刹那サイド
気絶した女子三人をアルトリア達に任せ、再びセットアップした僕はオーシュへと向かっている。ここまで結構派手な戦闘をして来たが、結界を張っているので誰も気づかない。つまりは何したって大丈夫と言う事だ。僕が数歩歩くごとにオーシュは怯えた表情で下がりながら王の財宝を連発する。だが僕にはそんな物効かない。セシアを軽く振るって武器をなぎ払う。そしてオーシュとの距離は僅か2メートル程となった。
「ひっ!?わ、悪かった!俺らに対してはタメ口でもいい!街も迂回する!ざ、雑用も俺がやろう!そ、そうだ!アイツ等を好きにしていい!だから、だから命だけはーーーー!」
そう言ってオーシュはのあ達を指差して土下座をしてくる。のあ達は目を覚まし、オーシュをゴミを見る様な目で見ている。どうやらオーシュは催眠術やギアスも不完全な様で、一度気絶させたら解けたみたいだ。僕はさっきののあ達を物の様に扱った言葉にイライラしながらセシアに魔力を込める。それを見たオーシュは更に表情を歪ませて自棄になったのか右手にあった剣を子供の様に振り回した。
「クソがああああああ!何で俺がこんな女みたいな奴にいいいいいいいいい!俺は選ばれた人間の筈だ!それでこの世界の王になって、女を抱いて、お前らみたいなモブを・・・・!この野郎がああああああああああ!」
その瞬間、オーシュから大量の魔力が噴き上がった。魔力はドンドン膨れ上がって行く。ってマズイ!?
「皆、逃げて!このままじゃ此処等一体が焼け野原になる!」
そう言って僕は結界から馬車とアルトリア達を魔界のゲート前まで強制転移させる。道は振り出しに戻ったが死ぬよりはマシだ。オーシュと一対一になり、僕は少し本気を出す。
「セシア・・・《リミッター・オープン》・・・」
「はい、リミッター1解除」
瞬間、一気に僕の魔力も吹き上がる。この状態が今僕が扱いきれる最大の魔力だ。この魔力を全て魔力資質の無属性に変えてオーシュごと消滅させる。それしか方法は無い。オーシュの体は魔力に耐え切れず、ぐちゃぐちゃと音を立てながら魔力と共に膨れ上がる。オーシュ自身は既に息絶えていてその亡骸は只の魔力による巨大爆弾と化した。僕は魔力を最大まで出し、無属性へと変換する。僕の周りは紫色の魔力が漂っている。そして僕は更に能力を使う。
「《ミキシトランス[ネプテューヌ]》!更に、《ドッペルゲンガー》!」
自分の分身を創りだすドッペルゲンガーを使い、僕は二人になる。そしてお互いにオーラを発動させて化身を繰り出した。化身は二体で一体は巨大な白いドラゴン、もう一体は禍々しい斧を背負った亜人だ。
「《聖獣シャイニングドラゴン[零式]》!」
「《暗黒神ダークエクソダス[零式]!」
ただこれだけでは終わらない。この二体の化身だからこそできる芸当がある。僕は分身と声を合わせ、その能力を発動させる。
「「化身よ、一つに!」」
その瞬間、化身同士がオーラの渦になって混ざり合い、新たな姿を創って行く。やがてそれは神々しい剣を持った騎士へと姿を変えた。
「「い出よ!《聖騎士アーサー[零式]》!」」
そして今此処に存在する己の魔力を全て凝縮した超高密度の魔力弾を創りだす。そしてアーサーが剣を天に向けた瞬間、上空から結界を突き破り聖なる雷がアーサーの剣に宿る。そしてアーサーが剣を振りかぶり、魔力弾に向かって思い切り振り切ると同時に僕も分身と同時に魔力弾へシュートを叩き込む。
「「《ソードエクスカリバー》!」」
