「はぁ……はぁ………し、死ぬ」
「あ、あぁ……やばい」
おれとイッセーはあり得ない量の荷物を背負わされて、山道を登らされていた。
「二人ともー先行ってるわよー」
「あらあら、うふふ」
「大丈夫でしょうか」
「……これぐらいできないと」
「はは、二人ともお先」
「「く、くそー!」」
向かった先は山のふもとだった。この坂を登った先にグレモリー所有の別荘があるらしい。そこで十日間修行する。
よし!頑張るか!と気持ちを入れ換えていざ登ろうとすると、
「近衛はこれとこれ。イッセーはこれとこれね」
と部長が自分たちの荷物を指しながらそう言った。
「はい?どういうことですか?」
「まさか、それを背負って登れとかじゃないですよね……?」
「そのまさかよ」
「マジですか!?」
「えぇ、じゃ頑張ってね。みんな行くわよ」
『はーい』
「え、ちょ、まっ……行っちまった」
嘘だろ!?こんな大荷物持って登れねぇよ!イッセーのと比べても倍以上あるぞ!?
何を入れてきたのか分からないが、おかしいくらいに大きな荷物だった。一つなんてタンスが入ってても信じれるぞ。
「諦めろ、俺だって持つんだから」
「お前はまだいいじゃねえか!おれの見ろよ!」
「まぁまぁ、取り合えず行こうぜ」
「くそー。ま、まぁおれには馬鹿力があるからな!」
「あ、そうだ近衛。『戦車』の力を使うのは無しよ」
ズル賢い考えをしてたら部長から禁止令を出された。
「え…………」
ポン
「頑張れ」
「い、いやだー!!!」
「はあ……はあ………つ、着いた!」
「あぁ……やっと……だ」
何とか坂を登りきった。マジで何度も死を覚悟したよ。
「お疲れさま。ここでこれから十日間修行するわよ」
おれたちの前には屋敷レベルの木造の建物があった。この建物で別荘って部長の家はどれだけでかいんだよ。
「早速始めるから、各自荷物を運んで着替えてリビングに集合ね」
『はい』
や、やっと解放されたー!と、取り合えず水水。
ゴクゴク
「プハァ!生き返ったー!一時はどうなることかと」
「いやぁマジでな。よくたどり着いたよ」
「お疲れさま二人とも。僕たちも着替えて行こう」
「おう」
「了解」
着替え中
着替え終わりリビングに行くと女子部員はすでに来ていた。
「来たわね。じゃあ修行開始よ」
Lesson1 木場と剣術修行
「はっ!せいやっ!」
「よっ おっと!」
イッセーが我流で木刀を振るい木場がそれを簡単にいなす。当たり前だがイッセーに剣の心得はなく先程から、木場が何度もイッセーの木刀を叩き落としている。
「ほら、そこ!」
バシン
「っ!」
「そうじゃない。剣だけを見るんじゃなくて、相手とその周囲も見るんだよ」
「そんな簡単に言われてもな……。上手くいかねぇよ」
「まぁ最初は難しいから徐々に慣れていこう。じゃあ次は近衛くんやろうか」
「おーし!いっちょやりますか!」
木刀を構え木場の言った通りに剣とその周りを見る。格闘技を習ってるからこういうのは得意なんだよな。
木場の出方を見ていたら、消えた。
「ってそれはなしだろ!」
思わず叫ぶ。お前が本気出したら追い付けねぇよ!
「油断は禁物だよ」
後ろから声が聞こえ慌てて木刀を振るう。が当然当たらず叩き落とされる。
「酷いなお前。神速で動いたら見失うわ」
「ごめんごめん。近衛くんの実力を確かめたかったから。次からはゆっくり動くよ」
「本当だろうなー?」
「本当本当、じゃ再開しよっか」
Lesson2 朱乃先輩と魔力修行
「魔力は体全体を覆うオーラを流れるように集めるのです」
言われた通りやってみる。
「お、できた!」
「できました!」
アーシアさんもできたみたいだ。アーシアさんのはソフトボール大くらいの大きさで緑色だ。おれの方はテニスボールくらいで青色をしている。人によって魔力の色って違うんだな。
イッセーはというと、
「…………」
米粒程度の大きさの魔力が集まっていた。色は赤色。ま、まぁイッセーの魔力量だったらこれでもしょうがねぇよ。
「あらあら、アーシアちゃんはやっぱり魔力の才能がありますね。近衛くんも流石です」
朱乃先輩に褒められ頬を染めるアーシアさん。姉に褒められて照れる妹だな。
「では、その魔力を炎や水、雷に変化させます。これらはイメージでもできますが、最初は火や水を直接動かした方がいいですわね」
水の入ったペットボトルに手をかざすと、水が氷の棘となってペットボトルを突き破る。
「「「おおー」」」
「イッセーくんは引き続き魔力を集めるのを頑張りましょう。大事なのはイメージです。普段から考えていることならやりやすいかもしれませんね」
「普段から考えていること……」
朱乃先輩からアドバイスを受けて何かを考え込むイッセー。何考えてるかわかんねぇけど良い方に繋がると良いな。
Lesson3 小猫ちゃんと組み手修行
「ギブ!ギブギブ!ギブアップだって小猫ちゃん!」
「……もうですか?まだ数秒ですよ」
おれは今、小猫ちゃんに腕へ間接技をかけられていた。今朝の約束通り寝技の特訓をしている。
木場も先に相手したらしく、そこら辺に死体(死んでないけど)として転がっている。
