体育館に着き、バレないよう裏口から入る。
物陰に隠れながら移動し、ステージから体育館の中を見ようとすると、
「……敵の気配がします」
「部長の言った通りだな。じゃあ敵さんもこちらに気付いているな」
「グレモリーの眷属たちよ!ここに来ていることはわかっている!隠れてないで出てきなさい!」
イッセーの言う通りあちら側からお呼び出しをもらった。
「お呼ばれしたならしょうがない。行くか」
「おう」
「……はい」
ステージのカーテンから出ていくと、四人の女の子がいた。チャイナ服を着た女の子、体操服を着た双子の女の子とイッセーと勝負をしたミラと呼ばれた女の子だ。『戦車』一人に『兵士』三人の布陣だ。
「……『戦車』は私が相手します。残りの三人はお願いします」
「よし、任せろ!でも危なくなったら逃げなよ。小猫ちゃんには危ない目にあって欲しくないからさ」
「……わかりました」
心配していることを伝えると少し照れるように顔を背けた。あ、やばい鼻血が。
「ほら、鼻血拭け」
「お、サンキューイッセー。気が利くな」
敵を前にしてこんなことが出来るなんて、おれも少しは成長したかな。
「お喋りはそこまでよ。ライザーさまのためにやられてもらうわ」
「そうだそうだ~!」
「やられちまえ~!」
「……この前の屈辱晴らします」
相手も戦闘体制に入ったようだ。
「じゃいっちょやりますか、イッセー!小猫ちゃん!」
「おう、簡単にやられんなよ」
「……行きます」
こちらも構え、戦闘開始だ!
ドルンドルルン
ん?何かエンジン音が聞こえるような……ってチェーンソー!?女の子が何持ってんの!?
そう、双子の女の子の手にはチェーンソーが握られていた。
「「バラバラ~いぇーい!」」
しかも何かハイテンションだし!
「近衛、あの二人は任せた。俺はあの子との決着をつけてくる」
「え!?おい、待てよ!流石に刃物は怖いわ!」
チェーンソー二本を押し付けてくるイッセーに歯向かうが取りつく島もなかった。
「ちっしょうがねぇ!やってやるよ!」
「「解体しまーす!」」
双子が揃って飛び出してくる。一人は右斜め上から、もう一人は左斜め下から狙ってきた。
それを何とかかわし反撃を試みるが二人のコンビネーションは凄かった。
当たらないと判断したらお互いのチェーンソーを空中で交換し再び斬りかかってきた。正面からと、死角から同時に。
正直、前のおれだったらすぐにやられてた。でも今は違う!木場と小猫ちゃんのコンビ相手に何度も修行してきたんだ!これくらい!
『疾風』を使い、軽々とかわす。
「んもー!」
「何で当たらないのよ!」
双子が愚痴を溢す。いやいや!当たったら切り落とされるから!
「今度はこっちから行くぜ!」
叫び、二人に駆け出す。相手も構え直そうとするが遅い!こっちの方が断然速いわ!
勢いそのまま一人をチェーンソーごと蹴り飛ばし、もう一人を『剛力』の馬鹿力でチェーンソーを破壊し突き飛ばす。この切り替えメッチャ疲れんだよな。
「いったーい!」
「女の子を飛ばすなんてひどーい!」
「それは言っちゃダメだろ!」
余裕が出来たので息を整えるついでに、回りを見てみると、床に手をついているチャイナ服の女の子と今だ構えている小猫ちゃんを見つけた。あっちは小猫ちゃんの優勢で勝てそうだな。
イッセーはどうだろう?と思い見てみると、
バババババッ
「きゃぁぁぁぁぁ!」
女の子の服が弾け飛んで、全裸になっていた。おおー眼福ですな。って何してんのイッセー!?
