GATE 彼の地にて斯く格闘えり   作:秋みちのく

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第3話

 

 

 方や、本黄薔薇騎士団長ボーゼス。

 

 方や、格闘徽章持ちの自衛官栗林。

 

 ふたりの因縁については外伝の2を参照していただくとして、二人の間に挟まれた富田である。

”困った事になった”という思いと、”やっぱりこうなったか” が半々で諦めていたようだ。「 皆

からは離れてやってもらおう。危険だし、そうゆう集まりじゃないし 」と倉田。他の皆さんは自

分が見ます、と富田に任せた。何やら不穏な空気と妙な期待感が辺りに漂う。「 煽りVとかあっ

たら、客が呼べる試合なんじゃね? 」と伊丹は無責任に呟いた。”折角だし、健全に遺恨精算する

のは悪くないわ” とロウリィ。”溜め込むよりは発散させるがよかろう” とヤオ。他も概ね賛成

の様子。”人の喧嘩は面白い” と顔に書いてある皆は野次馬を決め込む構えを見せる。

 

 では両者中央に、と富田が促し、”コンバッチ! ” と手が触れるや否や。

 

 ボーゼス突進! 受け止める栗林。お互いの右手で相手の左脇を指し、右四つに組む形になる。

両者胸を付け力づくで押し合う。体格差でボーゼス優勢、しかし辛くもフィジカルでほぼ互角に押

し返す。だが栗林このままではジリ貧、場外に押し出されるのは時間の問題に見える。”寄り切り”

 はルールに無いので中央に戻ってリスタートになる。だが、未経験者のボーゼスにタダで寄り切

られたとあっては、積み上げた経験と技術が謗りを受ける。何が何でも挽回せねばならない。栗林

、今一度全力で押し返す。させじ、とばかりに上から押しつぶさんと押し返すボーゼス。意識が逸

れた、と見た栗林、右手を刺したボーゼスの左脇をこじ開ける。僅かに開いた脇に頭をねじ込み、

脇腹に密着、腰に腕を回しクラッチ。直感で ”ヤバイ” と感じたボーゼス、足幅を広げ腰を落と

す。一度”サイドスープレックス” を試みるも、ボーゼスさらに腰を落として踏ん張る。栗林、右

足を放り出し、後転気味に尻餅を付く様に座る”捨て身投げ” ボーゼスからテイクダウンを奪う。

半身で倒れたボーゼスの足を捌いて押さえ込みを狙う栗林、エビで逃げるボーゼス。間合いを離し

て立とうとするが、栗林は足を掴んで離さない。引っ張り上げ、背中を付けさせ押さえ込みにかか

る。「 足で相手を押さえてガード! 」とボーゼスにアドバイスが飛ぶ。勘所、というか、理解

した様子でオープンガードの形になる。立ち上がった栗林の膝に足を当て、牽制する形。

 

 暫しの静寂。

 

 ” ニィ...! ”と微かに口元を歪めた。栗林が動いた。掴んだボーゼスの足首を、脇に抱え込み

ながら滑り込む! 「 足関節!ズルい! 」”アキレス腱固め”足首に巻きつけた腕を絞り上げ、

胸をそらす。ボーゼス、予想外の動きに一瞬躊躇を見せたが、とにかく動いて脱出を試みる。だが

しかし。振りほどく事もならず、遠ざかることも叶わず、横転するも緩むこともない。未体験の部

位に未体験の激痛。悲鳴こそ上げなかったが、悲痛に顔歪めたボーゼスを確認した富田は「 パロ

ゥ! 」と終了を宣言した。

 

 ボーゼスに駆け寄る富田。「 怪我はないか? 」うなだれて首を横に振るボーゼス。「 負け

は認めますが、降参はしてませんわよ 」わかった、わかった、怪我かなければいいんだ、と富田

。審判の役目の一番大事なことは、選手を無事に帰すことだから。

 

「 足関節はちょっと厳しいですよ二尉 」

 

 倉田が少し困った顔で栗林に声をかけた。

 

「 あたしもちょっと考えたんだけど、結局何やっても”知らない技”仕掛ける事にはなっちゃうじ

ゃない?どっちにしろフェアじゃないからしょうがない、と思って...... 」 

 

 栗林にもそんな神経あったんだ、と伊丹は思ったが口には出さなかった。ただこのままじゃ良く

ない、とも思ったので目配せする。理解したようで栗林はボーゼスに声を掛けに行った。

 

「 えっと、その、ろくに技も知らないのに、本気でかかってきた根性は褒めてあげるわ。マジで

。あなたはきっと強くなるから、なんでも聞いて。教えてあげる 」

 