「はぁー……はぁー……マ、マジで痛い」
「……情けないですね」
グサッ
小猫ちゃんの一言が心に刺さる。
「くそー!もう一度だ!もう一度お願いします!」
「……わかりました」
ヤケクソになって叫ぶと、今度は首を絞められる。
「うっ!ちょ、急には……対処が―――!」
やばい!と思ったが時すでに遅し。おれは意識を無くした。
「……やり過ぎました。どうしましょうか、イッセー先輩?」
「どうしようか……取り合えず放置しとくか、どうせ近衛だし」
「……そうですね。じゃあ次はイッセー先輩です」
「お、お手柔らかにお願いします」
「……はい。始める前に打撃は相手の体の中心線を狙って、的確抉り込むように打つのです」
「は、はい」
Lesson4 部長と基礎修行
何とか意識を取り戻したおれは、イッセーと共に山道を駆け上がっていた。
「ふぅーふぅー!も、もう無理!」
「こら、近衛!弱音を吐かない!ほらイッセー!気張りなさい!」
「は、はい……」
かれこれもう二十往復くらいしたぞ。しかもでっかい岩を背負って。イッセーの方は更に大きい岩を背負わされてるが。
おれはともかく『兵士』であるイッセーに体力は絶対必要だそうだ。戦場を駆け回りながら戦う場合が多いからだって。
じゃあおれいらないじゃん!て部長に言ったら、
「ついでよついで」
って言われた。その時はもう一度気を失うかと思ったわ。ショック過ぎて。
「走り込みはここまでね。次、腕立て伏せ行くわよ。あ、近衛はもう良いわよ。別荘に戻って晩ごはんの準備をしてちょうだい」
やった!部長のしごきから解放される!ついでにお願い事されたけど何でも良いや!
イッセーからは恨めしい目で見られたが気にしない気にしない。
夕食
「さあ!召し上がれ!」
テーブルの上には肉料理、魚料理、サラダ、スープなどさまざまなメニューがたくさん並べてある。
「おーすげぇな。これ全部お前が?」
「朱乃先輩やアーシアさんに手伝ってもらったのもあるけど、だいたいはそうだな」
「せっかくの料理ですし、冷める前にいただきましょう」
『いただきます』
ガツガツ モグモグ
「今朝も思ったけどやっぱり美味しいわね」
「ありがとうございます」
「これは良い使用人になれるな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
それからみんなどんどん食べ進め、あらかた料理が無くなった頃、
「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだった?」
「……俺が一番弱いです」
正直に話すイッセー。みんなもそう思っているらしい。おれとほとんど変わんないけどなぁ。
「確かにそうね。朱乃や祐斗、小猫は実践経験は豊富だから、少しやればゲームの感覚は掴めるでしょう。あなたとアーシア、近衛は実践経験は皆無に等しいけれどそれぞれの力は無視できないわ。特にイッセー、あなたの『赤龍帝の籠手』は破格の力よ」
落ち込むイッセーを励ます部長。
「相手もそれを理解しているから、最低でも逃げるだけの力はつけてもらうわ。アーシア、近衛あなたたちもよ」
「了解です」
「わかりました」
「はい」
「じゃあ難しい話はここまで。汗もかいたことでしょうし、お風呂に入りましょうか。ここは温泉だからとても良いわよ」
瞬間、おれとイッセーに電撃が走る。
「イッセー……聞いたか?」
「あぁ……温泉と」
温泉といえば露天風呂!これはもう男に生まれたならしなければならないよな!
「「覗きを!」」
小さく叫び部長たちが温泉に行くのを待つ。
そして遂に待ち焦がれた時が来た!後片付けをおれとイッセーが請け負って部長たちが温泉に向かう。
十分後
「よし!食器洗いも終わったし、いざ!」
「俺たちの桃源郷へ!」
「ははは……」
乗り気じゃない木場を連れて男子風呂に向かう。覗きといったら男子風呂からだよな。ついでに風呂にも入るから着替えを準備していく。
準備を終え服を脱ぎ、早速覗こうとする。
「うーん、どこからなら良いかな~」
「もう堂々と上から覗くか?」
「それはもう覗きとは言わないんじゃ……」
「そうだな。変に隠れるよりそうするか」
よいしょよいしょと壁を登り天辺へ辿り着く。そして下を見ると……、
「「!」」
桃源郷が広がって……るかと思ったら女子全員の視線がこっちを向いていた。
「あら?イッセーに近衛じゃない。覗きに来たの?」
「あらあら、うふふ。二人とも男の子ですね」
「え?イッセーさんに……近衛さん?」
「…………」
笑顔の部長と朱乃先輩、わけのわからないアーシアさん、半眼で睨み付けてくる小猫ちゃん。全員湯船に浸かってるから体は見えない。
「い、いや……これは……なぁ、イッセー」
「う、うん……あれだよな、近衛」
「「男の本能です!」」
ガン!ガン!
「がっ!」
「うっ!」
バッチャーン!
小猫ちゃんが桶を投げつける。避けれず顔面に直撃し鼻血を出しながら湯船へと落ちていった。
「……サイッテーです」
「やっぱりこうなるよね」
木場が何か呟いているがおれたちにはもう聞こえない。