そしてサブタイで誰が出てくるかモロバレ(^^
カルネ村に住む神官服の少女、”エンリ・エモット”が駆け込んだのは村で一番大きな家だった。
一見するとただ大きなログハウスだが、その構成される丸太の一本一本が魔化されており、その防御力はこの世の大抵の城砦を凌ぐといわれている。
そして見るからに頑丈そうな樫のドアを潜り、応接間に思しき部屋に入ると……
(お香の匂い……今日はお骨様モードだったんだ)
最初に感じたのは上品な香り……そしてエンリの想像通り、ゆったりとしたロッキングチェアには大柄な
そう、この村で最も尊敬され、神に等しい崇拝を集めている”彼”は、生者を憎むはずの
だが、その印象はこの世界で世間一般に知られるそれとは大きくかけ離れていた。
カルネ村特産の一つである羊毛織物ブロード(ポプリン)をチャコールブラウンに丹念に染めて魔化した落ち着いた色合いのローブに身を包み、色々な機能がついているらしいマジックアイテムのメガネをかけ、そして口にはパイプをくわえ、書に視線を落としていた。
ただしパイプはどうやら口寂しくくわえているだけで、匂いの発生源その物は机に置かれた香炉だろう。
”彼”に言わせると受肉した状態より骸骨でいたほうが音と匂いには鋭敏になるらしく、香を楽しむときは決まってスケルトンになっていた。
だが、そのひどく落ち着いた知的な雰囲気はいいが、彼の膝の上で眠りこけている”小柄な吸血姫”のせいで女として少しばかり感じることがある。
具体的には女として妬けるし羨ましい……幼い頃は同じように膝を占領して眠りこけた経験が豊富なエンリは、膝に座るには少しばかり成長しすぎてしまった自分を少々恨めしく思う。
もっともストレートに口に出すほど彼女は子供ではなく、
「すみません、
「よい。もう起きた」
膝の上でキーノ……250年の時を生き、かつては”国堕とし”吸血鬼”キーノ・ファスリス・インベルン”はもぞもぞともどかしそうに小柄な肢体を動かし、牙がはっきり見えるほど大きなあくびをする。
「キーノ、おはよう」
「おはよう。モモンガ」
”Chu”
二人は自然に唇を合わせた。もっとも片方は骨であるので唇は無いが……それでもエンリ的にはジェラシーを感じてしまう。
こういうシーンを目撃したら、躊躇い無く「わたしも~」と飛び込める妹が心底羨ましい。
「エンリ、何があった?」
「
定期巡回とかっこつけた言い方をしてるが、要するにネムは元”森の賢王”である魔獣(カルネ村では聖獣扱い)”ハムスケ”に乗り、ゴブリン・ライダー達をお供に散策(あるいは遠乗り)に出かけていた。
そしてその途中に見つけたのが……
「ほう……”帝国の甲冑を纏った騎兵”の集団か」
お供のゴブリン・ライダーの一体が一足早く伝令として駆け戻り、現在ネムは残りのゴブリン・ライダーを引き連れ距離をとりながら追尾しているという。
「臭いな」
「ああ」
キーノ、別の世界ではイビルアイと偽名を名乗るのが普通であり、この世界でも村の外では仮面をかぶり同じ偽名を名乗る彼女の言葉にモモンガは頷き、
「帝国兵がわざわざこんな辺境の村を襲うメリットは少し思いつかないな……だが、最近異常な頻度で近隣の開拓村が襲われているとも聞く。野盗化した元帝国兵の可能性もあるが、」
モモンガは思案し、
「だが、いずれにせよ国境侵犯には違いない。エンリ、村外での迎撃の準備を。ただし全員は殺さぬように。事情聴取のための人員もいりよう」
「はっ!」
エンリは一礼すると品がないと思われない程度の早足で家を出るのだった。
読んでくださりありがとうございます。
アインズ様改めモモンガ様は、原作より大分早くこの世界に
カルネ村に辿りついたのはエンリがネムくらい頃?
その前はキーノさんと旅をしていたようです(軽いネタバレ?