ソードアート・オンライン ~紫紺の黒猫~ 作:☆さくらもち♪
釘宮の屋敷へと到着した三人。
だが、木綿季は出ようとするも動けない状況下にあった。
「あ、あの」
「はい?どうかなさいましたか?木綿季お嬢様」
「雪が、その・・・」
木綿季が戸惑う中、雪は木綿季の膝を枕にして寝てしまっていた。
「雪様が我ら以外に、そのようなお姿をお見せになるとは・・・」
「え、えっと・・・」
「差し支えなければ、木綿季お嬢様が雪様を抱いて頂けませんか?」
「は、はいっ」
寝ている雪を起こさぬよう、木綿季はゆっくりと抱き上げる。
雪の年齢では考えれないほどに軽く、木綿季でもそこまで重くないと感じれた。
「んしょ・・・」
「んぅ・・・」
椿が木綿季を案内しつつ、部屋割などを説明する。
「それと木綿季お嬢様。雪様とご一緒がよろしいでしょうか?」
「一緒というと・・・部屋ですか?」
「はい」
「えぇっと・・・」
木綿季としては一緒が良いものの、これほどまでに巨大な屋敷に住んでいることからも雪は一般人ではないと分かってしまった。
そういう人は婚約もしていない男女が共を一緒にはしないと聞いたことがあったのだ。
「我らとしては雪様の特別な人と聞きましたので。今までそのようなお相手は聞いたこともお選びになったこともございませんでしたから」
「そうなんですか・・・」
「嬉しいのですよ?雪様がお選びになった木綿季お嬢様は唯一の存在ですから。雪様の中ではご結婚まで視野に入れているかと」
「け、けけ・・・結婚・・・」
そこまで考えていたと思わなかった木綿季は、その言葉に顔を赤くすると同時に、そんなに想ってくれているのだと感激する。
「釘宮家の現当主である雪様には、跡継ぎが今ございません。そのため養子という形になるかと思っておりましたが・・・」
「・・・雪は・・・」
「現当主である雪様がもし、
ふふっと椿は笑うと部屋に到着し、木綿季達を中へと案内すると立ち去った。
部屋で二人きりにされた木綿季は、頭の中で聞いた内容を思い返していた。
「・・・ボクが・・・」
木綿季と雪が関わるきっかけとも言えたのは、SAOで偶然にも雪の姿を見つけて追い掛けたことだった。
それから関わりを持つようになり、たった少しの時間だけで雪に懐かれてしまっていた。
「んむ・・・ぅ・・・?」
「ぁ・・・雪?」
「ん・・・にゃぁ・・・」
見知らぬ相手には威嚇という名の警戒を。
信じるに値する相手には甘える姿を。
まるで猫みたいだな、と木綿季は思った。
「えへへ・・・可愛い・・・」
「んぅ?」
寝ぼけている雪は木綿季だと分かると頭をお腹へスリスリとする。
くすぐったい感覚を覚えながら木綿季はその頭を優しく撫でていた。
「ねえ、雪」
「ん・・・?」
「ボクね。雪の事、大好きだよ」
素直に雪へ告げるとポッと頬が朱く染まっていた。
「ぅ・・・」
「照れてるの?可愛いね、雪」
「む・・・」
だがずっとやられっぱなしの雪ではない。
木綿季の耳元でふぅっと息をつく。
「ひにゃっ」
パクッと木綿季の耳を甘噛みしながらも、ぼそっと呟いた。
「僕も、木綿季の事、大好き」
色っぽい声で木綿季に言うとそれ以上は木綿季が耐えれなくなったのか、顔を真っ赤にしながら隠していた。
「大好き。愛してるよ」
「ふにゃぁぁぁぁぁ・・・あぅぅぅ・・・」
ぷしゅーっと蒸気が出てるのではと思えるほど木綿季の頭は沸騰しており、追撃するように雪は耳元で愛情表現の言葉ばかり囁く。
釘宮の当主である雪。
その唯一の存在になれた相手は、それはそれはドロドロに甘やかされる。
そして釘宮雪の代で、釘宮家は社会から手を引いた。
木綿季と同等の相手になるためだけに、社会的地位を捨てて庶民へと成り下がった。
だが釘宮の築いた富は雪の物となった。
それには出来るかぎり手を付けていない。
これは一匹狼だった黒猫が天真爛漫な少女に惹かれた話。
生涯、黒猫は少女にのみ目を向けた。
少女以外の女性など興味がないと告げるほどに。
結婚式を挙げて、新婚の時期が過ぎようとも知る人は言った。
ずっと、二人は幸せそうだと。
万年新婚夫婦だと関係者達は言う。
「木綿季。大好き」
「ボクも!雪の事だーいすきだからねっ!」
以後、彼らは普通の家庭を築いた。
時折、釘宮の屋敷では仲の良い夫婦と4人の子供の姿が見える時があるのだという。