刹那サイド
僕はベッドの上に横たわっているアイエフとアライさんの間に立って意識を集中させる。前にアテナさんからある話を聞いたが、人の存在は《魂魄(こんぱく)》という《魂(,こん,所謂たましい)》と《魄(,ぱく,つまりは体)》の二つが合わさって構成されているそうだ。この世界の人々の体は死んだ時、魂が抜け出てから魄の崩壊が始まりその魂等は《ギョウカイ墓場》と言う場所で眠るらしい。だが現在アイエフ達の体が未だに存在していると言うことはまだ魄の崩壊が始まっておらず、魂も辺りをフラフラしている状態と言う事になる。なら手遅れになる前にアイエフ達の魂を戻す!と言いたい所だけど蘇生なんて普通出来る訳がなく急ピッチで能力を創っている。《スキルメーカー》を何度か使用している時にあったことだが、能力の中でも創れない能力があったり、創れるが代償が必要となる物があった。今回はその類の中でもかなり重い物になるだろう。僕は能力が完成すると直様発動させる。現在僕はミキシマックス状態で力は上がっている。今ミキシマックスと解除すると先程使っていた《ドッペル・ゲンガー》の分も含めた《限界突破》の代償が一気に来るだろう。そうなると能力の発動どころか動く事すらできなくなる。だから今の内に全てを行うのだ。アイエフとアライさんの手を握り、目を瞑って再び意識を集中させる。そして新たに創った能力《魂の帰還(ソウルキャッチャー)》を発動させる。次の瞬間、僕の周りに何か二つの物がいる感覚がした。間違いなく二人の魂だ。次に感じた魂にこの体に戻れと念話の感覚で話し掛ける。魂達はフワフワと少し危なっかしそうに体へと戻って行くのを感じた。次の瞬間、特命課の一人が喜びの声を挙げた。
「アイエフさん達の心音、脳波共に回復しました!」
だが、これで終わりでは無い。最後にアイエフ、アライさんに回復魔法を全力で掛ける。脳波等が回復したと云えど油断は出来ない。これでもうアイエフ達は目を覚ます筈だ。そろそろミキシマックス状態でも危なくなってきた。頭に走る激痛と視界の歪みが僕を支配する。その様子に気が付いたのかイストワールさんが此方に視線を向ける。僕はイストワールさんに、
「すいません・・・後はお願いします・・・」
そう言って激痛の余り意識を落とした。最後にイストワールさんとセシアの叫び声が聞こえた気がした。
「・・・さ・・・・さい・・・・せつ・・・・さ・・・」
「・・・ん・・・・・此処は・・・・・?」
「刹那さん!目が覚めたんですね!」
「アテナ・・・さん?」
暖かい感覚に目を覚ますと目の前にアテナさんの顔がどアップで映っていた。何故僕は此処にいるんだろう・・・。そう思いながら体を起こそうとするが体に力が入らない。そんな僕を見てアテナさんは優しい笑みを浮かべる。
「今刹那さんの体は能力の代償で動けなくなっています。しばらくしたら元の世界に意識を戻しますからその時にはある程度動ける筈ですよ。それにしても・・・・・・・・・・どうしてあんな事したんですか!?」
「えっと・・・助けたかったから・・・」
突然怒り出したアテナさんに僕は戸惑いながらも答える。すると更にアテナさんはヒートアップして行った。
「だからってそれで貴方が死に掛けたら意味無いじゃないですか!私が貴方の体に神力を分けなかったら今頃貴方がギョウカイ墓場行きですよ!まあそんな事は絶対にさせませんけどね!」
「・・・ちょっと待ってください・・・やっぱり僕って死にかけてるんですか?」
「当たり前ですよ!貴方は現在意識不明の体の中はボロボロでリーンボックスの病院で絶賛入院中ですよ」
「また彼処にお世話になる日が来ようとは・・・!アイエフ達は無事なんですか!?」
「はい。あの後意識を取り戻して貴方のお見舞いをしていますよ?」
よかった・・・アイエフ達は無事だったんだ・・・アレ?そういえば僕ってどの位寝てたんだろう?
「あの〜、アテナさん?僕ってどの位眠っていたんでしょうか・・・?」
僕がそう聞くとアテナさんは辛そうな顔をして応えた。
「・・・・・二年間です・・・・・」
「・・・・・・・・・・ハイ?」
待て、今アテナさんは何と言った?二年?What?
