ソードアート・オンライン ~紫紺の黒猫~ 作:☆さくらもち♪
SAO内でトップギルドに数えられる一つ、血盟騎士団。
そのギルド内に集められているのはSAO攻略組メンバー。
異名持ちとして名も高い人物も当然ながらその場にいた。
血盟騎士団副団長《閃光》の『アスナ』。
ベータテスターであり、攻略組トップクラスの戦力である《黒の剣士》『キリト』。
仮想空間でありながらも、現実世界のように異次元めいた動きと戦力がある《絶剣》『ユウキ』。
唯一SAO内で公表しているユニークスキル持ちで、血盟騎士団団長《神聖剣》『ヒースクリフ』。
相応足るメンバーが今攻略組筆頭格として集まり、今回の件についての会議が行われていた。
「今回皆さんに集まっていただいたのは、SAOが始まってから問題になりつつあるプレイヤーへの対策及び捕縛・・・となります」
進行をアスナが務めており、開始時から攻略組の問題を取り上げていた。
「異常な程の攻略スピードで、攻略組よりも先に階層を制覇しているプレイヤーが当然ながら存在もします。ですが、それは下層であれば数名ほどで出来た場合もありますが・・・」
「確かにな。先日、攻略組が関与していない状態での階層制覇。これは攻略組の存在意義と共に、それを成し遂げたプレイヤーは俺らよりも強いんだよ」
「はい。その人に攻略組として入ってもらえれば良いのですが、恐らく不可能に近いと思われます」
「ふむ・・・何故かな?アスナ君」
それまで話を聞くだけで、何も言わなかった団長ヒースクリフが興味を示す。
「そのプレイヤーは・・・恐らくですが《黒猫》。数あるオレンジ、レッドプレイヤーを悉くキルしている
PKKは相手よりも実力が上でないと成せない一つ。
当然ながら殺人を犯すためにSAOでは忌み嫌うが、その存在を真っ向から否定も出来なかった。
オレンジやレッドによる被害者は多く、それゆえにPKKを行う《黒猫》は下層・中層のプレイヤーには有り難みなどもあった。
また、支援などもしている為に作戦を考え、実施もしようとすれば下層・中層のプレイヤーの反感も有り得るとの判断になっていた。
「ふむ。その《黒猫》なるプレイヤーが何故捕まらなければならない?その理由を説明できるのかな?」
「それはっ!」
「アスナ君。君が言っているのは攻略組や上層プレイヤーの範囲内だ。だが件のプレイヤーは下層や中層からの信も厚い。そんな人物を捕縛したとなれば攻略組の信用も落ちると思えるが?」
「・・・そう、ですね」
「アスナ。ボクが、やってみるよ」
そんな中、ユウキは意見を言う。
ユウキは以前に偶然ながらも《黒猫》と会話をしてフレンドの交換もしていた。
そのため話をしようと思えばユウキは出来る状況だった。
「ユウキ・・・?でも、どうやって会うの?」
「そ、その・・・以前に見つけて後を付けたんだよ。その時に会話もしてる」
「なっ!?危険じゃないか!」
「そうだけど!現状は何も変わらないでしょ?だから会えないか聞いてみるよ」
ユウキはすぐに会えないかメッセージを飛ばす。
数秒もすれば大丈夫と返ってきていた。
「会えるって。ボク行ってくるよ」
「ダメだ。行くなら俺かアスナも連れて」
「・・・それだと会ってくれないよ」
あれほどまでに人と関わることを避けている人物に無断で自分以外を連れていける気にはユウキになかった。
せっかく得られた興味をここで失ってしまうのか何故か嫌だったのだ。
「とりあえず!ボクもう行くからね!」
ユウキは扉を勢いよく開けるとギルドを出て約束を取り付けた場所へと向かっていった。
「アスナ君。キリト君。今は手を出さないでおこうではないか。彼女が一人でなければと言うのなら」
「・・・そうですね。分かりました」
「くそっ・・・」
