刹那サイド
僕はオリヴィアを抱えて長い廊下を神風で駆け抜けている。先程まで結構スピードを出していた所為か、腕の中の魔王様は寒そうにしていたので少しスピードを下げている。まあ、服は如何にも捕まった人が着せられている様な格好でノースリーブだから確実に寒いよね。僕はふと疑問に思った事をオリヴィアに聞いた。
「ねえ、その角って本物なの?」
「そんな訳無いじゃない。これはド○キホ○テ魔界店で買ったパーティグッズよ」
「何でそんな物付けてるの!?」
「黙りなさい!これを付けた私は謂わば完全体よ!此処に閉じ込められる時に下着を剥ぎ取られたけど、コレだけは死守したわ!」
「一番今身に付ける物を装備していない時点で完全体もクソも無いからね!?」
「何よ!?欲しければ貴方も買えばいいでしょう!」
「そんな物いるかあああああああああああ!?」
「あ、其処で止まって!」
怒鳴った所でオリヴィアに言われ、ある部屋の前で止まった。どうやら此処にメイド達が捕まっているらしい。入る前に扉の鍵穴から中を覗く。牢屋の中は見えないが、見張りが二人いる事が分かった。僕は見張りの背後に魔力弾を創り出し、頭部に当てて気絶させる。そして急いで部屋に入り、牢屋の鉄格子を魔力強化した腕で広げた。牢屋の中ではメイド服を着た方々が三人居て、此方をポカンとした顔で見ている。其処に先程降ろしたオリヴィアがメイド達に駆け寄った。
「貴方達!怪我は無い!?」
「魔王様!?ご無事だったのですね!?」
「ええ、彼女が私を助けてくれたのよ。勇者にも関わらずね」
「勇者!?魔王様に何をするつもり!?」
「いや、僕はこの後魔王が軍を退いてくれればそれで良いので・・・・・・それに僕は男です」
「「「「うっそお!?」」」」
「まただよコンチクショウ!」
何なの!?男に見られる様にちゃんと服装だって気を付けているし、セシアに言われて顔だって隠してないよ!?なのに何処へ行っても女子、女子、女子って・・・僕は男だああああああ!
「オッホン!それは兎も角、早く脱出するよ。取り敢えずこの街から逃げて僕の仲間と合流するからね。分かった?」
「ええ、彼女達を助けてくれてありがとう。貴方、勇者なのに変わっているわね」
「そう?例えばどの辺かな?」
「普通勇者なら魔王を見つけたら直ぐに攻撃するでしょう?貴方達の一番の目的なのだから」
「でも君の意思でモンスターに人間を襲わせている訳じゃ無いんでしょう?なら君を殺すのはお門違いだよ。倒すのならあのドノルゼンとか言う人でしょ」
「それでも魔族なら討伐対象じゃ無いの?」
「僕は此処まで戦う前に相手に殺気を放って戦う気があるモンスターとしか戦っていないよ。戦闘の意志が感じられない奴らには手を出さないよ」
僕がそう言うとオリヴィアどころかメイド達も唖然とした表情で僕を見る。そんなに変かなあ?そう思っていると部屋の向こうから足音が聞こえて来る。恐らく僕とオリヴィアの脱走がバレたのだろう。流石にこの四人を守る術は・・・アレ?
「そう言えば何で僕の服ってオリヴィアみたいにされてないんだ?」
「ああ、貴方を牢屋に入れた兵士が言っていたけど貴方の服や物を剥ぎ取ろうとすると跳ね返されるらしいのよ。だからそのまま放りこんだらしいわ。」
「そうなんだ・・・。じゃあやっぱり・・・あった!皆、これで全員脱出できるよ!」
「本当!?もう時間が無いわ、急いで!」
「分かってる。待たせたね・・・来い!轟天!」
僕が叫ぶと腰にあるポーチの中から光の球体が飛び出し、それは大きな黄金の馬に姿を変えた。オリヴィア達は再びポカンとなっている。僕は急いで轟天に乗り、オリヴィア達に声を掛ける。
「急いで!ギリギリ全員乗れるから!」
「わ、分かったわ。皆、彼の指示に従って」
こうして全員が何とか轟天に乗った事を確認し、僕は轟天に合図を出した。本当はアルトリア達が居ればもう少し楽に行けたんだけど全員転移させちゃったから今は轟天とミキシマックスにしか頼れないんだよね・・・。まあ、兎に角行きますか!
