「…こ、ここは…?」
歴史が変わる?そんな簡単に変わったら苦労しないよ。
…前と同じで、手錠をされていた。
「──よくもまぁ、あんなことされた後にイチャイチャ出来ますねこのクソタラシ。」
案の定小夜ちゃんが後ろから話しかけてくる。…ん?今なんて言った?
「…あんな事?」
「…覚えてますよね?調に対するあの反応。マリアに向けたあの恐怖の表情。──殺されでもしなきゃ、そんな顔出来ませんよね。」
なんと、小夜ちゃんも記憶があった。…やっぱり夢じゃなかったのか。ここで漸く自信が持てた。
「…俺は──何も守れなかった。」
──そして、途方もない虚構感に襲われる。賢者モードと言うべきか、突然冷静になるのはよくある。
「…当たり前ですよ。あんな連中に絡まれて、半日も命が無事だったのが幸運だったんですよ。」
「…でも、俺がもう少し強く出られれば──」
「──そんな事した草食動物が、肉食動物に見逃されるわけないでしょう。」
…何だろう。すごく納得した。悔しいけど。
「…兎に角、選ぶのは貴方です。…私は貴方が大好きですが、もう無理強いしたりしません。」
「………、ありがとう。」
「何でお礼を言われなきゃいけないんですかねぇ?私としては結構図々しい事言ったつもりだったんですけど。」
恥ずかしそうにそっぽを向く姿は、年相応に見えた。
俺はこの子を誤解していた。少し、認識を改めるべきだろう。──やべーやつから、ちょっとやべーやつに。
「──変わってねぇじゃねえかッ!?」
「ウェッ!?」
今日一びっくりした。この声はまさか──
「──こんな時に変なギャグ突っ込んでくんなッ!バカなのかッ!?シリアスな場面で茶化すのはあるけどこれとそれとはちょっと違うだろうがッ!」
「…く、クリス先輩。…何故ここg」
「──大体ッ!展開が早すぎて置いてけぼりなんだよッ!ツッコミが追いつかねえじゃねえかッ!そもそも鬱展開書こうとしすぎて暴走してんじゃねぇかよお前ん家ィッ!」
途中から怒りの矛先は変わったが、間違いなくこのツッコミキャラはクリスちゃん。…前回は1度も見ていなかったけど…。
「…お、落ち着いて…。ね?クリスちゃん。」
「落ち着けるかッ!もう我慢できねぇぞオラァッ!お前死んでたんだぞッ!?もっと危機感覚えやがれこのボケッ!」
…状況が少し飲み込めない。…えっと、つまり?どういうこと?何故クリスちゃんはここまでお怒りなの?
♢
「…あれー?クリス先輩居ないんデスかー?」
暁切歌は、雪音クリス宅に居た。合鍵を持っていたので普通に開け、立派な不法侵入をしていた。
「…折角■■■■■■が作った薬を"飲ませてあげた"のにデース…。」
独り言。いつもの彼女は独り言だろうと、表情豊かな少女だった。──が、無表情。
「…あの女。何か気づきやがったデスか。」
まるで2期の初期切ちゃんの様な口調。そして、ベッドの傍にある置き手紙を発見し、読み上げる。
「何デスか?これは──」
『──拝啓 切歌さんへ、えっとなんと言いますk』
「──ヴァァァァッ!」
気が狂ったように顔を赤く染め、涙目になりながらベッドを転がった。
さっきまでシリアスだった物が、辺り一面に転がる。
♢
「──つまり、クリスちゃんにも記憶があると?」
「…あたしは夢で見ただけ だけどな。…今も熱で頭が痛てぇよ。」
よく見ればクリスちゃんはパジャマに赤い上着、額に冷えピタを着けている。…そして、急いで来たのだろう。服が…汗で濡れてて…その、だらしなかった。
「…ど、どこ見てんだこの童貞。」
「…何で皆俺が童貞だって知ってるの。…み、見られたくないならさっさと隠しなよ。」
そう言われて、クリスちゃんは赤い顔を更に赤くする。…なんでこんな容態で来てしまったんだ。
「…医務室──は、危険だから、何処か安全な部屋に行こう。」
「じゃあ藤尭さんの部屋ですね。」
「じゃあアンタの部屋だな。」
最初に言っておく。俺も泣くぞ。屈辱すぎるわ。
仮のマイルームに着くと、少しだけ、ほんの少しだけ危惧していた事が的中する。
「…荒らされてる…。衣類が何一つ残ってねぇ…。」
「…こりゃひでぇな。」
クリスちゃんはそう言いながら、小夜ちゃんを見る。小夜ちゃんは目を逸らしながら、話をすり替える。
「そ、それより、どうやって過ごすんですか?友里さんも探さないと行けないし。」
「それもそうだな。…第一、見つけられなかったんだろ?どっかに監禁されてるのが、オ…チ──」
──フラリと倒れ込むクリスちゃん。急いで支える俺。あまりの体格の小ささに、少し面食らう。ちっちゃ。…でも大きいですね。
「もう1回死ねばいいのに。」
「…心読むのやめてくれない?」
いやその、ごめんなさい。
クリスちゃんかわいい。5秒で思いついたオリキャラが霞んじまうぜ。切ちゃんの扱いェ…