戦局は更に激しさを増していく、人が救えなかった者が増えていく。何回死体を見たのだろう応急救護班の人達の霊圧も消えて行っている。
「まだ………終わらないのか?」
ポツリと本音が出た、見たくはない仲間が居なくなっていく。もう下らない話も出来ない、虚で一人殉死したのならまだ考えがまとまった……だが。
あまりにも喪う物が多すぎた。
どうして、こんな事になったのだろうか……まだ直す人がいる。まだ引き戻せる人達がいる、俺はまだ繋げられるだろう?止まってはいけないんだ。
いた。 遠くに見つけた、感覚がもう無いような脚を動かす。治療は一瞬一秒が直るかどうかに関わってくる、もう託されるのは嫌だ。
「……意識は、負傷はここ。」
すぐに回道を使う。霊圧は……きちんとたまっている、行く先には地獄も天国もありゃしない。今いるのが煉獄であれば引きずり出そう。
大分損傷が酷いだが……
「戻れ、今お前がいるべきはここだ!逝くな、もう後少ししか居ないぞ。」
根気と気合いでしかない、技術の無さを恨むのはもう遅い。今やれることを全力でやるしか無いのだ。
その瞬間……
矢が飛んできた、俺は勝手に体を内部から動かされるように斬魄刀で弾く……弾かれた矢は斬魄刀に吸い込まれ淡い光を放ち消滅する。
前を見ると、ガスマスクを被った死神以外の奴がいた………敵だ。
逃げても、確実に治している人が殺される……やるしか無い!!矢を構える、タイムラグ等はこちらはまだ認識できない。
矢が雨のように降り注ぐ、一本一本が死へ迎えと言うようだ………彼岸花の朱が地面に落ちる。
「…………一」
矢を一本打ち落とす、さぁ進めっ!!
腹が矢で抉れようとも、コイツをまず殺さなければ皆がまた殺される。致命傷になる矢は打ち落とす、致命傷以外は無視しろ痛みなぞ等に越える。
矢が己の肉を抉る、朱が飛び散る……そしてすぐさま直っていく。回道等使っていない、彼岸花が勝手に体を直していく。
己が己で無くなっていく。
「つっ!何でっ死なない。」
腹に大きな空洞が空いた、本来なら痛みで動けなくなっているだろうだが。もうなにも感じない己の感覚などに意味はない。
ただ、守るためにコイツを殺す。コイツが何人殺したのかは分からない、だけれども助けられなかった者を殺した可能性がある、コイツを討てば弔いぐらいにはなるだろう。
弓と刀圧倒的リーチの差だ、なら恐怖を無くせ!矢の雨に打たれていけ。悔いを残して死んでいった、託された思いを。
「さっさとくたばれよ!」
あぁ、五月蝿い………また朱い花弁が散る。
今度は顔が吹き飛んだようだ、致命傷?意識があるなら、動いているならまだ大丈夫だろう。こいつの命を刈る、それだけを考えろ。
それが今出来ることだ、化け物と言うならばそれを喜んで受け入れよう。
霊圧が高まっていくのが感じた、握る斬魄刀に力が籠るコイツを殺す。虚にも抱かなかった殺意それが己を只動かした。
「……………二」
死んだ者達の痛みはどうだ、蹂躙したお前たちにわかるはずがないだろ?俺にもわかるはずがない、今生きている生きてしまっているのだから。
相手の喉元に最後の抵抗を突き立てろっ。
「……………三っ 力を貸せ彼岸花。」
そう俺が叫べば、斬魄刀の形が変わった朱い液体が流れずに留まる。見たことの無い形になる。
そこにあるのは、黒の宝玉を固めたような姿朱い流れる血ではなく……生が終わり流れることの無い黒。
流れ出ていた霊圧集まる。
喉元を貫く、朱い液体垂れた……肉を裂く感覚それは。味方を斬った感覚によくにてる。命が散るのは呆気ないことを知った。
「なんだっ………それは、もう始解はしてるんだろ!?卍解かそれは隊長各にしか……使えないはず。」
敵が驚いている。俺も実際に驚いてるでも解る……そうだろやっとここに来て分かったんだ。
冥土の土産に教えてやろう。
「やっと分かったんだ。ちゃんと彼岸花の力だ……切り結んだ霊圧を刀血に溶かし奪い取る。それともう一つ、コレが本当の力………
刀血を体に取り込み……そして己の体を根本から組み替る、今までは使わなかった力。この刀の変化はそれを表してるんだよ。」
今までは、外部を中心に使ってきた。それを内部に使ったこと………霊圧は奪えなくなるが。
戦う為の力は遥かに上がる。
重症だろうと、すぐに直ったらのは……すぐさま組み替え造り直していたから。
「………………」
「もう聞いて、無いか。」
喉に突き刺した斬魄刀を横に凪ぎ払い、首を落とした。手が朱に染まる、敵の焦点の合わない目が此方を見たような気がした。
また朱い液体が流れる状態に戻し、敵を刺し霊圧を奪い取る……プラスマイナス0ではないマイナスだ。
始めて使った力、霊圧の消耗が激しいだけど。
「直さないと、ま……だ。」
負傷した仲間の方へ戻る、治療の途中。
俺の負傷なんて、すぐ直って……直されてしまう。だから気にしなくていい腹が吹き飛ぼうが俺自身の体なら簡単に直せる。
「もう、敵は居ない。安心し………」
触れた相手の体に霊圧を感じなかった、もう終わってた……
「…………次に行こう、助けられなくてごめん。」
二つの遺体を置いて次へ向かった、瞳孔の開いた焦点の合わない目がこっちをずっと見ている。
戦局は少しずつ……変わっていく、隊長各が変えていく。輝かしい英雄譚の一つにもなれず散っていく者達に背中を見せる、卍解だ……
隊長の中には普段卍解を禁じられている者がいる、それはあまりにも力が強大すぎて……世界が壊れかねないからだ。水分が干上がる、すべてが干上がる。
まるで太陽が現れたように、圧倒的な熱気……俺はその霊圧に当てられて気を失った。
*
次に起きたのは四番隊の医務室であった。随分人が減っただが………慌ただしさ、いや尸魂界の霊圧の戦闘における乱れは無くなってた。
すぐに聞いた話によると総隊長の戦いにより。尸魂界は長期間の干ばつ等の甚大な被害を被ったがユーハバッハを退けた、とのことだ。
俺は更に聞いた、何人死んだと。
詳しくは分からないが、半数以上殉死したと聞かされた。更に応急救護班での生き残りは数える程度と言うことも。
ある程度傷が癒えた後、助けられなかった者達の家を回った……。最後の言葉を預かった人もいる、家族にごめんと言ってくれとか……悔いはないやら……今でも脳裏にこびりついている。
死神になり皆を助けることを志した貴族
家族を養うために死神となった人
戦うことに価値を見いだした武士
幼馴染みを守りたいと志願した者
…………沢山いた、沢山託して逝った。
一軒一軒回った、遺されたものは俺にどうしようもない怒りをぶつける者……泣き出す者……礼を言う者……
俺は結局……何を守れたのだろうか?
まだ、懐かしい霊圧がここに少し残っていた。
「…………………………」
斬魄刀 彼岸花に残っていた、体を組み替えることが出来るのであれば……自ら幻を見ることも出来るのではないか……?また、逝った者達に会えるのではないか?
「……あぁ、少しは良いよな?」
その日、俺は彼岸花の毒を廻した。