演習試験の翌日。A組クラス内では神妙な空気が流れていた。ホームルームが始まる前の時間だが上鳴、芦戸、切島、砂藤が涙目になって立ち尽くしていた。
演習試験で条件達成が出来ずクリア出来なかった者達である。
「みんなの……思い出話ひぐっ……楽しみに……うぅ……じでるがらねぇ……」
「芦戸はガチ泣きし過ぎだろ」
「まっ……まだ分からないよ。どんでん返しがあるかも知れないよ……」
「緑谷、それ口にしたらなくなるパターンだ」
芦戸に至ってはガチ泣きをしており、狂夜がツッコミを入れ、緑谷が慰めようとするが瀬呂が反論する。
「試験で赤点取ったら林間合宿に行けずに補修授業!そして俺等は実技クリアならず!これでまだ分からんのなら貴様等の偏差値は猿以下だ!」
「落ち着け、長げぇよ」
「そして急所を突くな」
上鳴は叫ぶと共に緑谷の目を突く。その行動に瀬呂と狂夜はツッコミを入れた。
「わからねぇのは俺もさ。峰田のおかげでクリアはできたものの、途中から寝てただけなんだぜ?」
「確かに瀬呂の判定も今一わからないよな。で、先生の膝枕はどうだった?」
瀬呂は果たして赤点なのか、それとも合格できているのか。確かに峰田のお陰でクリアしたものの合格とは言われていない。ミッドナイトの個性で眠らされた後で膝枕されていただけなのだから。
狂夜の質問に瀬呂は「寝てたからそっちも分からない」と少々残念そうだ。
「予鈴が鳴ったら席につけ」
バンッと相澤が教室に入り教壇に立った。先程までの騒がしい雰囲気から一転して静かになる教室。
「諸君、おはよう。今回の期末テストだが……残念ながら赤点が数名出た。したがって……林間合宿は全員行きます」
「「「「どんでん返しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」
相澤の口から、どんでん返しの一言が飛び出し騒然となる教室。誰もが予想してなかった事態に驚いた。
「筆記試験では赤点ゼロだが実技試験では上鳴、芦戸、切島、砂藤そして瀬呂が赤点だ」
「行っていいんすか、俺達!?」
「確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんなー……クリア出来ずの奴よりも恥ずかしいぞ、これ……」
相澤の説明に切島が反応し、瀬呂は両手で顔を隠しながら呟いた。確かにペアで試験をクリアしたら合格とは一言も言っていない。
「今回の試験は我々敵側を演じた教師に生徒達の勝ち筋を残しつつも、どう課題に向き合うかを見させてもらった。でなければ、今の実力じゃ合格出来なかった奴等も多いだろうからな。実際、詰んでた奴等も多かっただろ
「じゃあ本気で叩き潰すというのは……」
相澤から採点基準となる指針が話される。尾白は教師陣が本気で叩き潰す宣言をした事にある程度の予想は出来たものの疑問を口にせずに居られなかった。
「当然追い込むためだ。事前に仕入れた様なロボ戦みたいな演習内容だったらお前らは必死にすらなんねぇだろ?そもそも林間合宿はお遊びに行くんじゃなくて強化合宿だ。赤点を取る様な奴ほど、ここで力をつけてもらわないと困るんでな。ようするに……合理的虚偽って奴さ」
「「「「「ゴーリテキキョギィィィィィっ!」」」」」
「またしても……またしてもしてやられた!さすが雄英だ!ですが、二回も虚偽を重ねられると今後の信頼が揺らぐのではないかと思われます!」
「わあ、飯田君水刺す」
相澤の発言に上鳴、芦戸、切島、砂藤、瀬呂が喜びと驚愕に叫び、飯田が席を立ちながら相澤に進言し、麗日がツッコミを入れた。
「飯田の意見は尤もだ、省みるよ。だが、全部は嘘ではない。赤点は赤点だ。赤点者達には別途に補習時間が設けられている。ぶっちゃけ学校に残って補修の方が良かったと思える程度にはキツいからそのつもりでいる様に。合宿のしおりを配るから良く目を通しておくようにな」
それを聞いて喜んでいた赤点五人組みの動きがピタッと止まる。そして徐々に悲しい顔になっていった。その後、淡々と相澤が夏休みの注意事項や強化合宿の話が進められて行くが赤点五人の顔が晴れる事はなかった。
「まぁ、なにはともあれ……全員で合宿に行けるのはよかったね」
「そうだな。居残りがいたら俺等も合宿に行きずらかった」
「うん……でも、ちょっと心が痛い」
尾白と狂夜の発言に複雑な気持ちながらも頷く一同。しかし、赤点五人のメンタルは若干傷付いた様だ。しかし凹んでばかりもいられず、クラス内で、しおりを見ながら話し合う姿が見られる。着替えなどの荷物や待ち合わせていない物を考えるとそこそこの量になる。各自で何を持っていくかで討論が交わされていた。
「水着とか持ってねーや。買っておかないとな」
「暗視ゴーグルも必須だぜ!」
「お前の場合、用途が間違ってんだろ」
「一週間だから結構大荷物になりそうだ」
「あ、じゃあさ。明日、休みだしテスト明けも含めて皆で買い物行こうよ!」
A組内で足りない物の話をあれやこれやと離している最中、葉隠の提案に皆が顔を上げた。
「お、いいじゃん。何気にそう言うの初じゃね」
「爆豪、お前も来いよ?」
「行ってたまるか、クソが」
「轟君も行かない?」
「悪い、休日は見舞いなんだ」
「空気読めやKYイケメン共が!」
上鳴が真っ先に賛同し、切島が爆豪を誘うが速攻で断られていた。緑谷も轟を誘うが、轟は母の見舞いの為に断り、団体行動をアッサリと乱した爆豪と轟に峰田がツッコミを入れた。
「間桐さんは如何なさるのですか?」
「明日は元々買い物に行く予定だったから行くよ。ああ、でも妹も一緒になるけど良いか?」
「え、間桐の妹!?」
「興味あるね、ちょっと見てみたいけど」
「お父さんは前に見たもんね!妹さんも見るの楽しみだ!」
八百万から明日の予定を聞かれた狂夜は元々買い物の予定だったから丁度良いと考えていた。ただし日用品の買い物もあったので妹の桜も同伴させようとは思っていて、その提案に芦戸、耳郎、葉隠が食い付いた。
「妹さん、前に可愛い子だって聞いてたから、ちょっとワクワクしちゃうわ」
「うむ。家族を大切にするのは大事だ!」
「間桐の妹か……血肉を分けし妹が如何なる存在か」
「盛り上がってる所、悪いけど俺と桜は血は繋がってないからな?んじゃ明日」
普段この手の話題に乗らなそうなクラスメイトである蛙吹、飯田、常闇でさえ妹の桜の事を想像して気になっている様子だった。そんな中、狂夜は桜との関係を暴露してから教室を出て行った。
「待て、そんなサラッと言う事じゃないだろ!」
「何とんでもない事をカミングアウトしてんだ!」
切島と上鳴のツッコミを聞きながら狂夜は颯爽と帰路に着いていた。明日の買い物に行くメンバーは明日の待ち合わせまで様々な事を想像して夜は中々寝付けなくなってしまうのだった。