ソードアート・オンライン ~紫紺の黒猫~ 作:☆さくらもち♪
スタスタと急ぎ足で街を移動していくプレイヤー。
それはローブにより姿が見えず、人物の特定には至らない。
「転移、第四十七層」
転移結晶により、プレイヤーは姿を消す。
一瞬にして景色が変わると美しい花が咲き誇る階層。
第四十七層の主街区フローリアは、SAO内で順位を争うデートスポットの一つ。
「・・・いい、な」
男女のカップルが楽しそうにしているのを見て羨ましく思えてしまう。
「・・・行こう」
だが、それを見続けていると自分自身が虚しく感じる。
それが嫌だったのか、すぐさま行動に移した。
ローブが着用状態だと移動面に不便があるが、それでも姿を見られたくない為に外せなかった。
「プネウマの、花・・・だから」
該当するのは最北東端。
そこにプネウマの花というアイテムが手に入る。
ビーストテイマーであれば誰もが羨み、欲しいといえる従魔蘇生アイテムだった。
「ふっ・・・」
スキルによる常時ステータス補正、装備補正、元のステータス。
それらが全て見事なまでに噛み合わさり、異常速度で駆けていく。
視界に移る景色がどんどん変わっていく。
それでいて、攻略組筆頭レベルでなければ見抜けない《隠蔽》。
「わわ・・・」
あっという間にプネウマの花がある北東へ辿り着くと、何名かのプレイヤー反応があった。
「・・・ん」
記憶から該当プレイヤーを検索し、対象と照らし合わせる。
「・・・ふふっ。大当たり」
妖しく笑ったそれは、見れば人を惑わせるだろう。
姿が見えなくともその人物から醸し出される雰囲気やオーラはごまかせない。
「早く、早く」
もう待てない。
それが思考に浮かび上がる。
オレンジギルドが先に行動したようで、その行動を件のプレイヤー達が警戒する。
「・・・少しぐらい、良いよね」
腰にずっと付けて、最近ではあまり振るってあげれなかった自身の愛刀を。
ただ自分が現実世界でも同じようにした感じで振るった。
「ひっ!?」
「誰だ!」
向こうのプレイヤーには気づかれていなかった。
ただ、向こうのオレンジプレイヤーは全員両手を斬り飛ばされている。
「あははっ」
子供がおもちゃで遊ぶように、ゲーム内であろうと大人の手を簡単に斬る。
それがどれほどまで異常なのか。
「・・・動いた」
それに合わせてすぐさま行動をした。
相手はSAO内唯一のレッドギルド。
棺桶が笑うというのなら。
自分自身がその棺桶ごと破壊し尽くす。
気付かれないよう、相手に張り巡らせたワイヤー。
それをクイッと引けば。
「うわっ!?」
「これ、は」
「・・・ッチ」
笑う棺桶主要メンバー3人。
危険プレイヤーにあがり、捕まえることが不可能に近かった人物がいとも簡単に捕まり、日に晒されていた。
「・・・つまら、ない」
そう呟くと。
一人のプレイヤーの胸から刀が突き出る。
「なっ・・・!?」
相手にそれを悟らせないよう。
そして、すぐにHPが無くなったのか、ポリゴン片となり砕け散る。
「誰だ」
「《黒の剣士》、《絶剣》、《閃光》・・・異名持ち3人」
自身の戦闘力を総合的に分析。
相手との技量や思考能力を分析。
勝てる勝率を導き、出されるのは必敗。
「手、出さない、でね」
それは警告。
出せば容赦しないという優しさを。
そして早くのんびりしたいという怠惰さも出てきていたが。
「レッドギルド、こんなもの?」
「くっ・・・」
「まさかだなぁ・・・」
「つまら、ない、ね」
刀を振り、適当な切り傷を。
だがあまりの攻撃力だからか、少しだけの傷ですら大幅にHPが削れていた。
「・・・ここで会うとは思わなかったぜぇ?《黒猫》」
「・・・そ」
《黒猫》と呼ばれたプレイヤーは、ただそれを聞いて呟くだけ。
自分自身の異名など興味がなく、それに対する誇りもない。
ただありとあらゆる手段を用いてSAO内にて被害があるオレンジを潰している一個人のプレイヤーにすぎないのだからと。
「《黒猫》だとっ・・・!?」
「あの・・・キリトさん。黒猫って・・・?」
「シリカちゃん。黒猫は・・・プレイヤーキラーキラーっていってね。オレンジやレッドを潰しているプレイヤーよ」
「・・・ぇ・・・?」
驚愕、怯え。
恐慌にもなりうる《黒猫》というプレイヤー。
オレンジプレイヤーやレッドプレイヤーを容易に潰せることから、攻略組からすると最も危険なプレイヤーに上がっていた。
笑う棺桶というレッドギルドをも今キリトやシリカの前で幹部クラスを殺している事からも、それが実証されている。
「・・・疲れた。早く、死んで?」
抑揚を感じさせない声で言うと刀が振られる。
だが、振り下ろす前にただ一言。
「
そう呟かれた言葉を聞き取れたのは誰だろう。
あまりにも小さな声故に殺される目前のレッドプレイヤーしか分からないだろう。
あっさりと刀が振られ、アバター体が両断されると興味がなくなったように立ち去ろうとする。
「おい」
「・・・なに」
「あんた・・・何者だ?」
「・・・どうでも、いい」
心底どうでもいい、と答えると黒猫はどこかへ立ち去って行った。
「・・・アスナ、ユウキ、シリカ。戻ろう」
キリトの声に全員が頷く。
今日の起きた出来事は、無駄には出来ない。
危険プレイヤー《黒猫》との接触がほんのわずかだろうと危険性がどれほどか分かったために。
それを攻略組全員に通達しないければと動くのだった。