『まず、俺の力は『疾風』『堅牢』『剛力』の三つと『九尾化』がある。これらは尾の数が増えるにつれ効果が高くなる』
「へぇー、九尾だからてっきり九つの力でもあんのかと思ったよ」
『力の数は主によって変わってくる。先祖たちにはそれくらい持ってる奴もいたぞ』
「え……?それっておれが弱いってこと?」
意外と知りたくなかった事実に軽く落ち込む。そっか~おれってやっぱりとても弱かったのね。シクシク
『そう言うわけでもない。数が多くても使いこなせず、自滅してる奴らもいた。そいつらに比べたら断然良いぞ』
こ、こいつ!メッチャいい奴だ!落ち込むおれを励ましてくれたよ!妖怪ぽいから悪いかと思ってた。
「そ、そうか!じゃあ四つは丁度いいんだな!」
『まぁ、そうなるな。話を戻すが『疾風』は攻撃力、防御力、魔力を全て速さに変える力だ。そのためスピードは速くなるが、その他がないため一撃でやられやすい』
木場みたいなスピードを得られるが『戦車』の特性が失われるのか。
『『堅牢』は攻撃力、速さ、魔力を全て防御力に変える力だ。圧倒的な防御力を手にいれほとんどの攻撃を通さない。が、攻撃力と速さを失うため短期決戦には向かない』
『戦車』の防御力を底上げする力か。これは攻撃力が強い相手向けだな。
『『剛力』は防御力、速さ、魔力を全て攻撃力に変える力だ。一撃で地面を割れるほどの腕力を得られるが、体力の消耗が激しく長期戦は無理だ。他の力も体力を消費するがな』
今度は馬鹿力を底上げね。こんなので殴ったらひとたまりもねえな。
『最後に『九尾化』についてだが、これはあまりお勧めしない』
「何でだ?名前からしてすごく強そうだが」
渋い顔をする九十九。そんな顔されると嫌な予感しかしねぇよ。
『その通り。これは他の三つの力を同時に使用できる。尾の数が二、三本ならいいが、それ以上になると理性を失いやすくなる』
「それって……」
『暴走する可能性が高くなるってことだ』
やっぱりか。父さんの家の人たちはこれを恐れていたのか。
「でも二、三本までなら大丈夫なんだよな?」
『あぁ。だがそれも使いこなせての話だ。出来なければ結果は変わらん』
そうか。それなら……。
「簡単な話だ。九本全て扱えるくらい強くなれば良いだけだ」
『……道のりは険しいぞ』
「始める前から挫けてたら、せっかくの力がもったいねぇ。それに……暴走したとしても、おれには頼もしい仲間たちがいるからな」
自信満々の顔で言い放つ。暴走する気も無いけどな。それを見て九十九は、
『く、ははははははは!』
笑いやがったよこの野郎!人の覚悟をなんだと思ってんだ!
「酷いぞ!笑うなんて!」
『いや、あんなに戦うことを怖がっていたお前からは想像できないかったからついな』
「まぁ……それは、ほらあれだよあれ」
『わかったわかった。取り合えず落ち着け。お前の覚悟は受け取った。俺もそれを全力でサポートしようではないか』
「じゃあ!」
『早速始めるぞ。時間が無いんだろう?『九尾化』は無理かもしれんが他の三つなら扱えるくらいまで鍛えてやる』
「おおー!よろしく頼むぜ!」
それから一時間半、イッセーが呼びに来るまで続けた。
「なぁ近衛。朝早くから何やってたんだ?さっき呼びに行ったとき尋常じゃない疲れ方してたけど」
朝食を食べ終わり、修行を始めるまでの休憩時間にイッセーが聞いてきた。
「あー、夜中の一時頃変な夢見たって言ったのは覚えてるか?」
「当たり前だ。その後三人で約束したんだからな」
「そのときに見たのが、おれの中にある九尾の力が目覚めたって夢だったんだよ」
「それってスゴいことじゃねぇか。で、どんな力なんだ?」
「それは見てからのお楽しみ~」
「いいだろ、教えろよ」
それでもなお聞いてくるイッセーを適当に流し外に向かう。
「そういえば、そのことって部長に喋るのか?」
「一応伝えようとは思ってる」
「そうか……」
突然暗くなるイッセー。どうしたんだ?おれ変なことでも言ったか?
イッセーの態度からいろいろなことを考えたが、どれも該当しそうなものが無く小猫ちゃんたちのとこに着いた。
「……やっと来ました」
「じゃ二人とも始めようか」
「よーし!今日も頑張りますか!」
「…………よろしく」
意気込むおれとは正反対にテンションの低い イッセー。本当にどうしたんだろう?