瞬間、僕達から放たれた巨大な斬撃はオーシュだった物に直撃し、空間が捻れて歪む。その中にオーシュは吸い込まれて行き、姿を消した。僕は化身とドッペルゲンガーを解除し、その場に倒れる。ドッペルゲンガーに加え、化身の二体発動と化身合体、更に魔力の大量消費となると暫くは動けそうに無い。
「マスター!しっかりしてください!マスター!」
セシアの声も虚しく、僕は瞼を閉じて眠りの世界へと落ちていった。
刹那サイド終了
セシアサイド
「マスター!何とかしてこの場から脱出しないと・・・」
マスターの化身技で結界が割れてしまった為、確実に街には気づかれて居る筈です。兎に角転移をしなくては・・・。私の魔力で補えるでしょうか?そんな事を思っていると、
「居たぞ!人間だ!捕まえろ!」
と街の方から幾つもの人影が近づいてくる。確実に気づかれました。ですが転移魔法はマスターが気絶している今、私自身に残った魔力だと一人分しか転移させられません。・・・マスター、生きてください。そう思って転移魔法をマスターに使おうとした瞬間、私の視界が光に包まれて気が付けばゲートの前にいました。
「マスター?マスター!?」
辺りを見回してもさっきまで私の目の前に居たマスターがいません。まさか、私を助けて・・・!早く行かないと・・・!そう思った瞬間、私の横に馬車が止まり、中から千夏さん達が出てきました。
「セシアさん!早く乗ってください!事情は何となく分かりました!刹那さんを助けます!」
のあさんの声に私は平常心を取り戻し、馬車に乗り込みました。そして操縦をしている千夏さんが手綱を振るい、馬を全力で走らせます。マスター、今行きます!
セシアサイド終了
刹那サイド
一度は気絶したが眠って直ぐに声が聞こえてセシアと僕がピンチだと言う事が分かり、僅かな魔力を振り絞って僕はセシアをゲートの前まで転移させた。それから直ぐに街の方からかなりの数のモンスターが押し寄せて来た。もう気力も持たず、最後にモンスターに縛られる感覚を感じながら僕は再び意識を落とした。
ピチョン・・・・・ピチョン・・・・・ピチョン・・・・・
「ん・・・此処は・・・・」
次に目を覚ました場所は地下室の牢屋らしき場所で、僕は手足を枷で止められていて足枷にはご丁寧に両足に巨大な鉄球が付けられていた。
「・・・・・・・これからどうしたものか・・・・・・・」
そう思いながら壁に背を付けて楽な体制になり、脱出方法を模索していると、
「・・・ぐすっ・・・・ひっく・・・・・ぐすっ・・・・・・」
と隣の牢屋から泣き声が聞こえて来た。横を見ると隣の牢屋との壁の間に大きな隙間があり、そこからチラッと覗いた。其処には僕と同じ枷に繋がれた黒髪の少女がエメラルド色の瞳から涙を溢れさせていた。何時もの僕なら声を掛けていたかもしれない。だが、僕は声を掛ける事が出来なかった。何故なら、
彼女の側頭部には,二本の角,があったからだ。
それを見た僕は前に千夏に聞いた言葉を思い出す。
「ねえねえ、魔王の姿って頭に角が付いてるんだって!」
と彼女は言っていた。つまり・・・目の前の少女は・・・。
「魔王!?」
「ふえっ!?」
あ、やっばー・・・気づかれた。少女は穴から顔を覗かせている僕に視線を向ける。見れば見るほど美少女だなこの子。でも仮に魔王だとして何故彼女は枷に繋がれて居るのだろうか・・・?そう思っていると少女は僕を見たまま口を開く。
「私が・・・魔王だって分かるの・・・?人間なのに・・・」
ハッハッハー・・・ヤバイよこの子魔王だったよ!僕の予想的中だよ!ロックオン以上の的中力だったよ!
