第1話
おっす!おら悟……っと危ねぇ危ねぇ、ついノリでヤバイこと口走るとこだったぜ。自重せねば自重。
てことで皆さんおはようございます。おれはただ今絶賛朝の筋トレ中です。
これは何時ものことだがここ最近はちょっと違っている。なんと、部長とイッセーも一緒にやっているのだ!と言っても部長は付き添いでメインはイッセーなのだが。
なんでも、イッセーの神器は基礎値が高ければ高いほど効果を発揮して、戦いに有利になるとか。
そのため数日前から体を鍛えている。あ、ぶっ倒れた。
元々運動神経抜群なイッセーだが、部長のメニューは凄まじく毎日鍛えているおれですらたまに音をあげる。
なぜおれも一緒にやっているかというと、初めは部長とイッセーだけでやる予定だったがこいつが、「近衛も体鍛えているので、一緒にやらせましょうよ」とか言いやがってさ。
まぁ、おれも最初は『一人より楽しいからいいっか!』って思ってたけどさ。いざやってみるともう大変。何度逃げ出そうとしたことか……。
「よし、今日のランニングとダッシュはこれくらいにしときましょうか。次腕立て伏せやるわよ」
「おーす」
「は、はい……」
走っただけで死にそうなイッセー。もうこれだけでどのくらい凄いか軽く予想がつくよな。
「準備したわね。じゃ始めなさい」
そう言って、イッセーの上に座る部長。
「うおっ……部長、もうやばいです」
「こらっ弱音を吐かない!私の下僕が弱いなんて認めないんだから」ペシッ
腕立て伏せをするときはいつも部長がイッセーの上に座る。重い方が筋肉が鍛えられるからな。
おれは重りの代わりに片腕で腕立てをする。
「……299……300!やっと終わった……!」
無事(?)に腕立てを三百回終えたおれたち。
「すぐに次、腹筋、背筋、スクワット、その他各種三百回いくわよ」
「わ、わかりました」
「了解でーす……」
でもまだまだ部長の鬼の指導は続きます。
「それにしても遅いわね。もうそろそろ来てもいいと思うのだけれど」
「?誰か来るんですか部長?」
「えぇ実は……あ、来たわ」
イッセーの質問に答えようとした部長は、公園の入り口の方を見た。
つられておれたちも見ると、
「イッセーさーん、部長さーん、近衛さーん!おまたせし……きゃっ!」バタン!
アーシアさんが走ってきてコケていた。
「はい、イッセーさん。どうぞお茶です」
「ありがとうアーシア」
「近衛さんもどうぞ」
「おう!ありがとうアーシアさん!」
おれたちは各種筋トレを終え、休憩していた。
いやー今日は死ぬかと思ったね。今までの中でもダントツで一番キツかった。全身ガタガタいってるわ。
「そういえばアーシアはどうしてここに?」
「部長さんからイッセーさんが毎日ここでトレーニングをしていると聞いて、何かお手伝い出来るとことはないかと思いまして」
な、なんて良い子!好きな人のためには身を削る!これぞ正しく究極の愛!……と迄はいかなくとも素晴らしい心掛けだね。おれも見習いたいものだ。
そんなことを考えながら部長の方を見てみると、
「…………ハァ」
何か思い詰めたような顔をしている。
「部長?どうかしたんすか?」
「い、いえ何もないわ。そうだわ、アーシアもいることだしアレを済ませましょう」
「アレ?」
「そうアレ。近衛には関係ないことだからここで別れましょう」
アレとは何かとても気になるが、関係ないと言われたらどうしょうもない。
「わかりました。じゃあ今日の部活でまた」
「えぇまたね」
「じゃあな近衛」
「近衛さん、学校で!」
お別れを言って、家に向かって帰る。
学校
家に着いたおれは、家族の朝ごはんと弁当を用意して学校に向かった。
教室に着くと中は騒々しく、全員窓際にいた。
「ん?前にも何か見たことがあるような……」
んー何時だったかな?………そうだ!イッセーが部長と一緒に登校してきたときだ!その時と状況が似てるんだな。
そんな考えに行き着いたら、前から松田と元浜が涙を流しながらこっちに来た。
「近衛……俺たちは今猛烈に悲しんでいる」
「そうだ……その理由が分かるか?」
「いや、全く分からん。でもしいて言うなら……イッセーが部長とアーシアさんと一緒に登校してきたとかか?」
「何ッ!正解だ!見てもいないのにどうしてわかったんだ?」
適当に言ったら当たってたみたいだ。
「どうしてって、今朝部長たち三人がイッセーの家に向かったことを知ってるからな」
そう素直に答えたら、二人は目から血を流さんというような勢いで涙を流した。
「な、なんだ……と」
「そ、それはもしや……朝……帰り」
バタン!
