ソードアート・オンライン ~紫紺の黒猫~ 作:☆さくらもち♪
第五十層アルゲード。
商店が集い、SAO内でも屈指の商売層になりつつある階層にて人目を引く人物がいた。
SAO攻略組の筆頭格。
異名持ちプレイヤー二人が入った商店は顔見知りの場所だった。
「こんにちは、エギルさん」
「こんにちは!」
「おぉ、アスナにユウキじゃねえか。今日はどうしたんだ?」
店の奥から出てきたのは180cmほどある背丈に黒い肌という特徴が印象強い。
この五十層アルゲードに店舗を構え、商売人と攻略組の二つの顔を持つ人物だ。
「今日ここで待ち合わせなのよ。アルゴさんとね」
「なるほどな。だが、俺の店を待ち合わせにするのは止めてくれ」
「ほら言われちゃったよ?アスナ」
この異名持ち美少女二人と気兼ねなく会話できるのも元々パーティーを組んでいた事や共通の知り合い等もあり、同じ攻略メンバーからというのもあった。
何気ない雑談をしていると来客を知らせる鈴がカランコロンと心地好く鳴り響く。
「らっしゃい」
「ん・・・」
入ってきたのは、怪しげにもローブを着込んで姿が殆ど見えないプレイヤー。
顔を覗こうにも身長が160cmもない為に、見下ろす形になる為に、エギルやアスナ、ユウキは分からなかった。
「買い取り、出来る?」
「あぁ・・・買い取りか。物によるが・・・」
どこか危険を感じる。
そんな第六感的な物が働く三人は警戒を解けなかった。
そんなことも露知らず、ローブのプレイヤーはストレージから一つのアイテムをエギルの前に置く。
「こ、これって・・・」
「お、おいおい・・・こりゃあ・・・」
「ね、ねぇ!君!」
「・・・なに?」
アスナやエギルが驚く中、ユウキは先程のアイテムを取り出したプレイヤーへと駆け寄る。
「そのアイテム、ボクに売ってくれないかな!?」
「・・・良い、けど」
元々売りに来た立場の為、相場通りに売却出来そうなら誰でも良かった。
「相場、通りに」
だが、その値段が一番厳しい物となる。
ユウキへと提示された要求金額は攻略組として活動しているユウキですら支払えるギリギリの額だったのだから。
「う・・・ま、まけてくれないかな・・・?」
「・・・じゃあ、無理」
取り付く島もない、と判断するとユウキは提示された金額を支払った。
その額は【1,850,000コル】という馬鹿げた金額だった。
「ん・・・」
「ありがとう!助かったよー!」
「別に・・・」
プレイヤーは用件が済んだ為、店を立ち去ろうとする。
「なあ」
「・・・なに」
それを店主であるエギルが止めた。
その理由が分からず、プレイヤーは思考するが。
「さっきの。ありゃあ上級者ですらお目にかかれない一級品だ。それをどうやって手に入れたんだ?」
「・・・」
「別に怪しいとは思っちゃいない。個人的な興味だ」
「・・・普通に、取っただけ」
プレイヤーはそう言うと店を出て行った。
返答を聞いたエギルは「そうか」と呟くと商人の顔付きへと戻った。
先程、商人プレイヤーの商店でアイテムを売ったプレイヤーは後を付けられていないか確認をすると、少し休憩を取った。
「は、ふ・・・」
あんな人物が異名持ちになるんだなと考えながら、さっき売ったアイテムを思い出していた。
先程売ったのは超低確率ドロップの鉱石系アイテムで、相応の技術がある鍛冶屋に渡すと一級品の片手剣や細剣が作れる物だった。
それ以外の武器は製作すら出来ないが。
「武器の、交換、か」
大金をはたいてまで買ったのは武器の新調だろうと考える。
それぐらいにしかあの鉱石は使えない。
資産としても、アイテムとしても無駄だし、邪魔だ。
「おーっす、ユキ坊」
「ん・・・」
考えていれば、隣には顔見知りの相手がいた。
「ユーちゃんやアーちゃんに会ったみたいだナ。どうだっタ?」
「・・・特に」
「そうカー・・・」
「何か、用?」
ユキの口調こそ冷たいものだが、その言葉に隠された本質を見れば何も思っていない事がわかる。
しっかりと感情が入っているが、それを上書きするように隠してしまうのがユキの癖でもあった。
「タイタンズハンド、知ってるカ?」
「・・・一応、は」
タイタンズハンド。
ユキが調べ尽くしているもので、その手でなければ知ることもないオレンジギルド。
SAO内では殺人は立派は犯罪で、殺人を犯すとプレイヤーのカーソルカラーがグリーンからレッドへと変わる。
だが、犯罪と言っても重度から軽度とあり、オレンジは軽度~中度といった犯罪レベルの指標。
「このギルドの被害がそこそこあってナ。ユキ坊ならどうするのかと思ったんダ」
ユキは覚えているかぎり、知るかぎりの情報を記憶から引き出す。
常人とは掛け離れたユキの思考能力は人外とも言える恐ろしさ。
それを利用して今タイタンズハンドによる被害を思い出す。
「・・・中層プレイヤー。あのギルドは、中層活動だから。それを考えて、中層の・・・《竜使い》辺り」
今までの被害や、標的の傾向を搾り、思考の果てに出てくる答。
それを伝えた。
「・・・さすがだナ。その頭、オレっちにも欲しいぐらいダ」
「・・・で、なんでそれを」
ユキは聞きたかったのを聞き出す。
何故その話題を自分にしたのかを。
「ユキ坊にも協力してもらえないかなーというオレっちの行動だヨ」
「・・・そう」
もう聞くことはないとばかりにユキは立ち上がるとその場から立ち去る。
「はぁ・・・」
面倒、とばかりに出てくるため息。
しかしオレンジギルドに伸びていく手は何色だったのだろう。