「まあ、何となくね・・・。じゃあ、君は何で魔王なのに此処に繋げられてるの?君は魔王なんでしょ?」
「・・・貴方には関係無い」
僕が疑問に思った事を聞くと少女は辛そうな顔でプイと向こうを向く。何なんだろうか?そう思っていると牢屋の前の道の向こうから足音が聞こえて来る。僕は穴から顔を出し、気絶しているフリをした。足音は少女の目の前で止まり、女性の声が聞こえ始めた。
「居心地は如何ですかな姫様?」
「ック・・・ドノルゼン・・・!私にこんな事して只で済むと思ってるの!?」
「おうおう、怖い怖い。貴方はもう少し自分の立場をご理解した方がいい。貴方は私達に裏切られて閉じ込められたんですよ?先代魔王が死んで今や魔王の血族は貴方だけ、貴方を生かしているのは私の息子の子供を産ませる為なんですよ。死にたくなかったらその偉そうな口を閉じて私達に従いなさい!アーハッハッハ!」
女性、ドノルゼンは高笑いをしながら去って行った。足音が遠ざかって行くと少女は再び泣き始めた。そして少女は僕に向けて話しかけてくる。
「どう?惨めでしょ?元々ドノルゼンが勝手に軍を動かした所為で人間と魔族が戦う事になってしまったの。本来ならドノルゼンは処刑になる所をお父様は許したの。だからドノルゼンは調子に乗ってお父様が勇者との戦いで亡くなった後、まだ幼い私の秘書として影で税の徴収を上げたりしていたの。そして今回、私が邪魔になって只自分の出世の為の道具にしようと此処に閉じ込めたの・・・」
「・・・・・・・ねえ、君は人間と争う気は無いんだね?」
「当然よ!争いなんて醜い事は今すぐ止めるべきだわ!」
「じゃあ、僕が今君を助けたら君は今すぐ人間の所からモンスターを撤退させてくれる?」
僕の言葉に驚いたのか少女は涙を堪える声を止め、数秒経ってまた話しだした。
「本当に助けてくれるの?私が貴方を最後の最後で裏切るかもしれないのよ?」
「それは大丈夫だよ。僕は元々君を倒してモンスターを退かせる事が目的だったから。君が裏切るのなら僕は君もろともその場の全てを殺すだけだ。さあ、どうする?」
殺気を少し込めて僕は少女に聞いた。少しキツい言い方かもしれないが、状況が状況だ。それに、この問題が解決しない限り、僕達は元の世界に帰れない。アテナさんの言っていた魔王を倒すは恐らくモンスターを退かせるだけでも達成されるだろう。そう考えながら少女の答えを待つ。そして少女の牢屋から深呼吸の音が聞こえ、やがて少女が答えを出した。
「分かった。現魔王《エルヴィア・オーシェン》の名に誓って貴方の要求を果たします。だから・・・私を助けて・・・!」
「・・・オッケイ・・・契約成立だよ」
僕も少し寝たお陰で魔力がかなり回復した。僕は体を魔力強化して枷を壊し、少女エルヴィアの牢屋へと穴を通って入り、枷を壊す。エルヴィアは枷が外れた瞬間、力なく僕に倒れ込んできた。僕は慌ててエルヴィアを抱える。
「・・・ありがと。貴方の名前は?」
「刹那・・・如月刹那」
「そう、刹那にお願いがあるの。私の他に助けて欲しい人達が居るの」
「助けて欲しい人?誰なの?」
「私を慕ってくれたメイド達よ。向こうの牢屋に閉じ込められている筈だからお願い、助けて!」
「・・・はあ、分かったよ。だから泣かないの、君魔王でしょ?そんなんじゃ気弱な女の子にしか見えないよ」
「なっ、貴方魔王の私に何て事言うのよ!私は魔王よ?恐ろしい魔王なのよ?それを女の子って貴方ねえ・・・」
「いや、何処からどう見ても角が生えただけの美少女にしか見えないから。怖くないし、寧ろ可愛いだけだからね?」
「可愛いって・・・////」
そう言ってエルヴィアは顔を真っ赤にして顔を俯かせた。本当ならもう少し話したいが今は時間が無い。僕は彼女を抱えて牢屋を蹴破る。
「ちょっ、この格好って・・・////」
「ああ、この体制が一番楽だからさ。大丈夫だよ、大人の状態になってるから身長は十分あるから変な事にはならないよ」
「そうじゃなくt・・・もういいわ。それじゃあお願い」
「分かりましたよお姫様っと・・・。《神風》!」
僕はエルヴィアを抱え、メイドが捕まっている牢屋を目指して加速した。
刹那サイド終了