──夢があった訳では無い。やりたい事があったわけでもない。
その内、ここの職員になった。どうしてこうなったのか、全く分からない。だけど、翼さんや奏さんのサポートを、全うしたいと思った。
──スケジュールが厳しい仕事に、俺が音をあげたのは、そんなに遅くはなかった。適度にサボり、適当にこなした。だけど、文句は言われなかった。当たり前だ、仕事はしていたのだから。
──熱意が足りなかった。想いが足りなかった。
奏さんが死んでから、そう思うようになった。俺がもっと頑張っていれば。もっと、何か出来ていたら。そんな1ミリのイメージも湧かない事を言っていた。
『馬鹿じゃないの?』
平手打ちを食らった。何が起きたのか、分からなかった。
『あなたが、あなただけが頑張っても仕方ないじゃない。私だって、何も出来なかったのに。』
そんなことを言った。それでも捻くれた俺は、その慰めを素直に受け取らなかった。
『じゃあ何か?俺は何も悪くないと?ただ給料を貪るだけの無能が、何も悪くないと?』
思い出したくも無いけど、そう言った気がする。怒りのままに、哀しみのままに。
でも、怒りも、哀しみも、彼女には勝てなかった。
『ふざけてんじゃないわよ、このへなちょこ青二才が。あんまり調子に乗ってると、本当に奏さんに顔向けできなくなるわよ。』
今度はまさかのグーパン。涙目になったのは、最早不可抗力だ。
へなちょこ青二才という語彙に、今では乾いた笑いが出る。けど、救われたのは覚えてる。
俺は自分に自惚れていたのかもしれない。いや、してたんだろう。周りの奴らを全部下に見てしまうこのイカれた目を、覚まさせてくれた恩人。
だから、絶対助けたい。今度は俺が──
♢
「──惚気話ですか。」
「…うるさい。」
「語りがくどい。」
「…さーせん。」
元はと言えば、話せ話せとしつこいこの子達が悪いのに。何故俺はここまで責められているのだろう。もうやめて!もう俺の体はボドボドだ!
「私んとこの藤尭さんはどうなんだろう。いつも一緒に居るけど。」
「どの世界でも一緒とか…。運命ですか(笑)」
何笑ってんだ。すごく恥ずかしくなってきた。もう死のうかな。
「…あ、クリス先輩。起きてたんですね。」
「…ッ!?」
ビクリと跳ねる肩。ちょっとー?
「…本当に起きてたんですか…。いやらしい…。」
「…ん、んッ! あ、あたしはその…何も聞いてねぇからなッ!」
顔真っ赤で否定しても、何もならないだろうに。…まぁ、いっか。この人らなら。
──って、あれ?
「許さない開けろ早く開けろ殺してやる許さない開けろ──」
…許して☆
「許さないって言ってるでしょ。…さっさと作戦を実行しよう。手遅れになる前に。」
「…え?この状況で?」
いや無理だろ。うん、絶対無理無理。もう手遅れとかそういう次元ではない。
俺の疑問を無視し、決行する響さん。…責任、取れないからねっ。
「──早く開け…えっ。」
「…そーら。」
突然開いたドアに驚き、目を見開く響ちゃん。そして見逃さずにあれを放り投げた。
「…こ、これは?──うげッ!?」
「──ち く わ だ ァ ァ ッ !」
響さん怖いです。後ろ向いた隙にロングスリーパーはちょっと引きますよ。
「…ちょ、ギブッ!ギブッ!」
「…大丈夫。死にはしないから。」
「死ぬからーッ!──助けて、藤尭さんッ!」
何故俺。…俺がどうこうできるわけないだろ!いい加減にしろ!
…でも、ちょっとやりすぎじゃないか?確かに酷いことされたけども。憎しみが絶頂に達した事もあったけども。
「…響さん。少しだけ、緩めてあげてください。聞きたいことがあるんです。」
「…?…いいけど、もう虫の息だよ?」
ダメかも知んない。けど、ワンチャン残ってるからセーフ。
「…ぷッ!…はぁ、はぁ…ッ!し、死ぬかと思った…。」
「…響ちゃん。友里さんの居場所は知ってるかな。」
思ったより声が低く出る。そしたら、響ちゃんの顔が──恐怖に塗り変えられた。
「…ご、ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!許してくださいッ!何でもしますからッ!だから嫌わないで下さいッ!」
「…え、えぇ…?」
こんな表情をされて、『ん?今何でも(ry』なんて言えるわけがない。軽く恐怖を覚えていると、小夜ちゃんがコソっと囁いた。
「…アレですよ。ヤンデレ系の女の子は拒否されるのを嫌うんです。聞こえないふりをしたり、発狂したり。…響さんは後者ですね。」
前者がタチ悪すぎて笑う。と考えると、響ちゃんはまだマシな方なのか(戦慄)。
「…なら、俺はどうすべきなの?」
「…無理強いはしませんが、厳しく断ると自殺とかしかねないので、それはやめといた方がいいかと。」
すごいなこの子。まるでヤンデレ博士だ。…自分がそうだとここまで詳しくなれるもんなんすねぇ。──そして思い出す。この状況を動けない体で見ていた者がいた事を。
「……。」
ドン引きである。…クリスちゃん?君ももしかしたら同じ状況になってたかもしれないんだよ?…あ、だからか。成程。
「…じゃあ響ちゃん。質問を変えるけど──その気持ちは、何時から?」
勘違いだったら恥ずかしいことこの上ないが、前世の事を考えるとそうとしか考えられない。
何らかの因子がアレして、こんな惨劇を起こしたのは確定的に明らか。ひぐらしと言う名アニメを知らないのかよ。
「…そ、それは…。…小夜ちゃんと、切歌ちゃんと共闘した時に──をした時、です。」
怯えながら、恐る恐る言葉を零す響ちゃん。それを聞いて、ハッとする響さん。…俺も察したけど、違ったら怖いし黙っとこ。
「…じゃ、じゃあ──
小夜ちゃんの見た目は勝手に想像してください(投げやり)。投稿ペース戻せるか怪しいですが、頑張りますのでよろしくお願いします。