「轟天!道は僕が造る!君は駆け抜けて!」
「ヒヒーーーーーーーーン!」
僕は天井に向けて右手を掲げ、魔力を収束させる。そして部屋の扉が開き、兵士達が入ってきた瞬間、天井に収束した魔力を解き放つ。
「行っけええええ!《ディバインバスター》!」
放たれた魔力は天井を突き抜け、薄暗い部屋に光が指す。兵士達は突然の光に目を抑える。僕はその隙を突いて、轟天に合図をだし、一気に出来た穴から外へと出る。外へ出ると地平線の方に馬車が見えた。確実にセシア達だろう。そう思っていると下から声が聞こえ、兵士達が僕を見て驚いているのが分かる。僕はそれを無視して馬車まで轟天を走らせた。
〜数分後、合流〜
「刹那さーーーーーーーん!」
「ギュム!の、のあ・・・苦しいよ」
「無事で良かったです!刹那さんに乱暴したモンスター達は全員コンクr成敗します!」
「マスター!良かった・・・良かった・・・!」
「あのね、セシア。今物凄く窒息死しそうなんだよ僕」
皆と合流してからのあの暴走が半端なかった。そして千夏とルナが申し訳ない表情で此方を見ている。
「?二人共どしたの?」
「せっちゃん・・・ごめんなさい!操られていたからってせっちゃんに酷い事しちゃった!」
「私もだ。許してもらえるとは思っていない!本当にすまなかった!」
「え、イヤイヤイヤ君達が謝る事無いでしょうに・・・」
「だってせっちゃんに酷い事言ったりしたよ?その髪の毛気持ち悪いとか・・・」
「私も似た様な事を言ってしまったぞ」
「いや、それくらい前世じゃ普通だったから。前世だと目をアイスピックで抉られたり、その後に傷口を焼かれたり、殴られたり蹴られたりするのは毎日だったからね」
僕がそう言った瞬間、辺りの空気が一瞬にして凍りついた。何だろう、今の空気なら魔力使わなくても多分エターナルブリザードとかパンサーブリザードとかフリーズショットとか打てちゃう気がするよ・・・。そんな事を思っていると千夏とオリヴィアが震えた声で僕に聞いた。
「せっちゃん・・・どんな前世だったの・・・?」
「それ以前に前世ってどう言う事?何故記憶があるの?」
「あちゃー・・・余計な事言っちゃったよ。分かった、説明するよ。僕は・・・転生者と呼ばれる存在なんだ」
こうして僕はオリヴィア達に転生者の事、それに自分の前世の事を語り始めた。
〜数分後〜
「ぐすっ・・・そんなの・・・・そんなのって無いよ・・・!」
「酷い・・・それが人間のする事なの・・・?」
話が終わると千夏とオリヴィアは号泣し、その他の全員も表情を歪ませていた。まあ、聞いていていいと思う話じゃ無いからね。
「あの〜・・・お二人さん?泣く程の事では無い気がするんだけど・・・」
「だって・・・だってせっちゃんは辛くないの!?過去にそんな事があって・・・普通はそんなに笑う事なんてできないよ!」
「そうよ!貴方は泣かないの!?」
「う〜ん・・・何て言うか・・・。毎日を生きるのが大変すぎて涙を流す余裕があまり無かったから・・・。と言うより泣こうものなら容赦なく暴力の嵐の餌食になるから泣けなかったしね」
再び空気が凍り付く。もう此処まで絶対零度な空気になるってもうスキルの類だよねコレ・・・。そう思っていると今度は如月家全員が涙を流し始めた。って何で!?
