バーサーカーのヒーローアカデミア   作:残月

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戦闘訓練②

 

 

 

 

 

Eチーム間桐、芦戸 VS Fチーム砂藤、口田

 

 

ヒーローチームがEでヴィランチームがF。ヴィランチームは先行してビルに潜伏して『核』の防衛に回る。

ヒーローチームは潜入するまでの約5分間の間に作戦会議となる。

 

 

「間桐の個性ってパワー型だよね?」

「んー、まあ単純なパワー型じゃなくて制約多いけどね」

 

 

芦戸が狂夜の個性を尋ねてくるが、狂夜の『狂化』はそんな単純な物ではない。

 

 

「間桐って体力テストの時に、なんかパワーが凄くなってたから、そうなのかなーって」

「俺の個性は確かにパワー型だけど、『狂化』って言うんだ。簡単に言うと理性と引き換えに力を得ると言うか……」

 

 

狂夜は芦戸の疑問に簡潔に答える。すると芦戸は胸元を手で隠しながら僅かに後退る。

 

 

「エ、エッチになるの?」

「そう言う意味じゃねーよ!狂暴になって暴れるとかの意味だ!」

 

 

芦戸は『理性を失う』=『ケダモノになる』と解釈した様で狂夜は叫びながら訂正する。怒られた芦戸はゴメンと手を合わせる。どうやら分かった上でからかっていたらしい。

 

 

「そう言う芦戸の個性は?個性把握テストの時じゃ個性見れなかったから」

「んー、私の個性って個性把握テストじゃ使えなかったからね」

 

 

狂夜の質問に芦戸はビルに手を這わせる。と同時に、芦戸が触れた部分のビルの壁がジュワッ!と溶けた。

 

 

「私の個性は『酸』!なんでも溶かしちゃうよー!」

「凄いな……なら、この個性で……」

『屋内対人戦闘訓練開始!』

 

 

前半に余計な話をしていた為に、どんなプランで攻めようかと相談する前に戦闘訓練が開始されてしまう。

 

 

「とりあえず……行くか」

「そだねー」

 

 

何も戦闘プランを立ててないのに……と嘆く狂夜に軽いノリの芦戸。足並みは早速乱れていた。

 

 

「間桐は砂藤と口田はどう来ると思う?」

「確証はないけど……個性把握テストの時の砂藤の個性は緑谷みたいな増強型の個性だと思う。逆に口田は目立った動きがなかったから、どんな個性かは分からないな」

 

 

廊下を警戒しながら歩き、上を目指す狂夜と芦戸。警戒しながら対戦相手の砂藤と口田の事を話し合っていた。

 

 

「二人ともガタイが良いから増強型だとは思うけど……」

「見た目じゃ判断出来ないって事だよね。ところでさー」

 

 

砂藤と口田の個性予測をしていた狂夜と芦戸だったが、芦戸は狂夜に疑問を投げ掛ける。

 

 

「もう4階だけど……何も無かったねー」

「そうだな……『核』の前で二人が待ち構えてると思った方が良さそうだ」

 

 

そう。このビルは5階建てだが現在、狂夜と芦戸は4階までのフロアを散策して何もなかったのだ。

 

 

「もしくは……どちらかの個性で『核』を持ったまま移動してるとか?」

「その可能性もあるか……」

 

 

芦戸が良いことを閃いたと口を開く。その可能性があったかと狂夜も納得しかけたが……

 

 

「普通にフルディフェンスの構えだったな」

「言わなくてもいいってば!」

 

 

物陰に隠れながら、狂夜と芦戸は5階のフロアで『核』を守ってる砂藤と口田を見付けた。前に出るよりも完全防御の態勢で待ち構えていたらしい。自信満々で意見を出した芦戸は、顔を赤くしながら狂夜の肩をバシバシと叩いていた。

 

 

「どうするの?奇襲で強行突破して『核』を確保?」

「そうだな、だったら……俺が……をして、奴等の気を引くから芦戸は……」

 

 

物陰に隠れたまま簡潔に作戦プランを伝える狂夜。芦戸はフムフムと作戦を聞き、そのプランが決まれば面白いかもと笑顔を見せた。

 

 

「んじゃ、作戦通りに」

「りょーかい!」

 

 

狂夜の指示に芦戸は物陰に姿を隠したまま返事をする。そして狂夜は芦戸を残して行動に移す事にした。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

