狂夜は自室で荷物を纏めていた。来週、行く予定のI・アイランドと林間合宿の為の荷造りである。
「むー……狂夜君だけズルい……」
「家族旅行と林間合宿なんですから……俺も夏休みに先輩と遊びに行けないのは残念ッスけど」
狂夜の自室に入り浸ってるのは夏休みに入り、暇を持て余しているねじれだった。ねじれは狂夜と背中合わせに座っており、ぐりぐりと頭を狂夜の背中に押し付けていた。
狂夜はその重みを心地よいと思いながらも苦笑いで答えた。
一緒に居たいと思う気持ちは勿論あるが家族旅行と林間合宿では一緒に居るなんて出来そうにない。ねじれもそれは分かっているからこそ、この態度なのだろう。
「先輩も一緒に過ごせるなら良かったんですけどね。でも、学校行事でも学年が違うと……お?」
ねじれの機嫌回復の為にこれからデートでも……と考えていた狂夜だったがスマホにメールが来た。内容を確認して見ると緑谷からで『上鳴君と峰田君が学校のプールで強化訓練の申請をしたから来ない?』との事だった。
「学校のプールで強化訓練か、面白い事を考えたな……っと!?」
「プール……」
狂夜の肩にねじれが顎を乗せてスマホを覗き込んでいた。目はキラキラと輝いており、表情からは期待が溢れていた。
「えーっと……体力強化の目的なんで遊べるかどうかは……」
「むーっ……」
狂夜が苦笑いをしながら学校のプールに一緒に行っても遊べないと告げると、ねじれは分かりやすく頬を膨らませていた。
「緑谷がメールを寄越したって事はA組全員にメールしたかな……ちょっち待ってて下さい、先輩」
狂夜はねじれの機嫌回復の為と遊びたい気持ちから、ある人物に電話をする事にした。
「ああ、もしもし?今大丈夫か八百万?」
『はい、どうされたのですか間桐さん?』
間桐が電話をしたのは八百万だった。
「さっき緑谷から学校のプールで強化訓練をしないかってメールが来たんだが女子達の方にも来なかったか?」
『はい、緑谷さんからメールは頂いていましたけど、私達は日光浴でプールの使用申請をしていましたので……』
緑谷からのメールはやはりA組女子にもメールが行っていたらしい。狂夜はそれに便乗して、ねじれも同伴出来ないかと考えたのだが女子達は女子達でプールの使用申請を取っていたらしい。それを聞いた狂夜は好都合だと考えた。
「だったら女子達のプール使用申請をもう一人追加申請してくれないか?ねじれ先輩も一緒に連れて行って欲しいんだ」
『ねじれ先輩とは間桐さんの先輩でしたわね。そう言う事でしたら学校には私から連絡させて頂きます』
狂夜はねじれの事を八百万に任せた。女子達が日光浴で使用申請をしているのなら、学年は違うがねじれも入れないかと考えたのだ。対する八百万も快く引き受けてくれたので狂夜は「頼む」と一言添えてから通話を切った。
「つー訳で、先輩。一緒にプールに行きませんか?学校なんで指定の水着着用になるから一旦、先輩の家に……」
「うんうん!行こう!」
狂夜の言葉を遮ってねじれは狂夜の手を取り、嬉しそうにしていた。こんなに喜んでくれるなら誘って八百万にも頼んだ甲斐があると狂夜も笑みを溢す。
◆◇◆◇
狂夜からの頼まれ事を担任の相澤に伝えると『学年は違うが雄英生でもあり、先輩の波動なら問題はない。プールの使用時間は守れよ』と注意を促されながらも許可を得た八百万はホッとした。まずは狂夜からの頼まれ事をクリアしたのだから。
そして、その事を狂夜にメールで伝えた後、A組女子にも『本日の日光浴に先輩が一人参加されます。間桐さんの先輩の波動ねじれ先輩です。皆様もよろしくお願いします』も送った。直後に芦戸や葉隠から『間桐の彼女!?話聞かなきゃ!』『間桐君、学校のプールで先輩とデート!?』と驚きと恋バナに期待するメールが届いた。
「そう……波動先輩は雄英の先輩……是非ともお話しをお聞きしなければ」
その聞きたい事とはヒーローとしてなのか、恋バナ的な意味なのか。既に芦戸と葉隠は恋バナを聞く気満々だ。
その辺りはヒーローを志す者とは言っても女の子なのである。八百万だって話は聞きたいのだ。