担任の相澤から林間合宿の行き先変更が告げられ、終業式を終えた雄英高校一年A組はそれぞれの予定を組みながら雑談に興じていた。
「しっかし夏休みに入るのに遊びにも行けないのはツラいぜ」
「雄英襲撃事件にヒーロー殺し、ヴィラン連合のショッピングモール騒動と立て続けだったからな。仕方ないと言えば仕方ない」
上鳴と狂夜はダラダラと話をしながら下校準備をしていた。話題は勿論、夏休みの行動についてだ。
「夏休みに入ってから学校のプールの使用申請は出したけど、遊べる機会がそれだけってのは悲しいぜ」
「プールの使用許可か、そりゃ盲点だったな。俺は家族旅行の予定だったから、その発想は無かったわ」
上鳴が学校のプールの使用申請を出してる事に驚きつつ、狂夜は自身のスケジュールを明かした。
「旅行?遠出は駄目なんじゃなかったっけ?」
「行き先の指定や理由次第で許可が下りるみたいでな。ちゃんと行き先を告げて、ヒーローが居るかどうかの有無も大事みたいだけど、行くところにはその心配がなくてな。因みに行き先はI・アイランドだ」
上鳴の疑問は尤もである。そもそも最近物騒であるから家族旅行や遠出が禁じられたのに家族旅行の申請を出してアッサリと許可が降りた狂夜に疑問を抱いていると狂夜はパンフレットを取り出した。そこにはI・アイランドが掲載されている。
「マジかよ!?なんで間桐が行けるんだ!?これってヒーローや研究者しか行けないんじゃなかったっけ!?」
「親父がカメラマンだろ?『良かったら、ご家族で』ってチケット貰ったんだよ。それで遠出の家族旅行とヒーローコスチュームの申請出したら通ったって事だ」
巨大人工移動都市『I・アイランド』とは世界中の科学研究者達の英知が集まった人口島で、個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した個性技術博覧会『I・エキスポ』が開催される事になっている。当然ながらゲストとしてヒーローやスポンサー、取材陣も招かれ事となっていて、狂夜の父である雁夜はカメラマンである事からチケットを貰ったらしく家族旅行として皆で行く事が決まったのだ。
その事もあり、狂夜は家族旅行とヒーローコスチュームの申請を相澤に提出しており、許可は無事に降りていたのだ。
「マジかよー……羨ましい。俺もI・アイランドに行きたかったぜ……」
「だったらバイトで行ったらどうだ?I・エキスポ中はバイト募集してるみたいだし、ヒーローも沢山来るから警備も万全だし許可が下りやすいかもしんないぜ?」
項垂れる上鳴に狂夜はパンフレットとは別の紙を差し出した。そこにはI・アイランドのバイト募集を募る広告が記載されていた。
「おおっ!サンキュー間桐!よっしゃ、申請出してくるわ。またな!」
「おー、上手くやれよ」
バタバタとバイト募集のチラシを持って上鳴は行ってしまう。あの様子ではI・アイランドにバイトで行くのは間違いないだろう。
「さて、と。そろそろ……」
「狂夜くーん、一緒に帰ろ?」
鞄を肩に掛けたタイミングでA組の扉が開かれ、ねじれが元気良く入ってくる。グッドタイミングと狂夜はそのまま教室の出入り口へと向かう。
「帰りましょっか、先輩」
「うん!」
狂夜から差し出された手をねじれが笑顔で取る。そして手を繋いだまま狂夜とねじれは教室を出て行った。
「やっぱやっぱ、あの二人って!」
「だよね、だよね!」
「気にはなるけど聞きにくいよね」
「ケロ……詮索するのは良くないわ」
「いけない事とはわかってはいるのですが興味深いですわ」
「うぅ……やっぱ間桐君て進んでるんやなぁ……」
葉隠、芦戸、耳郎、蛙吹、八百万、麗日の順で盛り上がるA組女子。麗日に関しては緑谷の事を指摘された分、尚更意識してしまっているのかも知れない。
峰田が血の涙を流していたのは言うまでもないだろう。