《黒猫》対策会議は終えて、一人で件のプレイヤーへと向かっていったユウキをただ心配するだけだった。
ギルド本部を勢いよく出ていった紺色少女。
ユウキは親友であるアスナとキリトに心配されていたのは分かっていながらも止められるのが嫌だった。
「まったく・・・ボクは子供じゃないのに」
だがそれで怒っていれば今から会う人物に影響があるかもしれない。
すぐに忘れようと転移門へと向かおうとすると。
「ユウキちゃん?ほら、あの《絶剣》の」
「へ?そ、そうだけど?」
「今ソロかな?なら俺らとパーティー組まない?」
ユウキに声をかけたのは世間ではチャラ男になる男性。
嫌とは言いにくいが、ユウキには約束があるため早く行きたかったのだが。
「ボク今から人と会う約束してるんだ。パーティーはちょっと・・・」
「じゃあその子も一緒でいいから!一緒に組もう?」
「え、えぇ・・・」
早く行きたいのにも関わらず引き止めて来る男性にユウキは困惑と苛々が募りはじめる。
そして約束の人物を待たせているためにその不安も重なる。
だが、それはすぐに覆された。
「転移」
「ふぇっ?」
ユウキの手を急に誰かが掴み、転移結晶でまとめて転移された。
相手が誰なのか警戒しながらも、転移のエフェクトがなくなるとすぐに距離を取った。
「・・・遅い」
「ゆ、ユキ?」
「ん・・・」
どこか拗ねているように言いながらもユウキの前に立つ。
その相手は今SAO攻略組から危険性があるプレイヤーとして認識されているPKKプレイヤー《黒猫》であるユキ。
そんな相手が何故、と思いながらも警戒を解いた。
「有名人は、大変、だね」
「あはは・・・ボクとしては勝手についてるから何とも言えないんだけどね・・・」
「ん、で。何の用、だった?」
「ここじゃ言いにくいから・・・どこか良いとこないかな?」
「ん・・・宿で、良い?」
「大丈夫、構わないよ」
普通ならば宿でなど了承しないが、この時のユウキは警戒を解いたばかりでそこにまで思考が回っていなかった。
ユキが泊まっている宿屋に着くとすぐに部屋を取って中に入る。
「お、お邪魔しまーす・・・」
「ん、宿屋だけど。どうぞ」
ユキはローブを一度外す。
今まで誰も姿を見たことがなかったその容姿を。
ユウキは今目の前で。
「ぁ・・・」
「ん・・・はふ・・・」
「綺麗・・・」
「これ?」
ユウキが注目している視線を辿ると自分の髪に集中していたので、自分の髪を一房取って見せる。
女の子であるユウキから見てもそれは美しいと感じる容姿。
腰まで届く長い黒髪に日に照らされれば反射もしていた。
だが光全てを呑めてしまうのではと思えるほどに綺麗な黒色。
「触っても良いかな?」
ユウキのそれを聞き入れるか悩むユキだったが、まあいいかと考え、触りやすいようにユウキをベッドに座らせるとその膝に乗っかる。
「ゆ、ユキ!?」
「んっ・・・触る、なら」
触っても良いのだと理解するとユウキは恐る恐る綺麗な黒髪に触れる。
「ふわぁぁ・・・」
思わず声が出てしまうほど、手触りがよく、指の梳き通りもよかった。
サラサラとしており、ずっとこの髪を触っていたくなるほどに。
「んぅ・・・」
ぽすっとユキが力を抜くと、ユウキはずっと髪を触りつづけていた。
そんなことをしているといつの間にかユキは小さいながらも寝息を立てて寝てしまっていた。
「ユキ?」
ちょっとやそっとじゃ起きなさそうと判断すると、ベッドに横倒す。
自分はどうしようかとユウキは考えるも、寝ているユキを見ていると段々と自分にも眠気がやってきていた。
「・・・良いのかな」
少し悩みながらも自分に身体を預けてくれたことを考えて、一緒に寝てしまおうと思考する。
「・・・おやすみ、なさい・・・」
窓から差し込む月光りが二人を照らす。
人でないほどに美しく、それでいてお互い安心したように寝てしまっていた。