期末テストの筆記を無事に乗り越えた狂夜達は演習試験に臨んでいた。
「ねぇ、なんか先生の数多くない?」
「5.6.7……」
「なんか嫌な予感するな……」
耳郎がロボ戦にしては教員の数が多い事に首を傾げ、葉隠も人数を数え、狂夜は嫌な予感がしていた。
「さて、諸君等は事前に情報を仕入れて試験がロボと戦うと知っているだろうが……」
「少々事情が変わってな。試験内容の見直しがされた」
「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ。と言うわけで……諸君等にはこれから二人一組でこの場に居る教師一人と戦闘を行ってもらう」
教師陣から試験内容の見直しがされた事でロボ相手の楽勝ムードから一転して暗雲が立ち込め始める。
「尚、ペア組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度。諸々を含めて独断で組ませてもらったから発表をしていくぞ」
「げ、マジかよ……」
「荒れるなコレは」
相澤の口からペアが次々と発表されていき、その内容に全員が様々な思惑に悩まされる事になる。
イレイザーヘッドVS轟・八百万
オールマイトVS緑谷・爆豪
校長VS芦戸・上鳴
13号VS間桐・麗日
プレゼント・マイクVS口田・耳郎
エクトプラズムVS蛙吹・常闇
ミッドナイトVS瀬呂・峰田
スナイプv葉隠・障子
セメントスVS砂藤・切島
パワーローダーVS飯田・尾白
それぞれが苦手としている分野や上位互換の相手となった。中でもクラス全員が緑谷と爆豪の組みを心配していた。緑谷は兎も角、爆豪は緑谷を一方的に敵視していて不仲なのは周知の事実だからである。
「大丈夫かなぁ……デク君……」
「あっちも心配だが、俺等は俺等で頑張ろうぜ」
狂夜は麗日と共に別の演習場へと向かった。演習試験の内容は敵役の教師から逃げてゴールまで行くか、敵役の教師の捕縛となる。
「どうするん間桐君?」
「13号先生の個性を考えれば捕縛は厳しいな。近付く事も出来ないし。一気にゴールを目指して13号先生の妨害があったら二手に分かれて一方が足止めして、一方がゴールを目指す方針で行こう」
狂夜と麗日の個性は基本的に接近戦がメインだ。狂夜の個性での戦い方は徒手空拳による戦闘であり、麗日の個性は対象物に触れなくてはならない。逆に13号の個性は『ブラックホール』による吸引。つまり狂夜と麗日の個性とは相性が最悪なのだ。
『それでは演習試験を開始する!レディ……GO!!』
「おっと、スタートか。13号先生は移動力が低そうだし、速攻で決めよう」
「うん!」
アナウンスが入り演習試験が始まる。狂夜と麗日は同時に走り出す。建物の中に入り、13号に遭遇しない様に一気に駆け抜けていく。
「13号先生、おらへんな?」
「向こうも俺達を探して走り回ってるのかもな。それとも何処かで待ち伏せをしているのか……」
ゴールへ向けて走る狂夜と麗日だが13号の妨害が無い事を疑問に思いながらもうゴールは目前となっていた。
「麗日、ここまで13号先生が出て来ないって事は多分ゴール目前で待ち構えてる可能性がある」
「そやね、だったら一度立ち止まって様子を探る?」
「そう簡単にはいかないぞ!」
狂夜と麗日は一度立ち止まると様子を伺いながら少しずつ前に進む。ゴールが見える距離になっても13号の姿は無い。そう思って一気に駆け抜けようとした狂夜と麗日の前に13号が現れた。
「ヤバっ!?走れ、麗日!」
「う、うん!」
「逃さないぞ!」
13号と遭遇し、戦闘よりも離脱を優先した狂夜は麗日に促し、麗日も一気に走り抜ける。13号は個性のブラックホールを指先から展開し、狂夜と麗日を捉えようとする。
「うおりゃ!」
「僕の個性は知っているだろう?効かないぞ!」
「あかん、全然効果があらへん!」