「『洋服破壊』。触れた相手の持っている武器と服を破壊する技だよ」
何やら決め顔で言ってるけど全然カッコよくないぞ。名前からしてひでぇ技だな。
そこまで考えあることを思い出した。こいつはエロいわけではないが変態であったことを。女の子の服を脱がして、裸を見るのは最高!とか前に言ってたな。
イッセーの行動にその場にいた全員が固まった。
「あ、あれ?何で固まってんの?」
「……まさかイッセー先輩がそういう人だったなんて……見損ないました」
「流石にそれは無いなイッセー」
「女の子の服を弾け飛ばすなんて……!」
「最低!女の敵!」
「ケダモノ!ド変態!」
「……もうお嫁に行けません!」
それぞれの口から罵詈雑言を浴びせられて、その場に突っ伏したイッセー。今のお前には反省が必要だよ。
一応相手全員が戦闘を継続出来なくなると、
『イッセー、近衛、小猫聞こえる?朱乃の準備が出来たわ。今すぐそこから避難してちょうだい』
部長から避難命令が出た。それに従い出口まで全力で走る。
「な!?ここはあなたたちにとって大事な場所じゃないの!?何処に行くのよ!」
後ろから何か言っているが今は気にしていられない。急がないと巻き添えを食らっちまう!
おれたちが体育館から出るとタイミングよく、
パリパリ ドッガーーーン!
雷が落ち体育館が跡形もなく消し飛んだ。
「撃破」
朱乃先輩の声が聞こえる。振り向くとニコニコ笑顔で右手に電気を走らせながら飛んでいた。
『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、「戦車」一名、戦闘不能』
グレイフィアさんの声がフィールドに響いた。
それにしてもスゴい威力の雷だったな。流石は『雷の巫女』!
「よっしゃ!」
「やったな」
パン!
イッセーとハイタッチをする。奴はそのまま小猫ちゃんにも求めたが、
「……嫌です。触れないでください」
避けられた。そりゃそうだ、さっきあんなことしたんだからな。
『みんな、聞こえる?朱乃が最高の一撃を派手に決めたわ。これで最初の作戦は成功ね』
通信機から部長の嬉しそうな声が聞こえる。
そう、これは作戦なのだ。重要拠点である体育館を、敵を巻き込んで破壊する。
おれたちが裏から侵入したのは、相手を誘き出すため。つまり、餌ってこと。そのまま朱乃先輩の準備が整うまで相手を引き付ける。で後はさっきの通りだ。
『あの雷は一回打つと二回目を打つのに時間がかかるわ。だから連発は無理。朱乃の魔力が回復次第、次の作戦に移るわ。各自それまでお願い』
「はい!」
よし、次は運動場に行って木場と合流だ!急ごう!
次の作戦のため駆け出そうとする、が、おれは嫌な予感がして小猫ちゃんを突き飛ばす。
「……!な、何するん―――」
ドッオォォォン!
小猫ちゃんが何か言ったが聞こえなかった。
おれの足元、つまりさっきまで小猫ちゃんがいたところの地面が爆発した。
「近衛!」
「……先輩!」
イッセーと小猫ちゃんが駆け寄ってくる。その後ろから、
「撃破」
女の声が聞こえた。見てみると、翼を広げて浮遊する人影が一つ。魔導士の格好をした女性。確か……あいつは『女王』だったはず。いきなり最強の下僕かよ。
「ふふふ。獲物を狩るときは、それが何かをやり遂げたときが一番隙だらけとなって狩りやすい、まぁ狙いは違ったけど。こちらは多少の駒を『犠牲』してもそちらを一つ狩れば十分。それに万が一、私たちを倒してもライザーさまには勝てないもの。だから、潔く私に―――」
「誰が狩られたって?」
奴の言葉を遮り立ち上がる。
「近衛!」
「……近衛先輩!」
再び心配する二人に向かって、
「大丈夫だ……。爆発の前に、神器で少し相殺したから……平気さ。それより、小猫ちゃんは?」
「……私は近衛先輩のおかげで何とも無いです」
「そっか、それは良かった。……小猫ちゃんに何かあったらおれは、あいつを殺してるよ」
「……近衛先輩」
恥ずかしがる小猫ちゃん。やっぱ可愛いな。こんなときだけど好きな子のこういう姿は最高だね!
