穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック

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せっかくの週末なので、久しぶりに深夜アップを敢行っす(^^

今回から時間軸は100年前から再び現在へ……モモンガ様は絶好調みたいですよ?
少しだけBLタグが仕事してるようなそうでもないような……






第37話:”モモンガ様は非常に凝り性です”

 

 

 

時間軸は再び現在へと戻る……

 

 

 

「モモンガ、今日はどういう用件だい?」

 

「ツアーの顔を見に来たってだけじゃ駄目か?」

 

ツアーが八欲王の遺産を守りながら(ねぐら)とする神殿と思しき場所……久しぶりというほどの長い時間は経ってないが、モモンガは一番最初に会ったときの姿のままでここを訪れていた。

 

「こんな顔でよければいくらでも、さ」

 

ひじょーに余談ながら……この骨と竜、同性ながら二人になると未だにイビルアイことキーノが嫉妬するほどダダ甘な気配を出すらしい。

本人達の名誉のために言っておくが、揃ってBL趣味はないことを断言しておく。

 

「だが、そのためだけに君が来るとは思えないな?」

 

「お見通しか。いや、今日は俺が住むカルネ村に()()があってね。ついでにそれをツアーへの土産にしてみたのさ」

 

パチンとモモンガが骨の指を鳴らすと、開きっぱなしの《ゲート/転移門》から次々と安眠の屍衣(シュラウド・オブ・スリープ)を担いだスケルトンが現れた。

 

「モモンガ、それは?」

 

「スレイン法国名物六色聖典が一つ、陽光聖典……の成れの果てさ」

 

「そりゃ結構なお土産で」

 

中身を察したツアーが愉快そうな笑い声をあげた。

 

「法国との取引材料にするといいよ」

 

「いいのかい? (やっこ)さん達、必ず蘇生するんじゃない?」

 

「構わないさ。法国にデスペナのほとんどない第9位階魔法《トゥルー・リザレクション/真なる蘇生》を使える者がいないのはほぼ確定だ。連中が使えるのは、《オーバーマジック/魔法上昇》を使っても第8位階までが精々だろうし。つまり、」

 

モモンガは苦笑する気配と共に、

 

「大袈裟な儀式を行って蘇生するにせよ、陽光聖典全員の大幅なレベルダウンは免れないのさ。法国に無闇やたらにケンカを売るつもりはないけど、恩を着せる()()をして戦力減少を謀れる好機だと思ってるよ」

 

モモンガの予想だと、法国が使うとすれば第5位階の《レイズデッド/死者復活》が関の山、どれほど陽光聖典の価値を高く評価し頑張ったとしても第7位階《リザレクション/蘇生》が精々だろう。

いや、蘇生魔法の層の薄さから考えて、リザレクションは厳しいか?

いずれにせよ、ニグンや隊員達の大幅なレベルダウンは避けられず、陽光聖典としての活動は難しくなると踏んでいた。

 

実際、この予想は当たり陽光聖典は部隊活動を凍結。復活したニグンもとある漆黒聖典の一人の付き人扱いでダウンしたレベルを取り戻そうと奮闘する日々を送ることになるのだが……それはまた別の話だ。

 

 

 

「あっ、忘れるとこだった。ツアー、これはオマケだ」

 

とモモンガは水晶塊を立てかけてある白銀の鎧に投げる。

間髪いれず鎧は動き出し、それをナイスキャッチ。

相変わらずツアーの操作術は巧みであった。

 

「ほう、これはなんだい?」

 

「”魔封じの水晶”。ツアー待望のユグドラシル産アイテムだ。中に封じられてるのは第7位階魔法《サモン・エンジェル・7th/第7位階天使召喚》、首無しの天使こと”威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)”を呼び出す奴さ。端的に言えば、冒険序盤の中ボスを呼び出すアイテムかな?」

 

「へえ~。仕事熱心な()()()()を持って私は幸せだよ」

 

とツアーがお気に入りのネタを披露すれば、

 

「照れるじゃないか。”母さん”」

 

「モモンガ、ここは”父さん”と呼ぶべきとこじゃないのかい?」

 

「いや、()()()()がこう呼んだほうがツアーが喜ぶって」

 

「あの悪戯者めっ」

 

古い友人にどうやって仕返ししてやろうかと頭を捻らすドラゴンがそこにいたという。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ツアー、その水晶、中の魔法を開放すると多分トラップが発動するぞ?」

 

「トラップ? どんな?」

 

