刹那サイド
「・・・ん」
ゆらゆらとした感覚の中、僕は目を覚ました。其処は何も無い質素な部屋で窓も無く、薄暗い。あるのは天井の照明と僕が寝かされていたベッド、そして手と足に付けられた手錠と足枷位だ。ポーチは腰に付いたままでエネが入っている事も確認できた。まさかのあに開発中のジャミング装置をパクられるとは思ってもいなかった・・・。それに皆のあの目・・・思い出しただけで体が震える。なんでこんな事になっちゃったんだろう・・・。そう思いながら拘束具を魔力強化して引きちぎろうとした瞬間、扉が開かれ、変身したネプテューヌ達とのあが入って来た。やはりその目に光は無い。
「あらせっちゃん。目が覚めたのね」
「・・・うん。此処は?」
「私達の新しい家よ。今日からずっと四人で此処で暮らすの」
「な、何言ってるの?」
ネプテューヌの言葉に僕は寒気を感じたそしてノワールが話し始める。
「ねえ、刹那。貴方は何時も私達に優しくしてくれるわよね・・・」
「そんなの・・・当たり前だよ。友達だもん・・・」
「そう・・・友達・・・ね」
「の、ノワール・・・?」
そう言ってノワールはフラフラと僕に近づく。そして僕の両頬に手を添えて唇を押し付けてきた。突然の事に僕は頭が真っ白になる。だが、それだけでは終わらなかった。
「ん・・・れる・・・んは・・・ぴちゅ・・・」
「んっ!?」
ノワールは僕の口の中に舌を入れて来た。真っ白な頭が更にスパークする。何分?何時間?それとも何秒?時間すら分からなくなるまでそれは続き、ノワールの唇が離れ、口と口で透明な糸の橋をボーッと見ながら僕は動けなくなっていた。そしてノワールは僕に妖艶な笑みで言った。
「刹那。私、貴方の事が好きよ。二年前からずっと・・・一人の男性として」
「・・・ふえ・・・?」
朦朧とする意識の中、ノワールの言葉が頭の中でずっとリピートされる。ノワールが・・・僕の事を好き?友達じゃ無く・・・異性として・・・。その事実に戸惑う暇も無く、僕の口内に次の舌が入れられた。今度はベール姉さんだ。
「ん・・・せっちゃん・・・はむ・・・んちゅ・・・」
姉さんはノワールの様な乱暴なものではなく、優しく余裕のある大人なキスだった。時々唇を甘噛みしたりしてゆっくりと深くキスをして来る。だからこそ今の僕には先程の倍以上の感覚が押し寄せる。唇を話すと姉さんは僕を抱きしめて言った。
「私も貴方の事を、弟でありまた、異性としてお慕いしてますわ。これからはずっと一緒に居ましょう。大丈夫、怖い物は・・・全て壊しますわ」
姉さんが言い切ると同時に僕は引き剥がされ、のあに押し倒された。そのままのあは何も言わずに唇を押し付ける。それはあの大和撫子なのあとは思えない乱暴さだった。唇を話すとのあは僕の首筋に吸い付く。そしてちゅぽっと言う音と共に僕の首筋に赤い痕が残る。それを見てのあは満足そうに微笑んだ。
「ふふふ・・・これで刹那さんは私の・・・私達の物です。あんな女に渡すものですか・・・」
ブツブツ言いながらのあは僕にもたれ掛かる。そして指で僕の胸をなぞりながら言った。
「刹那さん。私ね、思ったんですよ。刹那さんはきっと勘違いしてるんだって」
「・・・勘違い?」
「はい♪刹那さんはあの女に騙されてるんです。良い様に利用されて・・・きっと今回も・・・」
「そんなこと無い!神無はそんな事しない!」
「・・・じゃあ、それが嘘だとしたら?」
「う・・・そ・・・?」
僕が繰り返す言葉にのあは笑みを浮かべる。
「だって可笑しいじゃないですか。何故好きな相手の記憶を消そうとするんですか?他言無用で覚えていてもらえばいいのに。刹那さんなら大丈夫だと彼女ならわかるでしょう・・・?」
「そ、それは・・・!世界のバランスが取れなくなる可能性が・・・」
「へえ・・・つまりあの女は愛する刹那さんよりも世界を・・・貴方を蔑み、貶し、何もかも奪った屑を優先したんですね」
「ち、違う!」
「違わないですよね?貴方は彼女が世界の情報を集めるのに丁度良かっただけなんですよ・・・」
「違う・・・違う・・・嘘だ!」
僕はのあの言葉に怒鳴り散らす。違う・・・神無はそんな事しない!神無は僕を道具扱い何てしない!記憶を消したのだって世界を・・・世界を・・・守る為に・・・。
「どうです?あの女の目的・・・分かりました?」
・・・世界を・・・あの世界を守る為に僕を・・・捨てた?