「二年って・・・そんなに寝てたんですか?」
「はい。大変だったんですよ?ネプテューヌさん達は泣き出すし、アイエフさん達もかなり性格が暗くなってた時期もありましたし、如月家の面々は自殺しようとする始末ですよ。遂に私が皆さんの前に出る羽目にもなりましたし・・・」
「えっと・・・ご苦労様です・・・?」
「本当ですよ・・・」
アテナさんは僕が眠っている間の事を話しながら頭を撫で始めた。心地の良さについつい眠くなってしまう。
「いいですよもう少し眠っても。この世界と向こうは時間の流れが違いますから。刹那さん、お疲れ様です・・・」
「・・・はい・・・お休み・・・なさい・・・」
僕はアテナさんの手の暖かい感触といい匂いに意識を再び落とした。
刹那サイド終了
アテナサイド
私は膝の上の少年を撫でながら彼が眠っている間の事を思い出す。彼の状態は決して良いと言える物ではありませんでした。内蔵はグチャグチャになり、肋骨が折れ、リンカーコアにも罅が入った状態で、私は直ぐに刹那さんが入院した病院に侵入し、体の傷を回復させて戻ろうとしました。ですが、私の視界にある物が入ってしまったんです。其れは・・・,刹那さんの使用済みシャツ,でした。・・・本の出来心と言いますか・・・恋する乙女のメーターがトランザムしてオーバーロードしたと言いますか・・・。匂いを嗅いでいた所を如月家全員に見られました。全員にリンチされて女神達の前に突き出され、女神達にもボコボコにされました。ブランさんは唯一手を出しませんでしたが私の事をゴミを見る様な目で見てました。そのまま成り行きで私の正体と刹那さん達転生者の事を話す事になり、刹那さんの話をするとその場の全員が涙を流していました。刹那さんは本当にいい友達が出来ましたね。もう少しフラグに気を付けて欲しいですけどね・・・。そしてその次に刹那さんを間違いで殺した私にベクトルが向き、命の危険を感じた私は天界に逃げました。するとどうでしょう、同じ女神のネプテューヌさん達が追ってくるではありませんか。再び私は集団リンチを受け、三途の川をわたりかけました。そしてそこから数年が経ち、刹那さんはようやく目を覚ましました。
「本当に大変だったんですからね?まあ全部私の性ですけど・・・」
「ふみゅ〜・・・あてなしゃん・・・」
刹那さんの鼻を啄くと可愛らしい声で寝言を話します。凄く可愛いです・・・。彼を見ていたら私も眠くなって来ました・・・。私は刹那さんをベッドに運び、その隣に寝転がって抱きしめます。・・・・・あ〜、刹那さんはどうしてこんなに優しい匂いをしているのでしょうか。世界全てがこの匂いになればいいのに・・・。そう思いながら私は眠りに落ちました。
アテナサイド終了
刹那サイド
甘い匂いとサラサラとした髪の毛の様な感触、妙な圧迫感に目を覚ます。目の前にはさっきよりもどアップでアテナさんの顔が目に入った。一瞬思考がフリーズし、しばらく経ってようやく再起動し始めた。だけどアテナさんの唇が目に入った瞬間、再び思考がフリーズする。転生した日、最後にアテナさんにキスされた事を思い出すと顔が熱くなる。一人であうあうと悶えていると自分のすぐ目の前に視線を感じた。嫌な予感がしながらも恐る恐る見るとアテナさんが目を開けて此方を見ていた。因みに僕とアテナさんの顔の距離はかなり近く、お互いの息が掛かるレベルだ。
「「ッ!?////」」
アテナさんと僕は同じリアクションで同時に顔が赤くなった。
「あ、アテナさん?一旦離れましょうか・・・」
「そ、そうですね。では・・・」
そう言って離れようとするがお互いに動かない。この状態で三分ほど過ぎる。
「あの・・・離れないんですか?」
「ふえっ!?せ、刹那さんこそ・・・」
「いや、僕は貴方に自爆時のイージスの如くホールドされているんで無理です」
「あ、ご、ごめんなさい・・・」
「いやだから何で力を強めるんですか!?」
アテナさんのホールド力が上がっていく。ナニコレ何なの!?僕ストライクみたいにバラバラにされるの!?やだー!まだそのモード使ってないのにー!そう思っているとアテナさんの腕が僕の首に回って締まる。
「アテナさん!ギブギブ!首入ってます!」
「大丈夫です!先っぽだけ!先っぽだけですから!」
「いや何が!?」
アテナさんは目が血走っていて怖い。こんなアテナさん見た事無いんですけど・・・。そう思っていると部屋のドアが開き、誰かが入ってきた。
「ヤッホー、アテナちゃん!大親友のフレイヤちゃんが遊びn・・・」
さて、今の状況を軽く説明しよう。
1.僕がアテナさんに抱きしめられている状況
2.フレイヤ?さんの角度から見るとアテナさんが自分よりも小さい子供を組み敷いている
3.フレイヤ?さんのゴミを見る目
4.オワタ\(^ω^)/
アテナさんは弁解をしようと僕から離れてフレイヤ?さんの所へジリジリと近寄っていく。
「ふ、フレイヤ?これには深い訳が・・・」
「君、大丈夫だった?」
「え!?あ、はい。ありがとうございます」
「君中々礼儀正しいね〜お姉さんは嬉しいよ〜♪」
いつの間にか僕の所に来て頭を撫でていた事に驚愕した。て言うか何故頭を撫でるんだろうか?
「いや〜何か撫でたくなるんだよね〜」
「そうなんですか?」
「うん!でもそろそろやめようかな?君弱っちゃいそうだし」
「僕は虫か何かですか!?」
「うーん・・・リス?」
「もう何も言いません・・・」
「まあまあ、このショタコン女神は放っておいてこっちでお姉さんの女神仲間とお茶しましょ?」
お誘いは嬉しいんだけどなあ・・・。
「あの〜、僕は何時になったら僕は元の世界に帰れるんですか?」
「「・・・・あ」」
「今完全に忘れてましたよね!?」
「ま、まあ転生の間に行けば返してもらえる筈ですよ。既に話は通してありますので・・・」
「まあでも君かなりヤバイ事になってるよ?何せ神になっちゃったしね〜」
「・・・・・・・ハイ?」
マズイ、いろんな事がありすぎて気持ち悪くなって来た。
刹那サイド終了