刹那サイド
のあに風絶を渡す数日前、トレーニングルームを使って修行をしていた僕にアテナさんから連絡が入った。
「もしもし、どうしましたアテナさん?」
「刹那さん、皆さんも呼んで貰えますか?お願いがあるんです」
「分かりました。少し待っていてください」
アテナさんの真剣な表情を見て、僕は直ぐにのあを呼んできた。
〜如月家リビング〜
家族全員がリビングに揃い、Nギア越しにアテナさんと向かい合う。そしてアテナさんの話が始まった。
「刹那さん達にお願いしたい事があって今日は連絡させて頂きました」
「はい、それで要件は何ですか?」
「実は、最近新しい転生者が別の世界に転生したんです」
「と言う事はまた誰かがやらかしましたね・・・」
「・・・仰る通りです・・・」
「まあ、それでその転生者がどうかしたんですか?」
僕が聞くとアテナさんは再びキリッとした顔になり、話を続ける。
「その転生者はかなりチートスペックになっていてその世界で本当に好き放題しているんです」
「一応聞いておきますけど、どんな特典をもらったんですか?」
「はい、その転生者は《王の財宝》、《不老不死》、《催眠術》、《無限の魔力》、《ルルーシュのギアス》です。しかもルーレットではなく自分の意思で決めさせたみたいですよ」
「・・・あー・・・王の財宝って何ですか?」
「簡単に言えば刹那さんのポーチの中身を相手にシュパパ!と飛ばせるチート能力とでも思ってもらえれば・・・」
「それはまたチートですね・・・と言うより催眠術とギアスってその人は奴隷でも作るつもりなんですかね・・・」
僕が何となく聞いてみるとアテナさんは絶句していた。
「刹那さん、正解です。その通り彼はその世界の全ての女性を自分の物にしようとしています。男性は勿論、気に入らなかった女性も皆殺しです。既にその転生者は沢山の人を殺しています」
「誰かが昔、百万人殺せば英雄みたいな事言ってましたけど・・・その人がやると只の殺人鬼ですね」
「そうですね・・・。それで今回刹那さんにお願いしたい事はその転生者の捕獲、又は討伐です」
「討伐・・・つまりもしもの時は・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
アテナさんは申し訳なさそうに唇を噛み締める。まあ、アテナさんの頼みだし断る気は無いけど・・・殺す勇気はちょっと無いかな・・・。何とか気絶に持ち込もう。
「アテナさん、僕やります。その世界の事とその転生者の事、詳しく教えてください」
「・・・刹那さん一人を行かせて見てるだけは嫌ですから私も行きます。もしもの時は・・・刹那さん、私も一緒に罪を背負います」
「のあ・・・ありがとう」
「マスター!私達も忘れないでください!」
「そうだぞ、私達だって坊やの家族だ。協力するさ」
「私は刹那の剣です。貴方に付いて行くのは当然の事ですよ」
「奏者よ!余を忘れるでない!置いていったら泣くぞ!余は泣くからな!」
「皆・・・ありがとう!」
全員が行く事になり、アテナさんに詳しい事を聞く事になったのだが、僕とのあはある一つの疑問が浮かんだ。
「アテナさん、そう言えば僕とのあの他にもう一人転生者がいるって言ってましたよね?その人には頼まないんですか?」
「それは私も気になっていました。教えてください」
僕とのあの言葉にアテナさんはしかめっ面をして話し始めた。
「実は・・・その転生者は先日亡くなったんです」
「「うそーーーー!?」」
「本当です。彼はハーレムが目的だったのですが・・・。彼は前世では女性経験ゼロで全く彼女の一人すらできなかったんです。それでようやくこの前彼女が出来たのですが・・・初デートの日に別れのメールが来て・・・」
