BLEACH-彼岸花が枯れ逝く-   作:夢食いバグ

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…………


彼岸花の毒【三輪目】

ごろんとが転がったものを見て………

 

「ありがとうございます、まだ治せます……」

 

斬魄刀に貯まった、彼の最後の霊圧を感じながら重傷者を前線から移動させてからまだ軽傷な人たちに回道を使っていった……

 

そして、すぐに立ち去る。俺が出来ることはやった、託してくれたものを無駄にしないためにもまだ負傷者を直さなくてはいけない。

 

霊圧のぶつかり合う、膨大な熱気が辺りに散る確実に総隊長が戦っているのだろう……だけど気にしてはられない………まだ負傷者がいる。

 

「貴方の命……使わせてもらいます。」

 

*

 

助ける内に、何人か同じような奴がいた……どうせ助からないから貰ってくれと。なるべく苦しまないように止めを差した、どうせなら一瞬であの人のように終わらせた。

 

俺は夢の中での盃を持ったアイツのように、朱に濡れた手を差し伸べて。負傷者を回道で殺した人たちの霊圧を使い直していった、俺自身の霊圧はもう殆ど使っている……切り捨てた者の残してくれた霊圧はまだ残ってる、まだ託されてる。

 

もう彼岸花から垂れる、朱い液体が血なのか元々流れていたものなのか俺には区別がつかない。

 

全てが命を刈り取った血に見える。

 

「まだ……戦っている人がいる。」

 

霊圧は残っている、瞬歩を使い進む……敵に見つかったら死を覚悟しよう。いやもう覚悟はしていた、応急救護班として戦場の中へ入って行くのだから。

 

四番隊の仲間の遺体も見飽きるほど見た、その中の一つに俺がなるのもおかしな事ではない。どうせ尽きるのであれば……託されたものを使いきってか ら。

 

後ろから、何かを感じた首をずらし避けると…

 

「矢……?ちっバレたかっ。」

 

腕に矢が突き刺さった、俺はすぐに引き抜き後ろを向いた……敵だ。気づいたからよかった、気づかなかったら頭を撃たれていただろう。

 

すぐさま瞬歩を開始し、攻撃範囲から逃れそうとする……だが俺は隊長や副隊長ほどの力は持っていない……わかりきっていた事だ。

 

「つっ……がっ。」

 

胴を撃たれ、行動するための脚も撃たれ、そして心臓を貫かれた。

 

地面に落ちる、地に落ちる。花弁が散っていくように、只傷ついた人を直していただけ。

 

力は無かったでも。

 

「はっ……止まれ、ない…まだ。」

 

心臓を貫いた矢を引き抜き、地面を這いずりながら回道で無理矢理直していく……俺の技量で出きるかどうかは分からない。

 

「……使いきってない。」

 

何処かから溢れ出す朱を最後に、意識が裏返った。

 

 

 

 

「やぁ、昨日ぶり!なんか今日は大変だねぇ。」

 

声をかけられ、目を開ける……そこは精神世界だがいつもと違う点が一つあった。

 

それは白い彼岸花の他に朱い彼岸花が、複数咲き誇っていた事だ。しかもそれは、俺に霊圧を託したもの達の数と同じ……

 

「何でお前はこんな時でも、ふざけていられるんだ!大変だじゃない。」

 

そう言えば、状況も分からないようにケラケラと笑って。朱い彼岸花を見てそいつは。

 

「だって、やっとお前が帰る場所無き魂を斬ったことが嬉しくて嬉しくて仕方がないんだ。虚を斬っても死後の罪が洗い流され尸魂界へと、向かうのみ。

 

やっと……流れずにここに残る物ができた。」

 

宣う、何で仲間を殺してしまった事をお前の誉れだと言うのか全くわからなかった。

今死に逝く、最後の走馬灯さえコレとは忌々しい。口の中を噛む血は出ない痛みすら無い。

 

「………………」

 

言葉がすら出なかった、何を怒ればいいのかすら分からなかった。只ひたすらに胸の内に無念だけがつのる。

 

「……後悔はあるか?」

 

「えっ?」

 

「本当はゆっくり教えるつもりだったが。ここまで来て死ぬのはなぁ……我は八界が死に逝く事自体は赦すが、悔いを残すのは赦さぬ。

 

信じられないと思うが我は、いつもお前の事を思っとるんだぞ。」

 

と上物の着物を翻し、ニタリと俺に対する怒りが少し籠ったように笑いながら俺の方へあゆみよってくる……。いつものようにいや…右手からあの斬魄刀のように朱い液体を滴ながら……

 

「何を、俺にする気だ……」

 

アイツが一歩踏み出す、たびにこちらは一歩下がった……感じたものは異質なものへの恐怖。

 

「大丈夫だ、八界……死にはしないさぁいや今死ぬことを赦さない。世界がお前を死ぬ運命だと決めつけようと、只本当の力の初歩的な事を教えるだけ。

 

あぁ逃げるのはよしてくれよ?

 

後々たんまりと呑むことになると忠告したのに逃げた、八界が悪いんだからなぁ。」

 

アイツの右手から垂れる朱い液体がどす黒い地面に染み込むことなく、足に流れ固められた。

 

「壊れな……つっ」

 

体が動かなかった、いや動かそうと思っても阻害された。液体が体の自由を奪うように覆っていく。

 

「千夜 八界、毒を廻せ。我はいついかなる時でも、お前の幸福だけを祈ってる。」

 

心臓に撃たれた矢と同じ場所を、右手が貫き抉っていた。その場所からなにかが異物が入り込む、体に入ってはならないものと本能が警報をならし続ける。

 

「ぐァァァァァァあぁぁあ?!!?!」

 

だが体の拘束にはばまれて抵抗が出来ない、只あるのは息苦しさ……生への苦しさ。死は救いであると戯言さえ真実だと思えてしまう。

 

「終わりっと……じゃあな、お休み。」

 

右手が引き抜かれる、その瞬間拘束していた朱がほどける。アイツがパンっと一つ手を叩いた、視界が黒で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

目覚めたのは、先程倒れた場所だった……心臓に手を当てる先程までが嘘のように直っていた。多分俺が自力でやった回道が成功した訳じゃない。

 

「コレのせいか………」

 

俺は彼岸花を持った、死ぬことを赦さないと言っていた。本来の能力……

 

彼岸花から垂れる液体を見た……あぁそうか、コレを体内に入れる。アイツは流れ出すコレを毒として俺の体の中に入れ込んだんだ……

 

「………今深く考えるのはよそう……、今生かされた。いや、生きてるんだ。」

 

そうこう、悩んでる間にまた負傷者が出る。託された分だけ、歩みを止めてはいけない。

 

*

 

まだ、隊長各が奮闘しているが劣勢だ。強大なのは相手にはしてないが複数で一般各も押さえ込んでいる。

 

だから。

 

「今すぐ、直します。」

 

戦闘終了後の復帰の速度は大切だ、押すか押さえるかの勝負で今は押されているだから。全員で向かわないといけないんだ。

 

「霊圧はまだ持つ、大丈夫助けられる。」

 

託された人の分まで、今やらなくてはならないのだから。




彼岸花の毒は大量に食べなければ人を殺すには至らない。

主人公がイカれて来るのはまだ先。

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