次の日
朝早く―それもおれが起きるより早く―家のチャイムが鳴る。
ピンポーン
当然誰も気づかない。
ピンポーン
もう一度鳴る。今度はおれが気づいた。
「……んあぁ?誰だ、こんな朝早くに……」
まだ寝ていたい頭を叩き起こし、眠い目を擦りながら玄関を開けると、
「やぁ、近衛くん。おはよう」
「……ん?木場か。おう、おは……よう!?な、なんで木場がここに!?」
そこには木場がいた。こいつおれの家知らないはずだよな。
「うん、君を迎えに来たんだ」
「……私もいます」
「うふふ、私もいますわ」
ワケわかんないこと言ってる木場の後ろに、小猫ちゃんと朱乃先輩もいる。
「え!?な、なんで小猫ちゃんたちも?てことはまさか……」
「もちろん私もいるわよ」
やっぱり!三人の後ろから部長が姿を現した。イッセーとアーシアさんはいないみたいだが。
「な、なんでおれの家に?てかどうしておれの家を……?」
「それは僕の使い魔に君のあとを追わせたんだ」
さらりとストーカー発言をしてくる木場。
「いや、悪いんだけどさ、おれそっちの趣味ないのよ」
「!ぼ、僕だって無いよ!いざというときのために、眷属の家は知っといた方がいいって部長がおっしゃって!」
慌てふためく木場。なんか面白いな。
「もう一つの答えだけど、これから十日間合宿をするから迎えに来たのよ。その許可も取りにね」
木場の代わりに教えてくれる部長。
「あ、そうなんですか……って合宿?十日間も?」
「えぇ。ゲームのために眷属みんなで鍛えようって話になってね」
「ああ、そうでしたね。でも母さんまだ寝てますよ?」
「あらそうなの?困ったわね、もう起きてるかと思ったのに……」
首を傾げる部長。いやいや、普通の人はまだ寝てる時間ですから!あなたたちが軽く異常なんですよ。
「取り合えず起こしてきますね。家の中に入って待っててください」
「え?……そう?じゃあお言葉に甘えて、おじゃまするわね」
「おじゃましますわ」
「……おじゃまします」
「おじゃまします」
部長に続いてみんなも入る。当然木場は最後。こんなときでもレディーファーストなんてどれだけ紳士なんだよ。
部長たちを居間に案内してから母さんを起こしにいく。ついでに遥香と健二も。
「母さん、起きてくれ。ちょっと話があるんだ。遥香と健二も」
モゾモゾ
まだ眠いため布団のなかでうずくまる。
「母さん!起きてくれって!話があるんだよ!ほら、遥香と健二も。もう朝だぞ」
「……ん、近衛、朝っていってもまだこんな時間じゃない……」
「眠い~」
「あと五分~」
「そんなお決まりの台詞はいらないから。今、下に部長たちが来てるんだよ」
すると、
「!それを早く言いなさいよ!お客様は待たせちゃダメでしょ!遥香、健二!起きなさい!」
電光石火で起きる母。こんな母さん久しぶりに見たぞ。何はともあれ起こすことには成功したな。
三人が支度を始める中、おれは下に降りる。居間にいくと、
「クンクン」
小猫ちゃんが必死に匂いを嗅いでいた。
「こ、小猫ちゃん?どうしたの?」
「……先輩、この匂いってカレーですか?」
「え?あ、あぁそうだけどそれが?」
「!……食べさせていただけませんか?」
いつもとは様子が違う小猫ちゃん。この子ってこんなにカレー好きだったの?
「別にいいけど。じゃあちょっと待っててね。準備してくるから」
「近衛、私も頂けるかしら?」
「私もお願いしますわ」
「部長と朱乃先輩も?いいですよ、木場お前は?」
「い、いや僕は遠慮させていただくよ」
部長と朱乃先輩もお願いしてくる。みんなそんなにカレーが好きなのか。それにしてもさっきの木場の態度、なんかおかしかったような……まぁ別にいいか!