「ちょっとちょっと!?何で泣くのさ!もう皆知ってた事でしょ!?」
「それでも改めて聞くと涙が止まりませんよ・・・!」
「もう、アテナに頼んで坊やの前世の地球滅ぼした方が良いと思うぞ・・・」
「そうですね・・・私の宝具を叩き込みましょう・・・」
「うむ、余の時代の毒を飲ませるのもいいかもしれんな・・・」
「そうですね。なら私もアテナさんのお手伝いをしましょうか・・・」
「あの・・・皆さん?目が怖いんですけど・・・。まさか本気じゃないよね?」
「「「「「本気の本気に決まってる」」」」」
「止めて!?別にそこまでしなくても良いから!」
何でこの人達を止めてくれないんだオリヴィア達は・・・。そう思って彼女達を見ると・・・。
「ドノルゼンの件が終わったら刹那が帰る時に出現する女神に相談。それからその地球に乗り込んで人間を殲滅する。いいわね?」
「「「畏まりました魔王様。刹那様の仇、全力で撃たせて頂きます」
「ルナちゃん!私達もやるよ!」
「分かっている。私の魔法で殲滅してやるさ・・・!」
「こっちもこっちでとんでもない事になってるーーーーーーーー!?」
何?何なのこのカオス!?僕なんかの事で皆大げさすぎだよーーーーーーーー!?心の中で叫んだ瞬間、街の方角から大量のモンスターが押し寄せて来た。それに気付いたのか全員が真面目な顔で軍勢を見る。軍勢の中心には偉そうに馬に乗ってふんぞり返った女性が居る。さっきは顔が見えなかったが恐らくアレがドノルゼンだろう。そう思っているとオリヴィアが僕の袖を引っ張って声を掛けた。
「刹那、あの軍勢。ドノルゼンも含めて全員殺して構わないわ」
「いいの?あれでも君の民じゃないの?」
「私を子供を産むだけの道具にしようとした奴らを愛せよと?それは無理よ」
「ですよね〜・・・。分かった。一気に方を付けるから全員下がっていて。轟天、アルトリア、出番だよ」
「まさかアレをやると言うのですか!遂に実戦で使う日が来ようとは・・・」
「行くよアルトリア!」
「はい!」
「「ユニゾンイン!」」
アルトリアとユニゾンし、轟天に跨る。そして普段右手で透明と化している,何か,の姿が現れる。それは剣。黄金色に輝く伝説に伝わる王の剣だった。更に轟天が蹄を踏み鳴らし、右手の剣は巨大になるそして刹那は其れを構え、轟天を走らせた。
「行くぞ轟天!風のごとく・・・駆け抜けろ!」
「ヒヒーーーーーーーン!」
僕は轟天に神風を発動させ、一気に軍勢に突っ込む。そして一気に右手の剣を横に凪いだ。次の瞬間、軍勢は全て吹き飛んで行き、その場を静寂が包み込んだ。しばらくして先程までモンスターだった物の中からドノルゼンが出てくる。どうやら下敷きになって被害を免れた様だ。ドノルゼンは狂気に満ちた目で此方を睨みつける。
「この人間風情が!こうなったら・・・ハア!」
ドノルゼンは手に小さな魔法陣を出現させてそれに触れた。その瞬間、大地が揺れ始め、街が赤いオーラに包まれて膨らんで行く。ドノルゼンはそれを見て、笑っていた。
「ハーハッハッハ!このまま街ごと此処等一体を吹き飛ばしてくれるわ!さらばだ人間風情よ!」
そう言ってドノルゼンは宙に浮き、かなりのスピードで街よりも遠くへ飛び去って行く。僕は轟天の上に立ち、剣を両手で持って上に振りかざし目を閉じて集中する。分かる。見えなくとも大地から魔力がこの剣に溜まって行くのを感じる。まだだ、まだ足りない。お願い!もっと、もっと力を!更に大地と自分から魔力を吸い上げる。そして限界まで魔力が溜まり、僕は一気に目を開く。剣からはからは黄金色の魔力が溢れ、今にも爆発しそうだ。尚且つ轟天で威力が上がっている為、これなら爆発する前に街を止められる。そして僕は叫びながら剣を一気に振り下ろした。
「《約束された勝利の剣(エクスカリバー)》!」
瞬間、僕の目の前を黄金色の光がが埋め尽くし、光が消えた後、其処には巨大なクレーターしか残っていなかった。そして僕は途轍も無い疲労感に意識を落とした。ああ、これで転生してから気絶するの何回目だろう・・・。
刹那サイド終了
ドノルゼンサイド
クソッ!クソッ!人間風情のガキに此処までやられるなんて・・・!だがあの街の爆発には耐えられまい・・・!これからどうする?そうだ!魔王に一番忠誠を誓っていたあの竜王の所へ行こう。私は勇者と勇敢に戦い、魔王が倒された後も必死に戦い続け勝利した。そして勇者は躍起を起こし、街ごと爆発した!これで行こう。息子は死んでしまったが私が竜王の弟の子を産めばきっと権力者に返り咲ける!フッフッフ・・・これで私は安泰だ。そう思った瞬間、私を黄金色の光が埋め尽くし、其処で意識がプツンと途切れた。まるで二度と目が覚める事の無いように大きくプツンと・・・。
ドノルゼンサイド終了