穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック

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今回は、49話の伏線回収かもしんないっす(^^

そしてブレインさん、けっこうイメチェンです。




第51話:”傾いて候”

 

 

 

ブレイン・アングラウス

いざ竜王国に赴けばビーストマンすら切り刻む、カルネ村の七星剣の一太刀。

 

ただ、その容姿は原作と比べるならかなり印象が違う。小奇麗になってるし小ざっぱりしてるし、何より結構派手だ。

 

髭はきれいに剃られ、原作より長く伸ばされた青みがかったクセのある髪は後で組紐で結わえられていた。

また下半身は動きやすそうなレザーパンツとロングブーツの組み合わせだが、膝やつま先/踵など”武器として使える部位”には希少金属のゴツい補強具(プロテクター)が装着されている。

 

そして一番のイメチェンを演出してるのは上半身の装いかもしれない。

着込むのはチェインシャツではなく、ミスリル糸が守護のルーンを刺繍する、どこか金襴緞子(きんらんどんす)にも見える地に魔化された多くのレアメタル・プレートが裏打ちされた”袖なし装甲服(ブリガンダイン)”。

そしてその上に重ねるのは、黒と黄で描かれる縞模様が見事な虎革の陣羽織だ。

 

手の動きを妨げないような蛇腹構造の燻し銀の篭手には魔法をプールできそうな宝玉が埋め込まれ、ペンダントも三種の効果が異なるヘッドをまとめて装着する”トリンケッツ”というタイプになっている。

指輪はおそらく種類が変わり、間違いなく疲労無効化はつけているだろう。

 

そして何より印象深いのは刃渡り三尺三寸、エイ革巻き一尺五寸長束の大業物……抜けば艶かしく輝く黒曜片刃の刀身を鋼造りの朱塗りの鞘に収めた愛刀”神刀・滅却”である。

 

 

 

スカウトする前にブレインが所持していた、南方から流れてきたとされる刀”神刀”を文字通りの叩き台に、クラフトマン技能を持ちこの100年で数々の現地アイテムの改造を行ってきた(趣味に走ってきた)モモンガとドワーフが、希少金属とデータクリスタルをつぎ込んで打ち直し、鍛え直したのがこの”神刀・滅却”だった。

無論、ネーミングはモモンガで、

 

『神刀と言えば滅却しかないだろ?』

 

とのこと。

もしかしたら”()()()()()()()()”は、遠い未来でも浪漫桜をリバイバルさせたのかもしれない。

もっともその作品に登場したほぼ同名の刀は、黒作大刀に似た片刃直刀であり、刀としての形状は全く違うが。

 

他にも室内などの狭所戦闘用に、切っ先が両刃となり刺突に効果を発揮する小烏造(鋒両刃造)の小太刀(名称不明)も右腰に差していた。

大太刀は刃を上に向けた左腰に刀差、小太刀は右腰に刃を下に向ける太刀差……刀と脇差の二本差のセオリーをあえて無視しているということは、どちらも右手の使用が前提で”神刀・滅却”は順手での居合、小太刀は逆手抜刀を意識しているのか?

 

 

 

それにしても……組紐で縛った長髪に金襴緞子の胴纏と虎革の陣羽織、腰には朱塗りの鞘に収められた堂々たる大業物……侍というより、むしろそのスタイルは”傾奇者(かぶきもの)”に近い。

それでなければロックスターだ。

 

そしてブレインは長束に添えるように手を置きながら腰を落とし、

 

「《能力向上》《能力超向上》」

 

そして必要な脱力を行い、居合いの構えから……

 

「奥義《草薙》!!」

 

”シュバッン!!”

