。ねじれは如何にも怒ってますと、頬を膨らませていたが普通に可愛く見えるだけだった。
「先輩、いい加減機嫌直して下さいよ……そりゃ、先輩のお誘いを断ってシンリンカムイの所に職場体験に行きましたけど」
「つーん」
狂夜の言葉にも、ねじれは頬を膨らませたまま、そっぽを向いた。相当にお冠の様だ。その証拠に喫茶店に来たものの、ねじれは狂夜が注文した紅茶とケーキに手を付けていない
「そりゃ先輩のインターン先には興味ありましたよ。先輩の所なら楽しく職場体験できたでしょうし……でも、先輩の所に行ったら俺を甘やかすでしょ間違いなく。俺を守ろうと張り切りますよね……それじゃ俺は成長出来ないと思ったんです。だから俺は先輩の所以外のヒーローを選びました。そして個性のコントロールや制御をシンリンカムイから学びました。俺は早く……先輩に並び立ちたいんですよ。それに……」
ねじれに職場体験の行先を選ばなかった理由を話しながら席を立ち、テーブルから身を乗り出して顔を近付ける。
「俺は先輩に守られたいんじゃなくて、先輩を守りたいんです」
「っ!」
狂夜の一言にねじれは頬を染めて、漸く狂夜の方を向く。狂夜はニッコリと笑みを浮かべていた。
「もう……不思議……とっても甘いの」
そう言って、ねじれは手を付けていなかったケーキを食べ始める。照れ隠しの行動なのは明らかだった。
ねじれの機嫌が直り始めたのを感じた狂夜は椅子に座り直した。これで悩みの一つは解決したな、と考えながら今日のHRの事を思い返していた。
◆◇◆◇
「えー、そろそろ夏休みが近づいて来たが……勿論、君らが夏休みを30日間一ヶ月も休める道理はない」
帰りのHRで発せられた相澤の言葉に騒つく教室。
「まさか……」
「夏休み、林間合宿をやるぞ」
「知ってたよやったー!」
何があるのか……一瞬静まり返った教室だが『林間合宿』のフレーズに賑やかになる教室。
「肝だめそー!」
「風呂!」
「花火」
「風呂!」
「カレーだな」
「行水!」
「ただし」
芦戸、蛙吹、飯田の順にコメントが溢れ、峰田が間に挟む様に風呂と行水を叫んでいたが、相澤先眼光に、騒いでいた教室内は一様に黙る。
「その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は、学校で補習地獄だ」
「「みんながんばろーぜ!!」
相澤の発言に切島と上鳴が切実な叫びを上げる。実は狂夜も叫びそうになったのは秘密である。
実際、狂夜は実技は兎も角、筆記の方はよろしく無くギリギリの成績だった。
◆◇◆◇
「頑張らないとなぁ……」
「不思議、何を頑張るの?」
狂夜の呟きに反応した、ねじれ。ねじれは食べていたケーキの生クリームが鼻に付いており、年上なのに子供っぽい所に狂夜は笑みを浮かべてしまう。
「クリームが付いてますよ。期末試験の対策をどうしようかと思いまして」
「あうっ……期末試験なら実技は対ロボの実戦演習だよ」
指でねじれの鼻に付いたクリームを取る狂夜。ねじれは戸惑いながらも期末の試験内容を教えた。
「対ロボットって事は入試の時のアレか……なら実技は大丈夫か。問題は筆記だな。あ、甘いッスねコレ」
「うん……甘いの」
狂夜はねじれから教えて貰った内容から入試の時のロボット達と戦うのだろうと仮説を立てた。そして指に付いたクリームをひと舐めすると、ねじれは顔を赤らめたまま消え入りそうな声で呟いた。