狂夜は走り回りながら拾った瓦礫や鉄パイプを個性を発動させながら全力投球するが13号のブラックホールに吸い込まれてしまい、足止めにもならなかった。
「私等と相性悪すぎやろっ!」
「んじゃ単純に走り抜けんぞ!一気にゴールまで走り抜けろ!」
「あ、待て!」
13号の個性に自分達の個性は相性が悪い事は知っていたが唯一の抵抗が足止めにもならない事にショックを受けながらも機動力の低い13号を相手にするよりも一気に走り抜けてゴールを目指す事にした狂夜と麗日。
13号は慌てて追おうとするが単純に足の遅さで遅れを取っていた。狂夜と麗日の足は速く一気に13号との距離が空いて行く。
「このまま一気に……ってヤバっ!?捕まれ麗日!」
「え、うひゃあっ!?」
一気に走り抜けた事でゴールまで後一歩と言う所まで来たが狂夜は背後から来る気配に危険を感じ、麗日の手を引くとゴール脇の鉄柵に押し出した。狂夜の叫びに麗日は咄嗟に鉄柵に捕まった。それと同時に麗日は背後から吸い寄せられる感覚を覚えた。鉄柵に捕まりながら振り返ると13号が個性を使用しながら追い付いていた。
「危ない、危ない……逃さないぞー!僕は戦闘が苦手だけど捕物には一家言あるんだ!」
「あ、後少しだったのにー!」
「そんな簡単にはいかないか……」
狂夜と麗日は鉄柵に捕まりながら13号の個性に吸い込まれない様に必死になっていた。このままではゴールも出来なければ13号に逆に確保されてしまうのも時間の問題だった。
「こりゃヤバいな……どう切り抜けるか……ん?」
「どうしよう……どうする……ク君なら……」
狂夜がこの状況下をどう攻略するか悩んでいると隣では麗日がブツブツと言っていた。その姿は明らかに考え事をしている緑谷だった。
「なあ、麗日……」
「何!?今どうするか考え……」
狂夜が話し掛けると麗日が叫ぶ。考えるのに必死で周りが見えてないのも、ある意味緑谷と同じだと狂夜は思っていた。
「その感じだと、緑谷ならどうするか考えてたみたいだな。緑谷は確かに土壇場での閃きが凄いとは思うが……その様子だと随分と緑谷に惚れ込んでるみたいだな。好きが溢れてんぞ」
「え、へ……ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「え?うわっと!?」
狂夜の発言に麗日の顔は真っ赤になり、掴んでいた鉄柵を離して自身の頬に当ててしまう。そうすれば当然、13号のブラックホールに吸い込まれて行ってしまう。突然、吸い込まれに来た麗日に13号は慌てて個性を解除した。更に麗日はその隙を見逃さず、覚醒した。ガンヘッドの下で学んだ格闘技術が花開いたのだ。麗日は13号を一瞬で組み伏せた。
「なんの、まだ僕の個性は使え……痛っ!?」
「させるかっ!」
「確保完了!」
『間桐・麗日ペア条件達成!』
組み伏せられた13号は再度個性を使用して麗日を引き剥がそうとしたが狂化により素早さを増した狂夜が麗日が抑えている腕とは反対の腕の関節を極めた。動きを封じられた13号に麗日はカフスを取り付けて完全に13号の確保を完了させた。
「あ、危なかった……ブラックホールに飛び込むとか危な過ぎんだろ麗日」
「ギリギリやった……って間桐君の所為やん!?」
「二人とも、合格には違いないけど危ういよ。相手の個性に立ち向かうのは間違いじゃないけど、やり方は考えようね」
狂夜と麗日は確かに13号の確保には成功したが、攻略の仕方はめちゃくちゃな内容だった為に早速、13号からお説教が入っていた。そして狂夜と麗日は試験の条件達成を果たしたのでモニター室へと移動となった。
「なあ、麗日。緑谷との事で悩んだら相談には乗るぞ」
「〜〜〜〜っ!!?」
モニター室へと向かう道中。狂夜は麗日にコソッと一言告げてから先に行き、麗日は緑谷との事を指摘されて再度顔を真っ赤にするのだった。