「イッセー、小猫ちゃんを連れて木場のとこに行け。おれはあいつを倒してから行く」
「……わかった。絶対後から来いよ!」
走り出すイッセーと小猫ちゃん。おれは奴に向き直る。
「……あなたの神器の能力は知っているけど、それでも私の爆発は強力よ。少し相殺したくらいで威力は変わらないわ」
懇切丁寧に説明してくれる相手の『女王』。そんなことおれが一番理解してるよ。
「あぁ、おかげで全身大火傷で痛いさ」
「ならなんで彼らに嘘を?」
「そんなの簡単だろ。……親友と好きな子の前で無様な姿を見せられっか!」
「うふふ、カッコいいですわね」
近くから朱乃先輩の声が聞こえた。さっき来なかったからてっきり何処かに行ったのかと思ってたよ。
「私もお手伝いいたしますわ。今の状態だったら確実に負けてしまいますもの」
「……ありがとうございます。でも朱乃先輩はおれたち下僕の中で最強なんで、こんなとこで失うわけにはいきません。なんでここはおれ一人に任せてください」
「わかりましたわ」
「随分舐めたことを言ってくるわね。その体で何が出来るのかしら?」
超不機嫌なご様子な『女王』さん。
「出来るさ。お前を倒すくらいならな」
そう言って、あの力を発動する。
『やる気か?近衛。今の状態だと暴走する可能性が高いぞ。あの修行で扱えるようにはなったとはいえ』
そうは言っても相手は最強の下僕だ。出し惜しみなんてしてられねぇよ!
『ふ、そうだな。好きにしな』
ありがとう九十九。お前の力、使わせてもらうぜ!
おれの体が光出す。それは徐々に膨らんでいき、体全体を包み込んだ。
光が収まると、おれの体には一対の狐の耳と一本の尻尾が生えていた。
「近衛くん……その姿はまさか」
「はい。これが前に話した『九尾化』です。ライザーの『女王』!時間がねぇから最初から全力だ!」
空中にいる奴に向かってジャンプする。
「なっ!?」
あまりのスピードに驚愕するライザーの『女王』。当たり前だ!おれは今『疾風』を使ってるからな!そして今度は『剛力』だ!
「おい、しっかりガードしてくれよな。この姿での戦闘は初めてだから、手加減出来ねぇんだよ」
『疾風』の勢いを利用し『剛力』の馬鹿力に乗せ、相手の上から蹴りを叩き込む。
ドッオォォォン!
またしても地面が抉れた。今度はおれのせいだけどな。
「くっ!」
即座に立ち上がるライザーの『女王』。流石は最強の駒だ。やっぱそうこなくちゃな!
「まだまだ行くぜ!」
体制を立て直した奴を殴りまくる。『戦車』の防御力と持っている杖を駆使されて防がれる。しかし、こっちの方が攻撃力も速さも上だから徐々に押していき、遂に拳が届いた。
「がはっ!」
腹を思いっきり殴り、近くにあった木に叩きつける。
「はぁ……はぁ。終わったか?」
やべぇな。『九尾化』の代償とダメージでもうほとんど力が入らねぇ。
もう立たないでくれと願うが、それとは反対に奴は立ち上がった。
「……流石は九尾の力だわ。正直、二度と戦いたくないわね」
じゃあそのままやれろよ!そう思うのはおかしいでしょうか?
「でも、ライザーさまのためこんなとこでやられるわけにはいかないから、これを使わせてもらうわ」
そう言って懐から小さな瓶を取り出す。中には透明な液体が入っている。
「それはまさか!」
瓶の正体に気づいた朱乃先輩が大声を出す。そんなにやばい物なのか?あれ。
「そうよ『雷の巫女』。これはフェニックスの涙。どんな傷も一瞬で治すことができるわ。しかも失われた魔力も」
「んな!?」
そんなアイテムがあんのか!?卑怯じゃねえか!
飲むのを止めようとするが、足が限界に達しその場に崩れ落ちた。
ライザーの『女王』はフェニックスの涙を飲んでしまった。すると、今まで傷だらけだった奴の体が元の状態に戻る。
「ふぅー。さっきは散々痛め付けたくれてありがとう。これはほんのお礼よ」
ドン!
「ぐはっ!」
今度はおれが吹き飛んだ。『九尾化』も回復した奴の爆発に耐えきれず解け、体はボロボロになった。
「近衛くん!」
朱乃先輩が抱き抱えてくれる。はは、これはこれでいいな。
「……すみません。……あんなに大見得きったのに……結局倒せませんでした」
「いいんです。あなたは精一杯頑張りました。きっと私も一人だったら近衛くんと同じ様になってたでしょう」
「……ありがとう……ございます。朱乃先輩……後は、おねがい……します」
「わかりました。あの方は私が倒します。だから、近衛くんはちゃんと休んでください」
朱乃先輩の腕と優しい笑顔に抱かれながら、おれは消えていった。