「そうです。きっとあの女の所に戻ってもまた利用されるだけですよ?あの女だけではありません。私達の国の教祖も、周りも、本当は貴方の事を見ていない。貴方の能力にしか興味が無いんです。普通、命の危険がありうる護衛の任務をギルドの冒険者とは言え一般人である貴方に頼みますか?」
「・・・僕は・・・利用されたの・・・?」
「そうです。皆さん口ではあんな事を言っておいて結局は刹那さんの中にある力にしか興味が無いんです。貴方の事を使いやすい盾としか見ていないんですよ」
「そんな・・・いや・・・いやぁ・・・」
「結局刹那さんの扱いは・・・前世から何一つ変わっていなかったんですよ」
いやだ・・・いやだ・・・そんなの・・・いやだ・・・。みんな・・・みんなぼくなんてみてない・・・ぼくのなかの・・・ちからだけ・・・。
「大丈夫よ、せっちゃん」
「ふあ・・・」
きがつくとぼくはねぷてゅーぬにだきしめられていた。それはあたたかくて・・・やさしくて・・・。するとねぷてゅーぬはぼくにきすをしてきた。あまくて・・・むねがきゅ〜ってなって、ぼくはしあわせなきもちになった。かみなとのきすではこんなきもちにはならなかったのに・・・。
「大丈夫。私達は貴方の能力なんてどうでも良い。貴方が・・・せっちゃんが傍に居てくれて笑ってくれればそれでいいの。私も貴方の事が好きよ」
「うん・・・うん・・・ぼくも・・・だいすき・・・」
「あらあら、泣かないで。そんなの貴方には似合わないわ。泣き止んで」
「うん・・・んゆ・・・」
「疲れちゃったのね。ごめんなさい、貴方を助ける為とは言え、乱暴な事をして・・・」
「ううん・・・だって・・・ぼくをたすけてくれたもん・・・だいすき・・・」
「ええ。今はおやすみなさい。次に目を覚ましたら五人でご飯を食べましょう?もう、貴方に近づく虫は居ないわ」
「うん・・・みんな・・・おやす・・・み・・・」
ねぷてゅーぬのことばにぼくはめをとじた。ああ・・・ぼくはしあわせだ・・・。
刹那サイド終了
神無サイド
私は今、空中を走っている。この世界に来て暫く経って自分の中の神力が戻っている事に気が付き、せっちゃんの気配を追い掛けてラステイションと呼ばれる大陸の上空へと来ていた。真下に見える大きな建物がせっちゃんの言っていた教会と呼ばれる所なのだろう。その教会の地下深くからせっちゃんの気配がある。せっちゃん・・・今行くからね・・・!私はそのまま地面へと降下して着地する。さて、地下までどうやって進めば・・・。そう思っていると、教会の職員らしき人が袋に沢山の食材を入れてコソコソと茂みに入っていくのが見えた。私はその後を追う。物陰から隠れて見ていると、職員は何の変哲もない木を五回ノックした。すると木の根元が開き、階段が現れる。教員が降ろうとした所で私は神力を使って足跡と気配を消して職員の首に手刀を決める。眠った職員に認識阻害の術式を掛けてから職員の服を拝借する。顔が隠れるタイプだから潜入にピッタリだ。職員を木陰に隠して袋を持って私は地下への階段を下りていった。
神無サイド終了