 褒めてるのか?慰めてるのか?伊丹がポカーンとしていると”激励してるのよ、彼女なりに”とロ

ウリィ。そうなのか。ボーゼスさんは嬉しいのか?格闘者なら分かり合えるのか?ジャ●プ的な友

情が芽生えたりしてるのか?そうこう言ってるうちに栗林が差し出した手を掴んでボーゼスは立ち

上がり、二人は拳を合わせた。ちょっとでも”雨降って地固まる”になってくれればいいんだけど、

と伊丹は呟いた。

 

 「 ちょっと手伝って欲しい 」

 

 レレイが伊丹に声をかけた。気が付けば皆は組になって習った技のおさらいをしていた。やり方

、手順は合っているか。ちゃんと技が掛からないのはなぜか。逆にこれら技から逃げるにはどうす

ればいいのか。さすがに伊丹には答えられなかったので倉田らを呼び止めて教えを請う。技は膨大

にあり、その数以上に逃げ方もある。その膨大な情報量にレレイは興味を示したらしい。問われる

ままに倉田はレレイに教えていたが、技の繋がりにキリがないのを思い出しレレイに諭した。とり

あえず今日やった事を使ってみるに留めてみてはどうかと薦めた。コクリと頷くレレイ。「 もし

スパーするなら膝立ちの状態からやってください 」と告げ、倉田は他を見に行った。

 

 伊丹はふと顔を上げ、首を巡らせたコダ村の少年二人組が目に入った。楽しくじゃれあっている

。考えてみれば特地の家屋には座敷などはないから、寝転がって取っ組み合うという日本の田舎子

供の遊びは無いかもしれない。楽しんでくれてよかった。更に巡らす。ペルシアがいた。

 

 と目が止まった。

 

 軽く腰が上がった。

 

 目が離せなくなった。

 

 そして萌えた。

 

 ペルシアはキャットピープルだ。外見的特徴も猫のそれなら、動きも無論そう。

 栗林を相手にクローズドガード、相手の鼠径部を蹴りスピンする。起き上がりながら相手の腕に

自分の腕を絡めるようにしてダブルリストロックを取る。この動きが。”猫レスリング”の動きで行

われているのだ!気になった諸兄は是非検索して欲しい。エンジ色のジャージに包まれているもの

の、正しく猫が猫レスリングを!目の前で!モフりたい!想定外のお宝出現に、流石の伊丹も気分

が高揚してきた。「 あんまり人集めない方がいいかも 」猫カフェみたいに盛り上がられても、

なんだかなあと一人で困ったり喜んだりしていた。

 

 そして問題児だ。モーイ・エム・スワンリィ。エムロイ神殿の神官見習い。武芸は懸命に精進す

るものの、結果がついてこない。端的に言って弱い。かと言って放っても置けない。この世界で人

を救う事を生業とするならば、理不尽な暴力に暴力で対抗することも時には必要だから” 切り口

を変えてみたら、ちょっと違ってくるかも ”と、軽い気持ちでロウリィは彼を連れてきた。彼女

は戦うことに飽きたり悩んだり、絶望することはないがクラタの言う” 面白い ”は自分が戦いに

感じているものとは違うのだろうという興味もあった。ロウリィに誘われて、モーイに否はない。

「 聖下が”面白そう”とおっしゃるなら、喜んでお供させて頂きますぅ 」と屈託ない笑顔で付い

てきた。ここでもモーイは懸命に練習する。ほんわかした感じは相変わらずだが。「 違う! 聖

下手ずから教えて頂きながら何だその様は! 」「ああもう、なぜできない!さっきやったでしょ

う!」応援、激励、を越え最早罵声。「 すみませんですぅ 」謝ってはいるが、柳に風といった

風。でも練習は真面目。練習したことはできるようにはなる。「 なんとか形にはなったようだけ

どぉ 」実践して経験が欲しい、とロウリィ。周りを見渡してレレイに目を付ける。テュカと二人

で打ち込み、からのスパーもどきで研究中。時折テュカがふざけてじゃれついている。好意を持つ

相手に対して積極的なスキンシップを求める傾向にある彼女だが、この遊びはちょうどいい機会な

のだろう。年齢はレレイよりも上だが、精神は子供っぽいところを見せる。

 

「 レレイ、モーイの相手をお願いできるかしらぁ? 」

 

 まとわり付くテュカをボトリと落とし、「 問題ない 」と答えた。彼女もまた得た知識の実践

を求めていたらしい。大丈夫かね、と伊丹も寄って来る。「 今度はお父さん相手して! 」とテ

ュカが伊丹にじゃれつく。「 レレイさんには負けません! 」とモーイ。あまり根拠はなさそうだ

が。

 

「 まあ、大丈夫、でしょう 」

 

 と呟いた伊丹だが、一抹の不安を感じるがゆえであった。

 

 




 次こそレレイを書きます。
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