穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック

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個人的に週末名物(にしたい)一日2話投稿です。

本日二度目の投稿は、無駄に長い謎サブタイ(笑
でも、一応意味はあったりします。

基本、モモンガ様の初期装備の話ですが……ただし、ただでさえ高めのモモンガ様ヒロイン度が微上昇?




第31話:”過去篇I・黒騎士のようで黒歴史 ベオウルフにランツクネヒトを添えて。デザートにマーラ様はいかがです?”

 

 

 

モモンガは”人間の証明たる指輪(リング・オブ・ヒューマンビーイング)”を満を持して試してみる。

 

「おおっ、これはっ!?」

 

公称177cmとされてるお骨様だが、どうやらこの世界においては骨格身長が177cmっぽく、それに受肉させる……筋肉や神経や皮膚を被せていくのだから当然一回り以上大きくなる印象だ。

 

例えば、純然たる死の支配者(オーバーロード)ボディだと目立つ下顎骨(下あごの骨)が人間にしては尖りすぎてたり、赤い宝玉型の世界級アイテム、いわゆる”モモンガ玉”の存在を考えたら内臓の収まる位置が……などそのまま肉付けしただけでは問題が多発しそうだが、そこは魔法。

受肉エフェクト(?)の中で各部の不具合は見事に是正されていく。

 

ついでに言えば、リアルでは生きていく分には問題ないがそれ以上のものではなかった食事事情のせいで、痩せぎすだった本来の体とは似ても似つかぬ健全で健康的な筋肉がついていた。

ボディビルダーのようにこれ見よがしにつけた筋肉ではなく、スポーツ競技選手のように必然的についた筋肉を思わせる……いわゆる”細マッチョ”体形だ。

まあ、思わず鏡の前でポージングしてしまう気持ちも理解できなくはない。

 

肉付きが良くなったせいか、顔自体もなんとなくだがリアル鈴木悟より5歳ほど若返ったようにみえる。

というより、栄養状態が良いことが当たり前だった21世紀前半に彼が生まれていれば、割と童顔だったことがわかる。

アイドル顔ではないが俳優顔、黒髪で優しげな目元のいかにも人当たりの良さそうな青年……それがこの世界で受肉したモモンガだった。

 

モモンガは宙に浮かんだままの”遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)”で、物珍しそうに自分の頬をペタペタ触りながら確認してみる。

 

「あれ? 俺、こんな顔だったっけ?」

 

記憶にあんまり自信はない。そして視点を少し下げ……

 

(よ、よかった……復活してるよ)

 

ナニが復活したかは問わないが……排泄以外に未使用のまま無くなる危惧があったそれは、無事に生えてきたようだった。

しかも本人の願望かどうかは知らないが、後の多くの処女(おとめ)の破瓜の血を吸う……ことになるかもしれないモモンガ様の分身体(?)は、心持ちサイズアップしてる気がしないでもない。

 

「あー、モモンガ。無事に人に化けれたのは何よりだけど、」

 

その様子をどこか微笑ましげに見ていたツアーは苦笑しながら、

 

「そろそろ服を着たほうがいいんじゃない? 私は一向に気にしないけどね」

 

「ふわっ!?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、全裸の受肉モモンガが取り出したのは黒いフルプレート・アーマーだ。

原作でのモモンは聖遺物級(レリック)アイテムでの統一だったが、どうやら今回は種族Lv喪失によるレベルダウンを考慮したのかどうも聖遺物級(レリック)伝説級(レジェンド)アイテムの混合っぽい。

例えばその全身鎧は原作の”漆黒のモモン”のそれに近いデザインだが、細部が結構違う。

何よりモモンの初期装備は魔法で編んだソレだが、この鎧はちゃんとした物理的な物、それも伝説級の中でも上位に来るだろう逸品だ。

アダマンタイトを地金に希少金属を混ぜ合わせた合金を用い、ユグドラシル式の魔法付与や魔化が施した鎧は失った種族特性を補えるだけの防御力と特性を有していた。

他の装備との相乗効果もあるのだが、上位物理無効化III/上位魔法無効化III、冷気・酸・電気・炎攻撃無効化III、刺突武器耐性IV、斬撃武器耐性IV、殴打武器耐性IV、毒・病気・麻痺など状態異常に絶対耐性等々を受肉したモモンガに与えている。

もっとも原作との一番の違いは(ヘルム)を装着してないことなんだが。

別にナルシスト的な意味で顔を晒したいわけではなく、そうそうダメージを食らうことも無さそうなので、あえて視界を狭くする(死角を増やす)ヘルムをかぶる必要はないという判断だった。

あと、マントは別物……豪華なファーのついた薄茶色の代物で大きさ自体もかなり大きく、きっと(くる)まれば簡易寝袋になりそうだ。もしかしたら獅子か何かの毛皮だろうか?

