ソードアート・オンライン ~紫紺の黒猫~   作:☆さくらもち♪

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自分という存在

何気ない日常を謳歌するため。

ユキはのんびりと街を歩いていた。

姿を隠すためにローブは着ているが。

 

「ん・・・」

 

人目が自身に過度に集中しなければ、そこまで人に対する気持ちも薄れていた。

ほとんど他人に対する興味がなくなってきているからだろう。

人を殺す事になんの感情も抱かない。

そもそも他人に抱く感情がなければ、その行為に対する悪感情もない。

 

「・・・誰、か・・・来てる・・・?」

 

だが、ユキの中で最も強く感知する感情。

敵意、悪意、殺意、嫉妬・・・。

人間が持つ感情でどろどろとしたものは何故か分かってしまう。

 

「・・・面倒」

 

天才的な頭脳。

悪魔的思考能力。

人間でありながら、人間らしくない自分。

そんな存在だからこそ誰もが自分じゃなく、その能力だけを求める。

故に人間らしさを捨て、機械的にも成り果てかける。

そんな自分自身が脳内に掠める。

そこにユキ本来の意志はなく。

ただ人形として扱われる。

 

「・・・誰」

 

自分の跡をつけているプレイヤーを誘導し、一瞬で愛刀を首元にそえる。

 

「っ・・・」

 

相手もローブを着ていて姿が見えなかったが、チラチラと見ながら歩き方や、仕草などを全て覚えていた。

今ここでユキが見逃して圏内から出た瞬間暗殺も可能となっていた。

 

「・・・ごめんよ」

 

ユキから発された殺気の中、からがらに出した言葉は跡をつけたことへの謝罪だった。

その言葉に含まれた反省や、武器を首に当てられている事からの不安、恐怖が取り巻く。

 

「・・・そ」

 

当てていても何も変わらないと判断すると、刀を鞘へ納める。

現実離れした抜刀の無駄の無い動きは興味深く感じるだろう。

だがそれはユキの現実でのたゆまぬ努力や、生まれ持った才能やセンスによる補正が大きい。

 

「ごめんよ。君だっていう確証がない状態で後を付けていたから・・・」

 

「別に。どうでもいい」

 

面倒だから早く用件を言え。

そんな雰囲気をずっと出していた。

だが他人だろうと、自分へ何か要求をしたいという人間に今までユキは心底うんざりしている。

まともな者などいないと決め付けてしまう程には。

 

「・・・で?」

 

「あっ・・・う、うん。今時間あるかな・・・?」

 

「・・・時間は」

 

普段から暇を持て余しているが、正直関われば面倒事があると警鐘が鳴り響く。

だがこの退屈な日常を変えてくれるのでは、と一途の希望もあった。

 

「内容、次第」

 

「内容かぁ・・・うーん・・・」

 

面白いというより、興味が出れば。

そんな感じで聞いた。

まさか真剣に悩んでくれるとは思っていなかったみたいだが。

 

「むー・・・」

 

「・・・ふふっ」

 

「どうかした?」

 

「・・・いや、真剣に、悩んでるから・・・」

 

ここまで悩むのかとそんな今でなければもう無理かもしれない相手からすればそうなのだろうが。

ユキにとっては少し面白く感じた。

だからこそ興味も出る。

SAOプレイヤーなんかじゃなく、今ユキの目の前で真剣に悩んでいるプレイヤーに。

 

「もう、いいよ」

 

「あ・・・ご、ごめんね?何も思いつかなくて・・・」

 

「別に・・・」

 

ユキのフレンド一覧には一人だけしか表示がされていない。

SAOの情報屋ではトップクラスであるアルゴ。

 

「・・・名前、何?」

 

「へっ?ボク?」

 

「ん・・・」

 

名前が分からなかったので、聞いた。

一応ユキの記憶から該当するプレイヤーが推測されているが、こういうのは本人の口から聞くのが一番だろうと。

 

「ボクはユウキだよ」

 

「・・・似てる、ね」

 

ユウキと教えられて少しだけ嬉しく思いながらユウキにフレンド申請を送る。

 

「ふ、フレンド?良いの?」

 

「ん、嫌なら・・・良い」

 

「ううん!なる!」

 

すぐさま承諾され、ユキのフレンド一覧に一人増える。

そこにはアルゴ、ユウキと表示されて。

 

「用件、思い出したら。送れば、いい」

 

そう言い残すとユキは足早に立ち去る。

あのまま居れば何すれば良いのか分からなくなっている自分が怖くなった。

 

「ぁ・・・分かった!ありがとう、ユキ!」

 

「・・・ん」

 

ちゃんと自分の名前を呼んでくれる。

ゲームの名前でも、ちゃんと自分自身を見てくれる。

現実世界への帰還が少しずつ遠くなっていた。

帰還すれば、また自分じゃない自分を求められて。

 

「・・・やだ、なぁ・・・」

 

誰でも良いから、ちゃんと自分を求めてほしい。

そんな願望がどんどん膨らんでいった。

 

 

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