クインシーとの抗争から、暫くした後いつも通りの平穏が戻った。まだ傷跡は深い、多くの者半数以上の脱退者を出したのだから………何せ人手が足りない。
壊れた物の修理や、大量に消費された備蓄の買い足し。四番隊は今日も忙しい……、まだ怪我がなおりきっておらず来る人たちもいるし。脱退した幾人かは、月に一回つまみ持ち寄って飲みに行こうと約束した。
妻持ちの奴もいるし、いつかは子宝の話も聞けるかも知れない。幼馴染みがいたやつは、実家の家業でも継いでいるだろう……団子でも買っておいてやるか。
「虚退治にもいかないとな……」
こんなときにも虚は現れる。一般兵士だろうが補給兵であろうが余裕があれば、退治に向かう。拒否とか嫌だとか言ってはいられない。
やっと死神本来の仕事を行えるぐらいには、機能が回復したと明るく見るべき…………であるが。
そこには、見知らぬ死神がいた。見たことない顔だ恐らく新人であろう、黒い髪をひとつに纏めた俺より頭を一つ分ぐらい身長が低い。
「何で……いきなり、新人の指導を任されているんでしょうか?しかも虚退治でこういうやつは……」
俺は新人を指導するほどの実力はない、それにまだ比較的新人だし平隊員だ……少し抗議をしたが。
「仕方がないだろ……、どの隊も人手が足りねぇんだから。人材の育成も大切だぞ。四番隊だから、こいつが怪我してもすぐ手当てできる。
後優秀なやつだから、戦闘能力の心配はしなくていい。」
「朽木阿木と言います!足手纏いに、ならないように頑張りますっなのでお願いいたします!」
そう、上司と新人に言われてしまい………。多分これで断れる人がいたらかなり強いメンタルと立場を持っているだろう。一般隊員がそれを断れるはずがない。
「はい、わかりました。えーとどこの区で行いますか?多分ほぼ人手不足だとは、思いますが……」
そういえば上司は書類を見て、多分隊員の現世や尸魂界の派遣状況等であろう。
「お前達には尸魂界の見回りを行ってもらう、見回る場所は郊外中心にそれ以外は自由に決めろ。」
…………アバウト過ぎませんか?上司さん。
「うーんじゃあ、阿木君今から早速行こうか……」
80番台は普通に危ないから除外して、虚が出やすいところを回ろう……新人教育もあるが人手不足だ。なるべく働いてもらう。
「はいっわかりました、八界さん。」
うん、元気ないい返事だ。瞬歩で向かうけど……スピード合わせないとな……
「えっと……早すぎたりとかしたら、すぐに言ってねはぐれたら面倒だから。」
そうすると新人はうなずいた。よしじゃあ進むか、瞬歩を使い時々後ろを見て進む……無理はしていないようだ。
「八界さん、聞きたいことがあるのですが……不謹慎な事を言いますが。」
「うん、なんだい?」
「私の家に来ましたか?」
えっ……?何でそんなこと言うのだろうか……うーん記憶に無いな、不謹慎って何かあったの大丈夫っていっておく一応……
「気のせいじゃないかな?似てる人って。この世いや、ここはあの世だ……三人いるってよく言われるしさ。」
俺はそうやって。笑った後ろを向いたから、木に思いっきり正面衝突した……痛い。
*
「気のせいじゃないかな?似てる人って。この世いや、ここはあの世だ……三人いるってよく言われるしさ。」
八界さんはそう言ったでも、確実に家に来ていたのだ。終戦後のまだ傷跡が治ってもいない頃……護衛すらも説得で押し退けて。
「朽木白零の最後の言葉を預かった。」
と一つ言い続けた。
兄の戦場で残した最後の言葉を、家族への最後の贈り物を届けにきたのだ。母はどうしようもない怒りを、その送り人とにぶつけたが。
振り払いもせず……帰らず母の気がすむまで聞いてくれていた。それをちゃんと見ていた、霊圧も容姿も全く同じで何処をどう間違えれば良いのだろう。
「それ……本気で言って…」
そう思わず、言い返した時……。鈍い音と共に八界さんが後ろを向いていたせいで木に気付かず。正面衝突を起こし下に落ちていった。
一瞬、時が止まった。時は過ぎていくので思考の方が正しい。
「八界さーん!!?」
落ちていく彼を追いかけると、死覇装が木の枝に引っ掛かって。みのむしのように、釣り下がっていた。
「ごめんね、阿木君少しよそ見しちゃった……怪我とかは無いから大丈夫だよ。」
彼は、慌てたように枝から死覇装を外していた。大丈夫なのだろうかこの人、少し心配になってきた。
「気を付けて下さいね……八界さん。」
「こういうこと慣れてなくて、大丈夫サポートはしっかりするからさ!虚退治でお互い張り切っていこう。」
切り返すように明るく返答をしてくる、私は今あの事を言い出せなくなってきた………いつでも聞ける……あの発言は本気で言っているのかを。
「そうですね。」
私は八界さんに関する疑問を一旦置いておく事にした、今は仕事に集中するべきだ。いくら優秀と言われようが、実践で役にたたなければ木偶の坊でしかない。
「じゃあ、まだ虚見つからないし……もう少し移動してみようか。」
「はいっ!」
返事をすると瞬歩でまた行ってしまう、急いで追いかける。スピード自体は合わせてくれているのか、楽についていける。
そうやって暫く走っていると。
「そうだこの任務終わったら、お茶でも一つ奢ってやろうか?味は保証するぞ、特にみたらしが旨い。霊力使うと腹へるし丁度いいと思ってな。」
新人指導後のお茶に誘われた、………断る理由が無い。私から見て上司と言うのもあるが、きちんと話を聞ける機会だ逃すわけにはいかない。
「ありがとうございます!」
「お互い頑張ろうな。」
そうやってまた無言に戻った、私も虚の霊圧の感知に精神を集中させる。
「見つけたっ!」
「いるっ!」
お互いに同時に見つけたのか、その方向に移動していく。
私は斬魄刀に手をかける、これは私の……死んだ兄から引き継いだもの。始解のやり方は見てきた。
「虚見えているかっ!阿木君!?」
と八界さんが話してきた、本当ならば一人で退治に向かってしまうのであろうが。私と言う教育対象がいるから確認してきた。
「見えてます。」
「わかった、支援に徹するので頑張ってくれ。応援してるぞ!」
「はいっ!」
これが、入隊して最初の虚退治だ。
兄の残した斬魄刀を構える、そして一つかりそめの名を言った。
「反れ…………水天氷花!」
こんなんかなぁ