それぞれが買いたい物が別々なので各グループに分かれて買い物をする事になった狂夜達。
狂夜は桜と共に行動をし、耳郎と八百万も一緒に行動をしていた。
「この間も思ったけどさ……間桐って重い話を軽いノリで話すよね」
「重く話そうが軽く話そうが事実は変わらんだろ。だったら軽く話した方が相手も受け止めやすい。昔っから家族の話は何度もしてるからな。この方が楽だって思ってんだ」
「兄さんはその辺り、達観してますから。それに私もそう思いますし」
「間桐さんは……いえ、ご家族皆さんで乗り越えて来られたのですね」
大きめのキャリーバッグを品定めしながら会話は未だに間桐家の事だった。耳郎や八百万は間桐家が血は繋がらなくても濃い絆があると感じていた。
「ま、そう言う事だから俺らの事は気にすんな。お、これいいな」
「このサイズでこの値段ならお手頃ですね。お父さんから貰った予算内ですし」
「あ、それ良いね。ウチもこれにしようかな」
「デザインなら此方の方が良い気もしますが。他にも見てみましょう」
狂夜が手にしたキャリーバッグに桜、耳郎、八百万はそれぞれの意見を出しながら他の物もチョイスをする。そんな中、狂夜は視界の端に麗日を見つけた。
「んー……あの感じ。面白くなりそうだ」
顔を赤くしながら早足でショッピングモールを歩く麗日に狂夜は緑谷との事で面白い展開になっているのだろうと確信をしていた。この時、狂夜は『面白い事が起きそうだから見に行こう』と思った。それから行動は早かった。
「悪い、ちょっと桜と一緒にいてくれ。理由は後で話す」
「兄さん?」
「ちょっと間桐?」
「理由を後で話されるなら桜さんはお任せ下さい」
その場を後にしながら桜の事を耳郎と八百万に任せた狂夜は麗日の後を追った。人混みで見失いそうになったが、無事に麗日を見つけた狂夜は麗日の視線の先に緑谷が居るのだろうと視線を向けた。
緑谷は確かに居た。だが、フードを目深く被った男と一緒に居た。一見仲が良さそうに並んで座っている様にも見える。狂夜はその人物の顔が見えた訳ではないが、その人物が放つ雰囲気が自身の知るヤバい奴と一致していた。頭の中で警報が鳴り響いた狂夜は一気に距離を詰めた。
「デクく……ん?お友達じゃ……ないよ、ね?」
「だ……駄目だ、麗日さん!来ちゃ……」
「下がれ麗日。随分と大胆な事してんな。この間の一件でお尋ね者のポスターに載ってる様な奴がショッピングモールで買い物してんじゃねーよ」
「ごめんごめん。連れが居たのか。俺はもう行くよ。わかってるとは思うけど後を追おうなんて考えんなよ」
麗日が緑谷と男に話しかけながら歩み寄ろうとしたが狂夜が隣に立ち、麗日の歩みを手で制した。男はニカっと笑うと緑谷を解放して立ち上がる。
「待て死柄木……オールフォーワンは何が目的なんだ」
「さぁね…… 知らないな。それにしてもお前も居たとはな。緑谷といい、お前といい……殺したくてイライラする奴が揃ってるなんてな……」
緑谷は男……死柄木に問い掛けるが死柄木は「知らない」と答え、狂夜の隣に並び立つとギョロッと睨む。
「緑谷が何を聞きたかったのか知らないが、その辺りも聞きたいからお茶でもどうよ?」
「せっかくのお誘いだが遠慮しとくわ。それよりも次、会った時は殺し合いだから覚悟しとくんだな」
狂夜の問い掛けに死柄木は視線を外しながら去って行く。狂夜は死柄木を殴り飛ばして人混みから離れた所までブッ飛ばそうかとも考えたが他に敵連合がいるかも知れない可能性があると思い踏み止まった。
去っていく死柄木の背を見ながら狂夜は周囲の警戒をした。それこそ他のヴィラン連合が居るかも知れないのだ警戒を怠る訳にはいかない。完全に死柄木の姿が見えなくなった後、振り返ると麗日が緑谷に寄り添いながら電話をしていた。
「もしもし警察ですか!?ヴィランが……はい、場所は……」
「悪いな、麗日。全部任せちまったな」
この後、麗日が呼んだ警察とヒーローがショッピングモールに到着し、ショッピングモールは一時閉鎖された。
死柄木の捜索が即座に実行されたが見つからず、直接接触した緑谷、麗日、狂夜は事情聴取の為、警察署へと連れて行かれた。
ある程度、会話をした緑谷と違って麗日と狂夜は死柄木とはろくに会話をしていない。だが、それでも事情聴取はされるもので拘束時間も長いものだ。事情聴取が終わる頃には辺りは暗くなっていた。
「やれやれ……長くなったな」
「兄さん!」
「間桐!」
「間桐さん!」
ボヤきながら警察署のロビーに出ると桜、耳郎、八百万が駆け寄ってくる。どうやら狂夜が事情聴取が終わるのを待っていた様だ
「あれ?桜は兎も角、耳郎と八百万も残ってたのか?」
「他のみんなは帰されたし、ウチ等も帰る様には言われたけど桜を一人には出来ないでしょ」
「桜さんの事を間桐さんにも任されましたし、気になりましたので」
桜は家族として警察署に残っており、耳郎と八百万は付き添ってくれていた。
「兄さん、兄さん……っ!」
「おい、桜!?」
「間桐の事、心配してたんだよ。ずっと震えてたんだから」
「私達に出来るのは寄り添って声を掛けてあげる事だけでしたけど……」
桜は狂夜に抱き付いて涙を流し、耳郎と八百万は桜の為に残っており、耳郎は桜の頭に手を添えて、八百万は桜の背を撫でた。
この後、桜は落ち着くまで狂夜に抱き付いており、耳郎と八百万はそれぞれ家族が迎えに来たので帰って行った。と言うよりも二人は桜の為に家族が迎えに来ても待って欲しいと言っていたらしい。
狂夜と桜は雁夜が迎えに来るまで耳郎と八百万の家族と共に過ごし、雁夜が警察署に到着した後に自宅へと帰るのだった。
翌週、緑谷、麗日、狂夜がヴィラン連合と接敵した事で夏休み中の林間合宿が行き先変更となり、行き先も当日まで明かされない運びとなった。