「うーむ……来ないな」

 

 

砂藤は一向に来ないヒーローチームに違和感を感じていた。タイムアップになればヴィランチームの勝ちなのに、ヒーローチームに一切の動きがない。

 

 

何かあったのかな?と口田がジェスチャーで伝える為に砂藤の方へと振り返った。その時だった。

 

 

「……enemy……」

「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

「いや、どっちがヴィラン役だよ!?」

 

 

窓から見えた光景に口田が悲鳴を上げ、砂藤がツッコミを入れた。なんと狂夜は窓から部屋に侵入してきたのだ。それもホラー映画の怪人の様に窓枠に手をかけ、ゆっくりと顔を覗かせていた。しかも鎧の隙間から瞳が赤く光って威圧感を醸し出している。

 

 

「それは兎も角、『核』は渡さん!」

 

 

砂藤が部屋に入って来ようとしている狂夜を迎え撃とうと構えた。

 

 

「隙有り!」

「うわぁぁっ!?」

 

 

その直後、芦戸が滑る様に『核』の部屋に入ってきて、口田を確保証明ロープで縛り上げた。

 

 

「ああっ!?口田!」

「……next……」

 

 

あっという間に縛り上げられた口田に砂藤が驚き、その隙を突いて、狂夜が部屋に入って獣のように低い構えをしていた。

 

 

「ぬ、ぬおりゃあっ!」

「……battle……」

 

 

振り抜かれた砂藤の拳を避けた狂夜は跳躍し、壁を蹴ると天井まで飛び上がる。更に天井を蹴り、壁に着地すると素早い動きで砂藤を翻弄した。

 

 

「は、速い!?単なるパワー型じゃないのかよ!?」

 

 

狂夜の獣のような動きに付いて行けない砂藤は翻弄され、狂夜はその隙を逃さなかった。

 

 

「……straight」

「ぐふっ!?」

 

 

狂夜の拳が砂藤の鳩尾に叩き込まれる。追い打ちとばかりに狂夜は、くの時に曲がった砂藤の足を払い地面に叩き付けた。

 

 

「……フーッ……状況終了……」

「『核』確保!」

 

 

狂夜は砂藤を押さえ付け、芦戸はその隙に『核』を確保した。狂夜は勝ちが確定した瞬間に『狂化』を解除した。

 

 

「お疲れ」

「ナイスタッグ!」

「勝者……ヒーロー!ヒーローチームWIN!!」

 

 

狂夜と芦戸はパン!と片手でハイタッチをしたと同時に、オールナイトの叫びが訓練場に鳴り響きEチームの勝利となった。そして講評となる。

 

 

「さて、今回の間桐少年と芦戸ガールの戦いぶりで気付いた事は?」

「はい、間桐さんが前に出てヴィラン側の気を引き、一瞬の隙が生まれた瞬間に芦戸さんがフォロー。そして間桐さんが砂藤さんの行動を阻み、芦戸さんが『核』を確保。互いの行動を良く見た上でフォローするヒーローらしい行動でした。更に迅速な行動だったので砂藤さんと口田さんは個性を充分に使う暇が無かったと思います」

 

 

緑谷達の時同様に八百万が全てを話してしまいオールマイトは話す事がなくなってしまう。

 

 

「砂藤のは兎も角、口田は個性が分からなかったからな。スピード勝負に持ち込んだんだわ」

「そうそう、間桐の指示通り!」

 

 

狂夜の発言に芦戸は狂夜の肩を組んだ。狂夜が芦戸に話した事は数点。

 

 

『芦戸はこのまま少し待っていてくれ。俺が下の階から壁を上って窓から侵入するから』

『え、普通に危なくない?』

 

『口田の個性は不明だが恐らくは近接、または特殊な発動条件があると思う。砂藤の方はパワー型だから後でも対処できる。だから俺がアイツ等の気を引くから、隙を見て口田を確保してくれ』

『うーん……アタシの個性は足からも出せるから床を滑る様に移動は出来るけど……』

 

『だったら好都合だな。口田を確保したら俺が砂藤を抑えるから『核』の確保を頼む』

『わかった!初めての戦闘訓練、どうせなら勝ちたいしね!』

と簡潔に指示を出していたのだ。

 

 

本来なら芦戸の個性を含めた戦い方も考えるべきだったが、単純な戦いではなく今回の最大の目的は『核の確保』

その為、狂夜は芦戸の個性を使うやり方よりも、芦戸の柔軟な性格を生かす戦い方をしたのだ。

 