台所に行きカレーを温める。その最中居間から、
『三人とも、さっきあれだけの量をたべ―――』
『……祐斗先輩、騎士も寝技の練習をした方がいいと思います』
『祐斗、今日は晴れるそうよ。走るには絶好の天気ね』
『祐斗くん、動きの早い相手に雷を当てるのは難しいのです』
『『『で、何かいった?』』』
『いえ、な、何も……』
お気の毒な木場。御愁傷様です。てかみんなここに来るまでにそんなにもたべ―――。
「……近衛先輩もお願いします」
「近衛も一緒にやるわよね?」
「近衛くん、お願いできますか?」
「…………はい」
こうしておれと木場の肉体の死亡が確定した。
「そういうわけですので十日間、近衛をお借りしてもよろしいですか?」
「えぇ!どうぞどうぞ!こんな息子で良ければいくらでも!」
あの後部長たちにカレーを配り終えたら、丁度母さんたちが降りてきた。ついでだからみんなで朝ごはんを食べることにする。
いやー良かったわ。昨日何故か知らないがカレー作りすぎちまったからな。部長たちが来て助かったよ。
そんなこんなで話が進み、おれは無事に合宿に行けることになった。学校の方は部長がどうにかするらしい。
「それにしてもこのカレー美味しいわね」
「家庭で作ったなんて信じられませんわ」
「……近衛先輩、今晩もカレーでお願いします」
部長たちがおれの作ったカレーを食べて誉めてくれた。小猫ちゃんにいたっては今晩も食べたいって言ってくれる。
「い、いやーそんなに誉められると照れますね。なら今晩もおれが料理作りましょうか?……そんな体力が残ってたらですけど……」
ポン
見てみると木場が同情するような目をしていた。
「……共に生き残ろう!」
「!……ああ!絶対だ!」
ガシッ
おれと木場の間に絆が生まれた瞬間だった。
「あ、そうだ。おれがいない間、母さんたちごはんどうすんの?」
「それもそうね。ん~どうしましょうか?」
ズコッ
昨日に引き続きまたしてもコケる。なにも考えてないのかよ!よくそんなんで合宿許したな!
「それなら私の方で準備させていただきます。料理人を家にこさせて作らせますので」
そんなおれと母さんを見て部長が提案してくれた。
「え!?そんな悪いですよ!いい機会なので母さんが作れば―――」
「本当ですか?それは助かります。ぜひよろしくお願いします!」
断ろうとしたら先を越された。母さんめ!自分が楽したいからって!少しは働け!
「わかりました。では手配しときます」
「……おい」
「さぁて仕事の準備でもしますかな~」
半眼で睨むが顔を背ける。しかもどこかに行くし。
「はぁ~じゃあ宿泊の準備してきますんで、ちょっと待っててください」
部長たちにそう告げ部屋にいく。そういえば遥香と健二静かだったけど置いてきて良かったかな?
準備を終えて戻ると、
「え?じゃあお兄ちゃん学校ではそうなんですか?」
「……うん、変態だよ」
「わぁぁ!すごーい!手品師みたい!」
「ははは、今度はこれだよ?」
「微笑ましいわね」
「えぇ、うふふ」
小猫ちゃんと遥香が話してて、木場は健二に神器使って手品してる。部長と朱乃先輩はそれを見て微笑んでいた。
なんだ、ちゃんと打ち解けたんだな。良かった良かった。
「あら、近衛来たわね。じゃあそろそろ行くわよ」
「小猫さん、また来てくれますか?」
「……うん、絶対来る。私ももっと話したいから」
「祐斗兄ちゃん!また手品見せてね!」
「うんわかったよ。健二くんまたね」
それぞれ挨拶する。
「じゃあ母さん、遥香、健二行ってきます!」
「いってらっしゃい。体には気を付けるのよ」
「お兄ちゃんいってらっしゃい!」
「いってらっしゃい!おみやげ期待してるから!」
「いや、遊びに行くんじゃないんだから」
おれの家を出てイッセーの家に向かう。
イッセーの家に着くと部長が一人で迎えにいった。
しばらく待つと、三人が玄関から出てきた。
「これでみんな揃ったわね。じゃあ早速向かうわよ!」
『はい!』
打倒ライザーの強化合宿が始まった。