「おそらく感知系の魔法が自動起動するタイプだと思うけど……確証はないな。ただ陽光聖典の隊長が持っていた物だから、極端にヤバいものじゃない筈だぞ? 常識的に」

 

「モモンガ、スレイン法国に常識を求めるのか? 随分、無謀な事を考える」

 

「それもそうか」

 

ツアーの皮肉にモモンガは苦笑で応えるが、

 

「しかし、このまま持っておくのも気味が悪いな」

 

「なんだったら、ここで発動させてみるか? 覗き見対策ならバッチリとってるし、それ以外の魔法でも俺なら大抵の事は対処できるから」

 

というかツアーの塒自体が探知魔法や捜索系魔法への万全の対処がしてあるため、大きな心配は要らないかもしれないが。

 

「ん? 陽光聖典の隊長とやらしか発動できないような細工はされてないのかい?」

 

「特に個人認証化もされてないし、これといったロックもかかってない。というか多少の素養があれば誰でも発動可能になってる時点でかなり無用心だよ。まあ、中身が威光の主天使(ソレ)じゃあ、あんまりロックかける意味はないかもしれないけどさ」

 

「なるほどね。物は試しか。やってくれるかい?」

 

「りょーかいだ」

 

こうしてモモンガは水晶に封じ込められていた威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を召喚するが……

 

”ぴきっ”

 

「「あっ」」

 

小さな音を立てて空間の一部がひび割れ、それがすぐに修復される。

モモンガはそのエフェクトに見覚えがあった。

 

「どうやら俺の攻性防壁が仕事したみたいだ。やっぱり感知系だったか……」

 

「ちなみにモモンガ、どんな防壁をしかけてたんだい?」

 

「大したもんじゃないよ。《トリプレットマジック/魔法三重化》、《マキシマイズマジック/魔法最強化》、《ワイデンマジック/魔法効果範囲拡大化》、《ペネトレートマジック/魔法抵抗難度強化》、《エクステンドマジック/魔法持続時間延長化》をかけた《チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷》が消える時間ギリギリまで暴れ回り、その時感電死した者を触媒に、《ディレイマジック/魔法遅延化》で時間差をつけた最大6体のデスナイトが顕現するって感じ」

 

さらっと言い切るモモンガ。

原作と比べるとどっちが被害が大きいかはさておき、100年の時は彼を随分と凝り性にしたようだ。

 

「言葉を聞く限り、随分派手っぽいね? 竜を象った雷が暴れ回りゾンビの巨人騎士が現れるなんてさ」

 

ツアーと未だに切れず離れずの良好な関係のせいか、それともリスペクトされてるのか?

モモンガはドラゴンと名の付く魔法を比較的好んで使う傾向がある。対処の面倒臭さからデスナイトを選んだが、内心「触媒召喚するのはスケリトル・ドラゴンの方が良かったかな?」とか思っていた。

 

「派手なだけだよ。むしろ威力より見栄え重視? オマケにドッキリ要素を加えただけ。電気に完全耐性をもつツアーなら問題にもならないだろ? デスナイトじゃ何体いても相手にならないだろうし」

 

(よし、やっぱり次はフィナーレにスケリトル・ドラゴンの団体召喚を追加しよう。20体くらいで骨竜大行進(デスパレード)させれば、見栄えもそれなりに良くなるだろうし)

 

やはりどこかずれてるお骨に、

 

「そりゃそうだけどね。やれやれ、法国の連中に少しだけ哀悼の意でも示したくなるよ」

 

そう苦笑するツアー。

 

「いいじゃないか法国だし。それに六大神の遺産なんて大層な代物をいくつも隠し持ってるんだろ? どうせ大したダメージも出ないうちに鎮圧されるさ。むしろ嫌がらせ程度にしかなってない気がしてきた……」

 

「いくら法国でも、それだけ仕込めば流石に少しはダメージ出るんじゃないかな?」

 

 

 

しかしツアーもモモンガもこの時はまだ知らなかった。

この一撃で《プレイナーアイ/次元の目》を使っていた土の巫女姫とその取り巻きが文字通りに全滅。神殿自体も大ダメージを受け、オマケに半ば消し炭と化した遺体が搬送中にデスナイト化し、更なる惨禍を撒き散らしたことに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

法国の皆様にはお見舞い申し上げ候(笑

とりあえず新章の滑り出しって感じだったけどいかがだったでしょうか?
そしてオカンドラゴンは健在で、お骨様は色々尖がった? いや、そうでもないか(笑


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