戦闘訓練を終えた狂夜達は教室へと戻ってきていた。午後の授業を終え、簡単にHRが開かれた後に今日の訓練の反省会をしていた。

 

 

「しっかし、間桐にはしてやられたぜ」

「どちらかと言えば相手の裏をかく事に専念したんだがな」

 

 

それぞれが今日の事を振り返る中、狂夜は砂藤と話をしていた。

 

 

「確かに裏はかかれたって気はするけど、単純にパワーで負けたのも悔しいぜ」

「少し多目に個性を使ってたからな、簡単には負けねーよ」

 

 

砂藤が悔しそうにするが、狂夜は簡単には負けないと笑みを浮かべた。

そんな話をしていると、戦闘訓練で気絶して運ばれた緑谷が目を覚まして教室に戻ってきていた。

 

 

「おおー、緑谷来た!お疲れ!」

 

 

爆豪との戦いを見て熱くなったのか、切島は真っ先に緑谷に駆け寄る。

 

 

「何、喋ってっか分かんなかったけど熱かったぜ、お前!」

「よく避けたよー!」

「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったよ!」

 

 

切島、芦戸、砂藤が一斉に緑谷に話しかけ、緑谷はアワアワと狼狽するばかりだった。

 

 

「俺は切島鋭児郎。今みんなで訓練の反省会してたんだ」

「私、芦戸三奈!よく避けたよー!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「俺、砂藤!」

「オイラは峰田!」

「私、葉隠!」

「…………轟だ」

「障子、よろしく頼む」

 

 

それぞれから一斉に緑谷へ自己紹介をしていく。狂夜は緑谷が落ち着くタイミングを見計らって話しかけた。

 

 

「緑谷、入試や個性把握テストの時も見たけど無茶しすぎだ」

「ご、ごめん間桐君。気をつけるよ」

 

 

申し訳なさそうに縮こまる緑谷に、麗日は心配そうに声をかけた。

 

 

「デク君、怪我治してもらえなかったの?」

「これは僕の体力のあれで。あの……麗日さん、かっちゃんは?」

 

 

緑谷は爆豪がいない事に疑問を感じていた。緑谷の質問に皆が気まずそうな雰囲気になる。

 

 

「みんな止めたんだけど、さっき黙って帰っちゃったよ」

「……っ!」

 

 

麗日の言葉を聞いた途端に、緑谷は血相を変えて教室を飛び出していった。

 

 

「デク君、どうしたんだろ……」

「ちょうど、爆豪が彼処に居るから見えるかもな」

 

 

麗日が心配そうに呟くと狂夜が窓を指差した。そこには帰ろうとしている爆豪の姿が。すると走り追い付いた緑谷が爆豪と話を始める。

 

 

「何を話してるんだろ」

「幼馴染って話だからな。今日の訓練で思うところでもあったんじゃないか?」

 

 

窓から何かを話す緑谷と爆豪を狂夜達は窓から見ていた。狂夜は、個性把握テストの時や今日の訓練での爆豪を思い出すと何か因縁でもあるのだろうかと思ってしまう。そんな事を考えていると、緑谷と爆豪の会話に何故か、オールマイトも突然現れて会話に交ざっている様だ。緑谷と爆豪とオールマイトでどんな会話をしているのだろうと、窓から見ていた者達は首を傾げる。

 

 

「あ、やべ。俺はもう帰るわ」

「なんだよ、用でもあったのか?」

 

 

ふと時計を見た狂夜は鞄を肩に担ぐ。上鳴は狂夜が帰ろうとしているのを見て声を掛けた。

 

 

「俺は家の家事をしてるからな。今日は俺が夕食担当だから帰って作らないとなんだ。加えて特売を逃したくないんでな」

「主婦か!」

「家庭的なのね」

 

 

狂夜の発言を聞いて、上鳴がツッコミを入れ、蛙吹が感心した風に言った。

 

 

「んじゃ、また明日」

「ばいばーい!」

「またなー」

「おう」

 

 

狂夜が帰るとそれぞれが返事を返す。

 

 

「今日は……流石に先に帰ったよな」

 

 

狂夜はB組の前で足を止め、昨日、一緒に帰った少女を思い浮かべた後に少し残念そうにしてから帰宅した。

 


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