しかし、いつまでも気にしてはいられず、目の前のことに集中する。
「いっちょやりますか!」
『近衛、俺の力はまだ使うなよ』
新しい力が木場に通じるか試したくてウズウズしているおれに、九十九から注意が入った。
(何でだ?今朝は結構良かったじゃねえか)
『今朝は俺が外に出ていて、お前の中にほとんど力が残ってなかったからうまくいっただけだ。でも今は』
(中にいるから失敗すると)
『そういうことだ』
そう言われて何かが奥の方に引っ込んでいく感じがした。マジかよ……この調子じゃあ、九本全部扱えるになるのは遠いなぁ。まぁ、いつも通りにやるしかないか。
それから一時間やり、イッセーと交代したがあいつはまだ元気がなかった。
三日後
修行が終わり眠りについたが、何故か無性に水が飲みたくなりキッチンに行った。
「ゴクゴク……プハァ~。あー美味しい」
水も飲んだし明日も早いし寝るかな。と思い部屋に帰っている最中、二階のバルコニーに人影が見えた。
不思議に思い近づいてみると、部長とイッセーが何かを話していた。そういえばイッセーのベッド誰もいなかったな。
「―――すごいですね部長は。ゲームに勝つために寝る間も惜しんで頑張っているのに、俺は……全然ダメです」
イッセーは泣きそうな顔で声で自分の思いを話していた。
「この六日間、修行すればするほどみんなとの実力差を感じました。朱乃さん、木場、小猫ちゃんと修行すればそれぞれ俺なんかでは届かないって思いますし、アーシアは朱乃さんの教えでどんどん魔力の才能を開花させていきます。近衛だって新しい力に目覚めてどんどん強くなっていきます。それに比べて俺は……」
我慢できずにポロポロと涙を流しだしたイッセー。そうか、それで最近元気が無かったのか。
そんなイッセーを部長は優しく抱きしめる。
「自信が欲しいのね。自分は強くなれているという自信を。いいわ、それは私があげる。だから今は休みなさい。眠りにつくまで私が側にいるから……」
聖母マリアさまみたいな優しさでイッセーを慰める。やっぱり部長は最高の部長ですね。
おれは覗いてるのが恥ずかしくなって部屋に戻って寝た。
次の日
朝、部員を集めた部長は突然、模擬戦をやると言い出した。
「組み合わせはイッセーと……祐斗お願いできるかしら?」
「わかりました」
五メートルくらい離れて対峙する二人。すると部長はイッセーに対し、
「イッセー、ブーステッド・ギアを使いなさい」
「え?でも修行中は禁止なんじゃ……?」
「それは私の許可無しではってこと。いいから早くなさい。模擬戦は百二十秒、二分後に開始するわ」
「わかりました。ブーステッド・ギア!」
『Boost!!』
久々に聞いたなこの機械音。なんか地味に心地いいんだよな。
『Boost!!』
二分後
『Expiration!!』
部長から合図があり、倍加を止め力の上昇を維持する。
「その状態でイッセーは戦ってちょうだい。祐斗、準備はいいかしら?」
「はい、部長。大丈夫です」
「素手と剣どちらで戦う?イッセー」
「んー……素手でやってみます」
「よろしい。では……始め!」
合図とともに駆け出した木場。もちろん高速で。
姿が見えなくなった木場に対し、イッセーは腕をクロスし頭を守る。
ガン!
木場の剣がイッセーの腕に阻まれる。すかさず拳を振るうイッセーだが、またしても高速移動し避ける木場。
今度こそ見失ったらしく、右、左、後ろと確認するイッセー。しかし、何処にも木場はいなかった。
ということは上だ!って感じで確認するイッセー。案の定、上から剣を振り下ろそうとしている木場がいた。
ガードすることができずに脳天に一撃をもらうイッセーだったが、倒れずハイキックを放った。がまたしても避けられる。
「イッセー!魔力の一撃を打ってみなさい!自分が一番イメージしやすい形で打つの!」
部長が叫び手に魔力を集中するイッセー。しかし、出来上がったのは米粒ほどの大きさだった。
それを木場に向かって打つと、途端に大きくなり直径一メートル半くらいになった。でかくなりすぎだろ!
速いスピードで木場に迫るが、あいつは体を捻るだけでそれをかわした。
それを見て落ち込むイッセーだったが、その後すぐに驚きの顔に変わった。
イッセーが放った魔力はそのまま遠くに飛んでいき、その先にあった山にぶつかり、
ドオォォォォォォォン!
爆音と激しい土煙をあげながら山を抉った。ってどんだけの威力だよ!山の形変わったよ!?
『Reset』
機械音が鳴り響き、イッセーからプレッシャーが少なくなった。驚きと倍加の代償でその場に座り込むイッセー。
「二人ともお疲れさま。さて、感想を聞こうかしら。祐斗どうだったかしら?」
「はい、とても強かったです。実は最初の一撃で勝負を決めようと思ったんです」
イッセーが普通にガードしたあれか。まぁ端から見ても結構力がはいってたよな。
「でも決めれませんでした。次の攻撃も最初より力を込めたのですが、イッセーくんの防御力が高すぎて崩せませんでした」
そう言って手に持っていた木刀をみんなに見せる。それは真ん中あたりがすでに折れていて、繋がっているのが不思議なくらいだった。
「魔力で覆って堅くしてたんですがこの有り様です。あのままやったとしても、僕は得物を失ってただ逃げるだけしか出来ませんでした」
「ありがとう、祐斗。さてイッセー、これがあなたの実力よ。確かにブーステッド・ギアを使っていないあなたは弱いわ。でも籠手を使えばここまで強くなる。あの一撃は上級悪魔クラスよ」
形の変わった山を指差しながら言った。
「基礎を鍛えたあなたの体は、莫大に増加していく力に耐えれるだけの器を得た。現時点でも器としては相当なものだわ。前にも話した通り、基礎を鍛えればあなたは最強になる。1が2になるだけでもあなたにとっては大きな成長なのよ」
「強くなる……俺が」
「えぇ。あなたは弱くなんかない。そのことをライザーとのゲームで証明しましょう。リアス・グレモリーとその眷属悪魔どれだけ強いのか、彼らに思い知らせてやるのよ!」
『はい!』
みんなが決意を新たにする。そうだ!おれたちオカルト研究部なら誰にも負けねぇ!
その後の修行はイッセーも元気を取り戻し、順調に進んだ。