怒りと悲しみのあまりに気絶した二人。御愁傷様です。何か勘違いしてたけどそっちの方が面白そうだからいいか!
そんな二人を無視して窓の方に向かい、外を見てみる。
おーおーマジで三人で登校してますわ。羨ましいぞイッセー!てかアーシアさん凄く嬉しそうだな。それもそうか、好きな人と登校出来たら嬉しいよな。おれだって嬉しいもん。
しかし、そんなアーシアさんとは真逆で部長は今朝同様、浮かない顔をしていた。
自分の席に着き、授業の準備をしていると、イッセーとアーシアさんが入ってきた。
「おー新婚夫婦のお出ましだ」
「なんだそれ。茶化すなよ近衛」
「そ、そんな夫婦だなんて……早すぎますよイッセーさん!」
「いやいやアーシア、今のは近衛が勝手にいっただけだから真に受けるな」
おれの言葉に過剰に反応を示すアーシアさんをイッセーがなだめる。
「それはそうと、今朝のアレって何だったんだ?気になって授業に集中できねぇよ」
「別にお前が授業に集中できないのはどうでも良いが、アレってのはアーシアが俺の家にホームステイする件のことだ」
意外と重大なことをさらりと言うイッセー。
「ふぅ~ん。……え?……ええぇぇぇぇぇ!マジですか!?イッセーの家にアーシアさんがホームステイ!?」
流石にこの事実には驚いた。だって一つ屋根の下に年頃の男女が共に住むんだぜ?驚愕しかないわ。
おれの声が大きかったせいで、この事実がクラス中に一気に広まった。
「アーシアさんが!?」
「イッセーの家に!?」
「ホームステイ!?」
「それってちょっとヤバくない?」
「うん、近衛と違って女子にはとても優しいイッセーくんだけど一つ屋根の下ってのわ」
おいそこの女子!おれと違ってって何だ!おれだって女子に優しいわ!
「どうしていつも、イッセーばかり!」
「うらやましぃぃぃ!」
男子どもは醜かった。
「やいやいイッセー!アーシアちゃんがお前の家にホームステイってのはどういうことだ!」
「リアス先輩や姫島先輩だけじゃ飽きたらず、その毒牙を金髪美少女天使アーシアちゃんにまで向けるのか!」
いつの間にか復活していた、男子の代表の松田と元浜がイッセーに詰め寄った。
「俺がいつ部長と朱乃さんに毒牙を向けた。ただアーシアが俺の家にホームステイしたい、って身元受取人の部長にいってこうなっただけだよ」
「嘘だ!そんな嘘には騙されないぞ!」
「何時だ!?いつその毒牙をアーシアちゃんにかけた!」
イッセーが真実(多分)を言っても松田と元浜の怒りは収まらなかった。どうしようかと迷っていると、
「ほ、本当です!私が部長さんにお願いして、イッセーさんのお家に泊めてもらえるようにしたんです」
救世主が舞い降りた。アーシアさんの口から告げられると二人は、
「そんな……どうして」
「……イッセーばっかり」
バタン!
本日二度目の気絶。御愁傷様です。せめてどうか安らかな眠りを……。
夜
「じゃチラシ配りいってきます」
「いってきます!」
「えぇいってらっしゃい」
部長に見送られ、イッセーとアーシアさんがチラシ配りに向かう。
どうしてイッセーも一緒に行ってるかといえば、簡単に言うと心配なのである。
アーシアさん一人を見知らぬ土地に一人で出歩かせたくないそうだ。どんだけ過保護だよ。
「うふふ、イッセーくんは心配屋さんですね」
「はは、そうですね」
朱乃先輩も木場も同じことを思ったらしい。
おれはふと、今朝のことが頭を過り部長を見てみる。
「…………ハァ」
やっぱり今朝と同じ様に何か思い詰めた顔をしている。