「まさかそれで自ら命を!?」
「いえ、ショック死です」
「「ショック死!?」」
「はい、そのメールを見た瞬間,有り得ないんだぜ!?,と言ってバタッとブッ倒れました」
「何ていうか・・・壮絶な死に方ですね・・・」
「それでこの世界が許容できる転生者の枠が一つ空いたのでその内新しい人が来る可能性があります」
「まあ、来ない事を祈りますよ」
これ以上増えるという事は何らかのミスで殺された方々が来ると言う事だ。あんまりそれは好ましく無いだろう。そう思いながら僕は心の中で祈った。そしてアテナさんは説明の続きを始める。
「話を戻します。刹那さん達に言って貰う世界は《地球》と呼ばれる星です」
「地球?それって・・・」
「はい、刹那さんとのあさんが前世で暮らしていた地球の平行世界です。其処では魔法による文化が発達していて魔王と呼ばれる者が存在しています」
「魔王ですか?凄いですね・・・」
「それでその魔王を倒す為に勇者と兵士を育てる学校があるんです。其処に転生者が三人います」
「ちょっと待ってください!と言う事は僕達は転生者三人と戦う事になるんですか!?」
「いえ、三人の内二人はその転生者とは正反対の性格でいい人達です。その人達が狙われているんです。それでその二人と対象の転生者が魔王討伐のパーティとしてこの前学校を卒業しました。その三人は今度魔王討伐の旅に出ます。その二人には話してありますが、私がその世界に干渉して刹那さんとのあさんをパーティにねじ込みますから二人はその転生者の魔の手から二人を救いつつ魔王を倒してください」
「凄いねのあ、僕達勇者だってさ」
「そうですね・・・・・・・その二人が女性で無い事を願います」
「?何か言った?」
「いえ、何でも無いですよ」
「では、荷物の準備が出来たら呼んでください。私は待っていますので」
アテナさんに言われ、僕達は準備を始める。まずは食料だ。最近自分で造った燻製器で作った薫製品や非常食、通常の食材や調味料、飲み物も忘れない。その他にもテントやランタン等、冒険に使えそうな物をポーチに収納して行く。一応この前ネロに頼まれて造った風呂もポーチに収納する。これを造るのには苦労したなあ・・・。まず魔力変換で大地の力を使って地面から大理石を抽出し、其れを集めて大きな塊にする。そして、塊を直方体にカットし、中を掘って削っていく。その作業を続ける事数日、ようやく大理石の風呂が完成した。ネロの要望通り、マーライオンみたいなのが着いていて、そこからお湯が流れる。その仕組みはマーライオンの中に僕の魔力変換の魔力が篭った石が入っていて、湯船の中にはお湯を吸収し、その中にある魔力が石に吸収されていくという仕組みになっているので無限にお湯が沸き、暴れない限りはお湯が溢れない。これをネロはかなり気に入ってくれた様で持って言ったら喜ぶと思いポーチに入れた。他にも持っていく者が無いか僕は家の中を探し始めた。
〜一時間後〜
全員が準備を済ませ、リビングに集まった。セシアはネックレスになって僕の首に、アルトリアとネロはポーチの中のカードに戻り、C.C.も僕の中に入っている。轟天は基本ポーチから出てこないので余り変わりは無い。のあもモンスターボールと荷物を僕のポーチに預け、弓を肩に掛ける。準備が済んだ僕達はアテナさんに声を掛けた。
「準備は大丈夫ですね?幾つか言っておきたい事がありまして、今から行く世界はオリジナルの世界なので原作と言う物が存在しません。だからどうなるかは分からないので十分な注意を払って進んでください。ですが、他の世界のモンスターや人物が入り混じった世界でもあるので本当に気を付けてくださいね。それでは・・・行きます」
