穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック

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村にいないメンバーの話がメインです。




第05話:”とりあえず現状の戦力を確認してみよっか?”

 

 

 

(”ブレイン”さんや”グ”が不在っていうのはちょっと痛いけど……)

 

広場に集まる猛者達……難度120、英雄の領域に足を踏み込みながらもを越えなお高みを目指そうとしている修道拳闘士(グラップラー)ゼロを筆頭に、ゼロに置いていかれてなるものかといわんばかりに難度120に接近しつつある探求者(ゲイザー)デイバーノック、それに他の村人だって主にモモンガが生み出すアンデッドを相手するなどをした日頃の実戦的な訓練と冒険者としてこなした数々の任務により、ここに集まる自衛戦を請け負う村人の中で難度30を下回る者は誰もいない。

 

少しだけ解説が必要かもしれない。

ブレインというのはフルネームを”ブレイン・アングラウス”といい、数年前の御前試合で現王国戦士長の”ガゼフ・ストロノーフ”に敗れた剣士だった。

ただ、その剣士としての才覚は決してガゼフに劣るものではない。

御前試合直後、茫然自失としていたところを不可視化をかけてキーノとのデートがてらに試合を見物していたモモンガにスカウトされた。

以後、カルネ村に移住し、剣(刀)と拳の違いがあるとはいえ同格の好敵手であるゼロと互いを研鑽し、ある時はモモンガが提供する格上のアンデッド相手に挑み、剣士の頂点を目指さんとしているのである。

余談ながら最近は敬愛する”お館様(モモンガ)”の影響からか刀剣のコレクションをはじめたらしい。

ただし美術品的な価値より実戦的な性能を重んじるようだ。

モモンガに与えられた二つ名はシンプルに”ザ・サムライ”南方で剣士を表す言葉であり刀に志を託す者をあらわす言葉だとエンリは聞いていた。

 

”グ”はかつてトブの大森林に住まう”東の巨人”と呼ばれた巨大なウォートロールであり、今から1年ほど前にたまたま調査で縄張りに入ったエンリと彼女率いる19人のゴブリン軍団にケンカを売った挙句、手下とまとめて”O.HA.NA.SHI”され恭順を誓う。

以後はカルネ村在住であり、ブレインと同じく日々腕を磨いているようだ。

かつては再生力の高さと頭の悪さに定評があったグではあるが、模擬戦形式でエンリと同格かそれ以上の実力を持つブレインとゼロに一騎打ちで叩きのめされ、空中に浮かんだデイバーノックにアウトレンジから死なない程度にファイヤーボールで炙られアシッドジャベリンで溶かされ(注:炎と酸によるダメージは自慢の再生力も仕事を放棄するらしい)、エンリの治癒術で癒された途端にキーノに実力判定と称し近接戦の縛りプレイなのにて手も足も出ないままボコボコにされ、トドメにモモンガの”()()()絶望のオーラII”を喰らい泡を吹いて失神するという経験を経て謙虚さを覚え、頭の出来は大きな改善をみせているらしい。

その一例として最近は武技を覚え始め、いつかはモモンガより聞かされた帝国の闘技場で無敗を誇る同族の強者、”武王ゴ・ギン”に挑んでみたいと考えているようだ。

 

 

 

現状、ブレインは前に少し語ったように商隊、村にあるバレアレ商店からポーションを大量一括買い付けした商隊の護衛で数名を率いてカルネ村を離れていて、グはトブの大森林に奥にあるひょうたん湖に魚を買い付けに向かった村人の護衛に手下のトロール共々ついていっており、少なくとも今日は帰ることはないだろう。

 

 

 

エンリは考える。

現状、手元にある戦力は自分を含めて難度100越えの強者が三人、ネムと一緒についていったライダー(キュウメイ、チョウスケ。チョウスケは伝令を終えると返す刀でネムと合流すべく戻ったようだ)を除く直轄のゴブリンが17人。一般兵扱い、それでも並みの王国兵を遥かに上回る難度と練度を誇る村民が100名強。

 

(ハムスケさんとネムなら心配ないだろうし……)

 

頭に思い浮かぶのは、モモンガが村に居つくと程なく連れてきた元”森の賢王”で今は聖獣扱いの巨大ハムスターと幼いながらもやんちゃでバーサークな妹だ。

ただでさえ村でも自分達に並ぶ強者枠の一人と一匹がセット、文字通りの人馬一体で動いてるのならなんの問題もない。

正直、その状態で倒すなら村の強者二人以上でかかるかキーノを連れてくるしかない。モモンガなら楽勝だろうが。

 

加えてネムもハムスケも戦場の”機”を見るのが抜群に上手い。今は見つからないように距離を置き”帝国の鎧を着た謎の騎兵隊”を追尾しているようだが、迎撃側(こちら)が下手を打てば直ちに遊撃として突っ込んでくるだろう。

 

(冷静に考えればネムに手を焼かせる必要もない相手か……)

 

報告では騎兵の数はせいぜい30騎程度……よほどの精鋭でなければ大きな脅威ではない。

こちらが手をこまねく程度の猛者なら、ネムは必ず報告に一言加えてるはずだ。

普段は愛らしいがいざ戦いとなれば勇猛を通り越して蛮勇でさえあるあの妹は、自分よりも敵の強さを見抜くことに長けているのだから。

 

「よしっ!」

 

エンリは考えをまとめると作戦プランを話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
グ、受難(笑
果たしてエンリにどんな”O.HA.NA.SHI”されたんだろうか?

どうやらリザードマン達とは良好な関係を築いてるみたいです。



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