 

鞘走りから十分な加速を乗せた刀身で、名通りに水平に広がりながら草むらを薙ぎ払う真空の音速刃(ソニックブレード)を解き放つ!!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「なんとっ!?」

 

だが恐るべきは、超音速で迫る不可視の風刃を、僅かな気圧の変化と第六感ともいえるまで研ぎ澄ませた危機察知能力を発揮した少女(?)……漆黒聖典第九席次”疾風走破”ことクレマンティーヌ・メルヴィン・クインティアだ。

 

本能的に敵が斬撃を飛ばしてくるタイプの武技を使ったこと、そして横に逃げても避けきれないことを悟ったクレマンティーヌは、頭に二つの選択肢を浮かべた。

つまり跳躍で飛び避けるか、這い蹲って頭上を通過させるかだ。

 

(跳ねるのは論外……)

 

こと殺し合いにおいて、クレマンティーヌの異常性が顔を出し、脳味噌に氷柱(ツララ)を直接ぶち込まれたような底冷えする感覚が全身を支配する。

彼女は、その感覚に身を任せ、

 

(伏臥の姿勢から四肢と全身のバネを使って一気に加速、間合いを詰め屠る)

 

ソニックブレードの飛んでくる方向から、目で確認しなくとも敵の位置は大体わかる。

ならば取るべき方策は一つ。

 

(斃して活路を得る……!)

 

相手はおそらく剣士、使った技は《空斬》を徹底的に強化拡大した物だ。

 

(なら放った後に必ず隙ができるっ!!)

 

「《<不落要塞>》《流水加速》《疾風走破》《超回避》《能力向上》《能力超向上》」

 

だからこそ両手で魔法を仕込んだスティレットを抜き放ち、その刺突に全てを賭けるっ!!

 

()るっ……!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

真空の刃が頭上を駆け抜ける感覚を合図にネコ科の肉食獣が獲物に襲い掛かる姿を髣髴させるような超低姿勢からの凄まじいダッシュ!

並みの人間、いや相応の剣士でも反応する前に眉間を貫かれるような早く鋭い一撃……勝ち目は十分あるはずだった。

派手な格好の剣士は、鞘から右手で剣を抜き放った形。

 

(あの姿勢からなら、刃を返される前に懐に飛び込める)

 

スティレットの間合いは短い。

だが、懐にさえ入ってしまえは相手の獲物では、逆にその長さが仇となり自分は斬れない。

右腰にも予備のショートソード(?)を差しているが、位置的に空いた左手で抜くのは困難だろう。

 

クレマンティーヌは勝利を確信する。

タイミングは完璧、カウンターとして十分。

 

敵……標的……伊達男は、振りぬいて切っ先が斜め上を向く大太刀の握りを咄嗟に片手から両手に持ち替えるが、もう遅い!

刃が返され自分を向くが、今更何をやろうが手遅れ! 自分の勝利は揺るがない……筈だった。

 

 

 

「秘剣《鳶斬(とんびき)り》!!」

 

その時、クレマンティーヌの瞳に映ったのは、視界全てを埋める”()()()()()”だった……

 

 

 

刹那、舞い散る真っ赤な血の花弁……

 

「お兄ちゃん……ごめ……ん……」

 

薄れ行く意識の中、クレマンティーヌは最後にそう呟いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

久しぶりのバトル・シーンはいかがだったでしょうか?
達人同士の殺し合い、その緊張感が少しでも表現できてれば嬉しいっす(^^
バトルは難しいなぁ~。

秘剣”鳶斬(とんびき)り”ですが、詳細は次話以降に譲るとして……基本的に原作の秘剣”爪切り”に準じた技って思っていただければと。
名前の元ネタは”蜻蛉切”+「爪切り」っぽい名前+”燕返し”との鳥繋がりで、「空飛ぶ鳶も斬り落とす技」って意味なんですが、変更の可能性もあったり(^^

というか現時点で使えてしまうのがこのシリーズのブレインで、原作に例えると「書籍版の爪切り完成以降の技量とWeb版の吸血鬼の身体能力を兼ね備えた」って感じなんですよ。
おまけにダークウォリアーからも武技を盗みまくっているので、原作では使えないはずの《能力超向上》とかも使えたりします。



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