そう言うとアテナさんは呪文を唱え始め、僕の意識は遠くなって行く。そして突然の浮遊感と共に僕は意識を落とした。
「・・・さん・・・・せ・・・・・ん・・・・・きて・・・・」
「ん・・・此処は?」
「刹那さん、着きましたよ。此処が地球の日本の《ゲート》の前です」
のあに起こされた僕は馬車に乗っていて、目の前に広がっていた光景は、何もない荒野に一つの扉が立っているだけだった。のあから聞いたが僕達は出発の途中に馬車の中で気絶したと言う設定の勇者の仲間らしい。
「刹那さん、あの扉を通って魔界の魔王城を目指すそうです」
「へえ、そうなんd「あ、やっと目が覚めたんだね」・・・何方ですか?」
背後から声が聞こえたので振り返ると其処には赤い髪を背中まで伸ばした少女が居た。年齢はのあ位だろうか?そう思っているとその少女の後ろから同じくらいの見た目の今度は黒髪の少女が此方を見てきた。その少女も髪の毛は背中辺りまで伸ばしている。・・・流行っているのだろうか?そう思っていると少女達が近づいて来て、小声で僕に話し掛けて来た。
「君がのあちゃんの言っていた刹那君だね?私は《日影野 千夏(ひかげの ちなつ)》、転生者だよ。千夏って呼んでね?私も君の事せっちゃんって呼んでもいいかな?」
「別に構わないよ。それで・・・其方の方は?」
「私の名前は《十六夜 ルナ(いざよい ルナ)》だ。君と同じ転生者をやっている。ルナと呼んでくれ。これから宜しく頼む」
「うん、僕は如月刹那。二人共、宜しくね?」
「「ああ(うん)」」
二人と軽く自己紹介をしていると馬車の中に一人の少年が入ってくる。その少年は金髪で右目が赤、左目が青と言う所謂オッドアイの少年だった。恐らく十人中十人がイケメンと言うだろう。すると少年はのあに近づいて話し始めた。
「よう、俺の名前は《オリーッシュ・ムーリー》だ。皆は俺の事をオーシュって呼ぶ。宜しくな」
そう言ってのあの頭を撫でようとするがのあはその手を弾き、嫌悪感丸出しの目で睨む。始めて見たそんなのあの表情に僕は思わずポカンとなった。
「気安く女性に触れるのは良くありませんよ。それに私に触れていいのは家族と友人だけです」
そう言ってのあはオーシュに注意する。すると彼は
「済まない、これからは二人のだけの時に・・・な?」
と言った。この人全然分かってないんじゃ・・・?そう思っていると今度は僕を見てオーシュは話し掛けて来た。
「お前、男なんだってな。これから先、俺の足を引っ張る事はするなよ」
行き成りっすかオーシュさん・・・。まあ、そうならない様にはするつもりだけどね。分かりましたと言おうとするとのあと千夏、ルナが僕の前に立ってオーシュに反論した。
「ちょっとムーリー!行き成りそれは酷いんじゃないの!?」
「刹那さんは貴方よりずっと強いです!貴方が逆に足を引っ張らないでください!」
「そうだ、刹那に謝れ!」
皆の言葉にオーシュは・・・
「皆優しんだな。おい、お前!三人に感謝しろよ!皆嫌なのを我慢してお前といるんだからな!あとお前は雑用係だ!しっかり仕事しろよ!それじゃあ出発だ!おいお前、馬を走らせろ!」
「え、うん。分かったよ」
「後、これからは俺達には敬語で話せよな。俺達と会話できる事をありがたいと思えよ」
「・・・はい、分かりました。それでは行ってまいります」
「ああ、しっかりやれよ」
僕は小走りで運転席に座り、手綱を握る。馬は一頭だけだがすごく大きい。轟天くらいあると思う。その馬は僕を見て、何時でもいいと言いたそうな合図を送った。
「それじゃあ・・・行くよ!」
「ヒヒーーーーーーーーン!」
僕は合図を出して、馬を走らせてゲートを潜っていった。
刹那サイド終了
今回の番外編は数話で構成していきます!それではさようなら( ´ ▽ ` )ノ