「反れ…………水天氷花!」
その形は、刀身は硝子のように奥まで透き通った無色透明に変化していく……何故かその中には水らしき青の液体が閉じ込められていた。
俺は妙に懐かしいような気がしたが、今は虚が前にいる気は抜けない。
「縛道の四 這縄!いまだっいけっ!」
言霊と共に自身の霊子が抜けていく感覚を覚え、相手の虚の腕にまとわりつき自由を奪う。
新人の補佐として俺はここにいる、止めとかはあいつに任せよう。
「わかりました、はぁぁぁ!」
そう一つ気合いを入れ虚に一直線に突っ込んでいく新入り、その込める霊圧と剣の重さは入ったばかりの頃の俺を遥かに凌駕していた。
所謂、天才または秀才。
これならば、これからの業務の呑み込みも速いだろう。虚にの切っ先が突き刺さる、すると………突然内部から破裂した。
もう一度言おう、内部から破裂した。
「………なにやってるんだ。」
そういえばその新入りは、虚の臓物ぽいものやら血と思われる物やらを被りながら。斬魂刀を見せてあわてて説明をしだす。
「えっと、えーと。中にある霊気を気化させて爆発起こしました。
これは水の三変化が起こせる物なのです……いま水蒸気起こして蜃気楼を作り上げることも可能ですよ。」
……えっとつまり、虚に流れていた霊圧やらに影響を与えて異常に体積を増やして……内部からパーンってこと?
うわぁえげつないなぁ……
「凄いけどさ、とりあえず……体洗お?」
さすがに帰り血まみれの新入りを、ある程度任務が終わったとはいえそのままつれてある来たくない。
そのままの足で、川で血を洗い流す新入り。ちなみに俺は魚を素手で取っていた。大きな戦いが起こったばかりなので新鮮な食べ物はないし。
更に値段も高い。
俺自身は平隊員でしかないため、給料も安い。新鮮な魚が取れるここはある意味無料で質の良い魚がどんどん取れる夢のような場所だ。
任務中に魚をとるなっ?ならば魚を分けて口止めしよう、今はどこも飢えているし。
飢えてないのは貴族位だ。
「……えっと終わりましたけど、何でそんなに魚持ってるんですか?」
「魚あげる。」
「入りませんっ!てっ生臭っ投げないでください。いたい地味に尻尾の打撃がいたいっ!」
………どうしようか魚をあげて口止めは効かないようだ。そういえば新入りは貴族だった……そりゃあ無理か……。
「……魚取ったこと見逃してくれない?給料的に食費の圧迫が凄くて……物価もどれもこれも高いしさぁ。」
「さっきとはうってかわって、生々しい生活状況話してきましたね。さっきまでの頼れそうな姿はどこにいったんですか?」
「任務終わったし、大体大丈夫かなぁって。」
「………この上司色々と大丈夫なのかな?。」
「まぁ、帰ったら団子食べに行こう。初任務の完遂祝いってやつだ。」
そうやって帰って、取ってきた魚を保存処理してから。待ち合わせの場所に向かった。お気に入りの団子屋だ、脱退したやつがやっている。
跡継ぎ跡継ぎ、五月蝿かったとあいつの親は嘆いていたからなぁ。
「おっちゃん、いつものやつ二つ。」
暖簾をめくり、店に入る席などはあまり埋まっては居ないが、客はぽつりぽつりときちんといるため。
閑古鳥が鳴いているわけではない。
空いている席に座り新入りを見た、すると新入りをすこしたどたどしいが座り始める。
貴族の方だし、こう言うところには慣れては居ないのだろう。行って選ぶというよりは、商人を家に呼んでいるだろうし。
「あいよ、みたらしとつぶ餡と抹茶か。」
「あぁよろしく。」
改めて店主が確認をとると、薄いお茶が出てくる。金にもらならい屑葉で淹れたものだが喉を潤すぐらいの目的であるならば丁度いい。
「初めて来ました、こう言うところは……基本訓練と家の行き来だったので。」
と新入りは目をうろちょろさせて話してきた、こういう暇な時間は話す内容が無いのが一番こわい。
「そうか、あの朽木家だもんな。まぁこれからは貴族であれど仲間だし。これからこう言うところに来ることもあるだろう。
早めになれておいた方がいいぞ。」
そうお茶をすする、ほぼ質の悪い水をすこししか出ていないお茶の味で誤魔化したような印象がぬぐえない。
質の良いものは、お金を取って提供しているのだから当たり前と言えば当たり前と思える。
「はい、わかってます。所ですこし聞きたいことがあるのですが。
本当に面識が無いのですか?」
新入りはまたその事を聞いてきた、もしかしたら酷く勘違いをされているのかも知れない。
「無いと思うよ、初めて会うし。普通君の家の前には行けないからね……今回だって人員不足だから当てられた平隊員だよ。」
本当に人員不足だから当てられたようなものだ、有力な者は大体出払っている。
「はいっお待たせ。抹茶とあんことみたらし一本ずつお金はもう頂くよ。」
「きたようだ、はいおっちゃんお金。これで足りると思うがつり銭は入らない。」
いつも頼む物が二つ分来た、お金を支払いもう一度新入りの方を見る。………なんか見たことの無い食べ物を見るような様子だ。
もしかして串団子を見たことが無いのか?
「これは串団子だ、串をもって喰う。抹茶はすこし苦めだから団子と一緒の方がいいな。」
「わかりました、一応串団子は見たことはあるのでそんなに言わなくてもいいです。中々のものですね、特にみたらしがいいと思います。」
「今回は奢りだから、ちゃんと食べとけ。」
そうやって話していると。
「おっ久しぶりだな、八界」
あの襲撃を機に止めた同僚の姿が目に入った、店の服を着て頭に髪が入らないようにかはちまきを巻いている。
跡継ぎといっても止めたばかりなので、客に甘味を提供できるうでてはないと言ったところか。
「いや、そうじゃないだろ。お前は止めたばっかりだしな今日は新入りと一緒なんだ、多分いやお前より大分力はあるぞ。」
「きついことを言うなぁ、てっ朽木家か。そりゃあ訓練も大変だろうしな……今はお互い大変だろうし頑張れってところか?」
「うーんそっか、お前も修行頑張れよ。俺に食わせられるものをきちんと作れ。何度甘味処の息子だーって言って失敗食べさせられたか。
数え切れないぞ。」
「はいはい、わかりましたよっ。」
そう、下らない話をしていると新入りの動きが止まっていた。あり得ないものを見るような目、まるで鳩が豆鉄砲でも食らったかのようだ。
「うん、なんだ。餅が喉にでもつまったか?」
「…………八界さん
一体誰と話しているんですか??」