穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック

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サブタイで誰が初登場するのかモロバレな件について(笑




第19話:”中間管理職の悲哀をニグンさんに感じるのは間違ってるだろうか?”

 

 

 

さてこの世界ではモモンガとキーノ、あるいはダークウォリアーとイビルアイ、そして今はその弟子たちも加わり毎年ビーストマンの間引きを行っているようだが……

 

原作を正史とするなら、本来ならそれを請け負う存在がいたはずだ。

そう、”ニグン・グリッド・ルーイン”率いる『陽光聖典』だ。

 

モモンガ、いやダークウォリアー一党が竜王国の専属となっている現状、ビーストマンとの戦いに陽光聖典が投入されることはない。

それどころか、その大元である竜王国とスレイン法国の関係は、露骨な対立関係や険悪ではない物の、お世辞にも良好あるいは友好的とはいえない。

 

基本、法国は”()()()()を救済”する方針であり、竜王国王女ドラウディロン・オーリウクルスは、『存在自体が面白くない、だが強いゆえに手が出しづらい相手』であるドラゴン・ロード、1/8とはいえそのドラゴン・ロードの血を引く女だ。

そして食おうと攻めてくるビーストマンも亜人……

法国にとって所詮、竜の庇護下であることをよしとする人の誇りを捨てた救う価値もない人類と、野蛮で下賎な亜人との戦いだ。干渉する意味も無い。

 

それに小癪なのは、ドラウディロンが雇う相手だ。どうも何かと対立するアーグランド評議国が推挙したと噂される二人、ダークウォリアーとイビルアイだ。

活動期間の割りに老いた様子がないのでおそらく不老か長命の亜人、あるいはドラウディロンと同じく竜の血を引くと思われる人間と法国は判断していた。

 

法国が人類擁護/亜人排斥を国是としてる以上、明確な敵対関係にある評議国と竜王国の繋がりが強くなるのは面白くない。

確かに国家としては評議国は竜王国に不干渉のようだが、最近は弟子まで引き連れ竜王国に乗り込んでるらしい二人にはあの忌々しい”白鎧”の息がかかっているのは間違いない筈だ。

 

 

 

まあ、法国・竜王国・評議国のややこしい国家関係は一先ず置いておくとしても、ビーストマンと血で血を洗う闘争を繰り広げていないニグン達陽光聖典が、原作と比べ難度や練度が大きく劣ってるかと言えば……確かに劣っているかもしれないが、それも小さなものだろう。

法国には(陽光聖典で勝てる程度の)投入すべき戦場が多くあり、実際某孕ませ王が幅を利かせるエルフとの戦争など様々な戦いに参加していた。

人的消耗がビーストマンとの戦闘よりは少ないと思われるため、難度はともかく練度ではむしろ勝ってるかもしれないくらいだ。

 

 

 

「嫌な天気だ……」

 

ガゼフ・ストロノーフとその一党を、自分を含め騎乗した部下と共に追いかけるニグン・グリッド・ルーインは、急に曇りだした空を睨むように独りごちた。

吹き付ける風が急に温度を下げたように感じ、寒さに頬が引きつると同時ある違和感……かつてとあるアダマンタイト級女冒険者につけられた傷が疼き、同時に湧き上がる不快な記憶に顔をしかめた。

 

(しかもよりによってカルネ村に入ったか……)

 

ニグンの正直な心情を端的に述べれば、『ベリュース地獄に堕ちろ!!』だ。

実はニグン、作戦発動前に「名目上は隊長である」ベリュースと一度だけ顔合わせをしていた。

自分の地位を知っていたようで、妙に媚びてきたが……そこには不愉快さしか残らず、ニグンに言わせれば「唾棄すべき小物。生きていても役に立たない俗物」だった。

 

陽光聖典隊長という地位にあるせいで、ニグンはある程度は状況が見えていた。

あのような小物の俗物が名目上は先遣隊の隊長を任される……一見すると、法国(くに)は今回の作戦を重要視してない様にも見受けられる。

 

だが、そうじゃない。

上層部に便利屋扱いされてる傾向はあるものの……自分達は六色聖典の一つ、天使を使役し集団戦を得意とする陽光聖典だ。

投入された理由はガゼフ・ストロノーフを確実に捕殺するためだろう。

つまり、

 

(先遣隊は捨て駒……)

 

王国辺境の村々を襲う帝国兵に偽装した先遣隊……それを追うガゼフ達戦士団が追いつき、先遣隊と交戦してる間隙をついて自分達は包囲し、一気呵成に殲滅する。

そういうシナリオだった。

そして今回、上層部が手を結んだ醜悪な王国の貴族派貴族は、こう国王に報告するのだろう。

 

『ガゼフ・ストロノーフ、越境した帝国兵と交戦、討ち死』

 

と。

その時、証拠として提出されるのは”帝国の鎧を纏った兵士”なので何の問題もならない。

もし生き残っているなら、軍人としての覚悟もなくやたらと口が軽そうなベリュースは口封じに始末する予定だったが……

 

(あの阿呆がっ!!)

 

そんな悠長な事を考えず、会った時になんらかの理由をつけてさっさと息の根を止めておくべきだったとニグンは後悔していた。

 

 

 

『よりによってカルネ村を襲撃だとっ!?』

 

ロンデスが気を利かせてベリュースがカルネ村襲撃を決めた直後にこっそり放った伝令からそれを聞いたとき、ニグンは素直に激昂した。

なぜ、襲撃リストに記載されてない村、しかもカルネ村を襲うのかと。

 

カルネ村、通り一遍の知識でも「城塞都市エ・ランテルの小型版のような、開拓村とは名ばかりの砦」、「村民のかなりの数が徴兵対策で冒険者となっている。名ばかりの冒険者ではなく、きちんと依頼をこなし白金級」……

そして、

 

(ダークウォリアーとイビルアイが住居としている村……)

 

あの竜の血を引くと噂され、毎年ビーストマンの屍の山を築いてると評判の恐るべき強者。

 

「竜王国までの移動時間を考えれば、村に常駐してる可能性は低いが……」

 

できれば、それが杞憂であってほしいと自分の信奉する六大神、光の神に祈った。

 

 

 

 

 

 

 

ニグンの願いは一部叶った。

ベリュースは望んだ通りにもうこの世にはいない。いや、ロンデスを除く先遣隊の全員が既にこの世から消えていた。

 

ニグンは知らなかった。

ダークウォリアーとイビルアイが、その弟子達を引き連れ『一瞬で竜王国とカルネ村とを往復できる手段』を持っていることに。

 

そしてニグンの最大の不運は……カルネ村で信奉される神は、光の神などではなかったことだ。

闇よりなお深き深遠たる死の神が治めし地に、光の加護が届くことはない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

結果、ベリュースの尻拭いをさせられてしまうニグンさんでした(^^

ついでに法国・竜王国・評議国の関係も若干原作と異なっていて、法国と評議国が対立関係にあるのは同じですが、

・法国→竜王国:敵対はしてないが無関心。基本、ビーストマンとの抗争は参加する気ナシ
・評議国→竜王国:原作同様国家としては表向き支援してないが、実は繋がりがより深そう(ダークウォリアーとイビルアイを推挙した?)

さて、次回はいよいよエンカウントの可能性高しです。


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