 

ついでに言えばこの時に選んだ主武装は、二つ。

腰に吊るしたのは間違いなく高性能なのだが、伝承の関係からか”子持ちの母竜”相手には途端に(なまく)らになるという微妙な特性(ただしその名の通り刺突は効果が落ちない。また鈍器として使う分には有益)を持つ片手両刃剣(カッツバルゲル)『フルンティング(”突き刺す者”という意味がある)』。

背中に鞘ごと背負うのはやはり性能は抜群なのだが、総合Lv90以上のプレイヤーが装備すると伝承どおり自壊してしまう(使い手の力で折れてしまう設定。ただしLv90以下の者が再び握れば即時修復される親切設計)両手持ちの大剣(ツヴァイヘンダー)『ナイリング』だった。

どっちもゲルマン叙事詩”ベオウルフ”に登場する剣で、性能自体は文句なく伝説級なのだが伝承をモチーフにした妙な特性のせいか、揃って聖遺物級に分類されていた。

 

このフルンティングにナイリング、モモンガがドイツというか……ゲルマンっぽい何かに弩ハマりしなおかつ拗らせた時期(つまりパンドラズ・アクターの誕生時期と一致)に入手した物であり、実は立派な黒歴史の一部だった。

実際、ゲットしたのはいいが魔法職だったモモンガにまともに装備できるわけもなく、仮に装備できたとしても特にナイリングは振るった途端に折れてた可能性が高い。

さらに黒歴史を晒せば……モモンガは装備できないことを殊更悔しがっていたという。

というのも、カッツバルゲルもツヴァイヘンダーもマクシミリアン1世統治下のドイツに実在し、その精強さを欧州全土に知られた伝説的傭兵団”ランツクネヒト”の象徴的な武器であり、そのカッコイイ響きも相まってベオウルフに加えその世界観にも浸りたかった本人としては残念無念だったに違いない。

 

こうして苦労して入手したにも関わらず、当時は装備も出来ずコレクターアイテム以上の価値がなくなり、半ば死蔵していた二つの剣をモモンガは存在を思い出しつつ、内心ウキウキしながら引っ張り出し、装備したのだった。

モモンガは気づいてないが、ベオウルフは「竜殺しの伝承」として有名なのだが……ツアーも知らないからなのかもしれないが、特に気にした様子もないので問題ないのだろう。きっと。

 

 

 

まあ、黒歴史と言えば、今の装備に行き着く前に本質的には臆病なモモンガが一度神話級(ゴッズ)アイテムで身を固めようとして、ツアーに『それ、性能が凶悪すぎて絶対に悪目立ちする。いきなり法国に目をつけられるかもね』とやんわり指摘されたこともそうだろうし、何より「素っ裸(すっぱ)で鏡の前でポージングした挙句、自分のやや肥大化し蘇生した()()()()を凝視してしまう」のも後からすれば立派に黒歴史だろう。

 

人と言う生き物は、もしかしたら生きている以上は黒歴史を量産してしまう哀しい存在なのかもしれない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

前衛用装備一式を”簡単早着替え”に登録したモモンガにツアーは優しげな声で問いかける。

 

「モモンガ、いっぺんに色々なことがそろそろ疲れてきたんじゃないか?」

 

「……そういえば、少し疲れたかも。あれ? そういえば何時から眠ってないんだっけ……?」

 

オーバーロード・ボディの時は飲食どころか睡眠も疲労も感じず、酸素すらいらない状態だ。

時間感覚がおかしくなっていても不思議じゃなかった。

 

「困った男だね。もしかしてこの世界に落ちてくる前から寝てないんじゃないのかい?」

 

「た、多分……」

 

そんなモモンガにツアーは苦笑し、

 

「今は少し休むといい。戦士にも休息は必要なんだからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

いや~、気がついたら30話越えてましたよ(^-^
いきあたりばったりのシリーズなのに、ここまで続けてこれたのも応援してくださる皆様のおかげっす♪
感想や高評価、お気に入り登録とかやっぱり執筆テンションあがりますよ~。

今回は箸休め的なエピソードですが……ネムをはじめ、特にロリ組は後で色々大変そうだ(えっ?
いや、どうやら作品世界観的にホモサピエンスは既に生存競争に敗れ、現在の地球人より強靭な人類みたいだから心配要らない……のかな?

それはさておき、モモンガ様の100年前の初期装備、実はガゼフと会ったときのそれより上等だったりします。
まあ、普段はそんな強敵とエンカウントしませんし、いざとなればフルアーマーを含む他の装備を蒸着(笑)できますしね。


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