ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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第10話

『リアス・グレモリーさまの「戦車」一名、リタイア』

 

 

 

「な!?……嘘だろ?」

 

俺―兵藤一誠は今のアナウンスに驚いた。うちの『戦車』は二人。小猫ちゃんは今敵と戦っている。ということは……。

 

「あのバカ……!絶対後から来いって言ったのに!」

 

近衛がライザーの『女王』にやられたのだ。あいつは平気と言っていたが、やっぱりあの爆発で致命傷を受けていたのだろう。

 

そんな状態で最強の下僕と戦えばやられるに決まっている。それなのにあいつは、俺たちを先に行かせるために嘘までついて……。

 

「あら?あなたたちのお仲間が一人やられたみたいですわね」

 

相手の『僧侶』、ライザーの妹と呼ばれた、レイヴェル・フェニックスがそんなことを言った。それに同調するようにシーリスと呼ばれた『騎士』が、

 

「バカめが。手負いの状態で我らの『女王』と戦うからそうなるのだ。そちらの『女王』にお願いして、貴様らと来ていればもう少しはこの場にいられたものを」

 

「……お前今、近衛をバカにしたか?」

 

奴の言葉に若干キレながら問いかける。

 

「当たり前だろう。『戦車』の分際で『女王』に挑むなど、バカの真骨頂だ」

 

「黙れよ。……あいつはな、人一倍戦うことを怖がってんだ。昔、自分のせいで親父さんを目の前で失って、その時から怖がっている。でも……あいつは大切な人たちを守るために力を求め、自分の意思で戦いに向かった」

 

怒りを言葉にし、怒気の籠った目で奴を見据え、

 

「そんな近衛をバカにする奴は俺が許さねぇ」

 

「……ふん。貴様がそいつをどう思うのは勝手だ。しかし、戦いは勝たねば意味がない」

 

「そうですわ。そこのカーラマインの様に戦いを楽しむのも良いですけど、それで負けてしまっては意味がないですもの」

 

木場と戦っているもう一人の『騎士』を指差しながら、レイヴェル・フェニックスは釘を指した。

 

「ですから、私たちはあなたを全員で倒しますわ。ニィ、リィ」

 

「にゃ」

 

「にゃにゃ」

 

呼ばれて前に出たのは、頭に獣耳を生やした二人の女の子。確か二人とも『兵士』だったはず。

 

「彼女たちは獣人の女戦士。体術は大したものですわよ」

 

その言葉通り、二人は視界から消えた。直後、腹部と顔面に拳を打ち込まれる。

 

「がっ!」

 

くそ、木場ほどでは無いが速いじゃねぇか!このまま食らうのは得策じゃねぇな。

 

「ブーステッド・ギア!」

 

『Boost!!』

 

力の倍増が始まる。だが、敵の攻撃は激しくなる一方だ。

 

「ニィ!リィ!ブーステッド・ギアは十秒ずつ能力が倍になっていきますわ!『兵士』のあなたたちでは三回倍加したら手に終えなくなります!それまでに倒しなさい!それと手に触れてはなりませんわ!その方は見た目によらず、手で触れた物の衣服を弾け飛ばす技を持っているようですわ!」

 

「そんな!」

 

「以外とカッコいいのに!」

 

「……褒め言葉として受け取っておこう」

 

ってこんなことしてらんねぇ。倍増中は下手に攻撃出来ないからにげねぇと!

 

ドガッ!

 

「くっ!」

 

足にローキックを打ち込みやがった。逃がさねぇつもりだな?

 

それからも足ばっかりを狙われ、ついに動かなくなっちまった。

 

「イッセーくん!」

 

木場がこちらに来ようとするが、相手がそれをさせない。

 

「カーラマイン!あと少し耐えなさい!もう少しでこのドラゴン使いを倒せますわ!」

 

楽しそうに笑うライザーの妹。戦いは下僕に任せてお前は高みの見物か。腹立たしいな。

 

とはいっても、ダメージを食らいすぎたな……。頭がボーッとしてきた……このまま意識を失いそうだ。

 

刹那、フィールド全体を震わせる震動が伝わった。震源地とおぼしき所を見ると、部長とライザーがやり合っていた。互いに紅と炎の魔力をぶつけながら。

 

しかし、ライザーの方は無傷で部長は制服が所々破れていた。

 

その瞬間、俺の頭に負けるという一言が過った。

 

……負ける?俺たちが、部長が?

 

そうなったら、部長は……あいつに……あいつにッ!。

 

プツン

 

俺の中で何かが切れる音がした。すると、体の底から力が沸き上がる。

 

「そんなことは、絶対にさせねぇ!」

 

気力を振り絞り立ち上がる。当然、体はボロボロで戦うことなんて無理だろう。それでも俺は立ち上がる。

 

あの人が好きだから?それもあるだろう。惚れたら当然だ。

 

けど、俺はそれ以上にあの人を守りたかった。

 

あの人は紅の髪を揺らしながら威風堂々していなければいけない。

 

それがあの人だ。俺が憧れた部長だ。

 

部長が奴を嫌だと言った。俺に戦えと言った。

 

それなら俺は…あいつに戦うしかないよな。

 

なぁ俺の中のドラゴン、赤い龍の帝王よ。聞こえてんなら力を貸してくれ。

 

「俺の想いに応えてくれ!ブーステッド・ギア!」

 

『Dragon booster!!』

 

左腕の籠手が赤く光輝く。でもまだ足りない。

 

「もっとだ!あの時はアーシアだった!今度は部長だ!俺の想いに応えろ!ブーステッド・ギアァァァ!」

 

『Dragon booster second Liberation!!』

 

今までに無い音声が響き渡りさらに光輝く『赤龍帝の籠手』。その直後、頭の中に新しい力の使い方が流れ込んでくる。

 

そうか。これは今の状況に最高の『贈り物』だな。

 

「木場!お前の神器を解放してくれ!」

 

突然の俺の叫びに驚く木場だが、了解して頷いてくれた。

 

「『魔剣創造』!」

 

地面から数多の魔剣が突き出す。俺は新しい力を発動する。

 

「ブーステッド・ギア!第二の力!」

 

地面を殴る。目的は木場の『魔剣創造』。

 

「『赤龍帝からの贈り物』!」

 

『Transfer!!』

 

地面から俺の力が伝わり、その面積を格段に広げる魔剣たち。辺り一面魔剣の海と化した。それらは全て木場の創った魔剣たち。

 

―――第二の力、『赤龍帝からの贈り物』。これは籠手で高めた力を第三者に譲渡するもの。譲渡されたものは爆発的に力が上昇する。これのおかげで木場の神器の能力に籠手の力を譲渡できた。

 

「……くっ!」

 

「これがドラゴンの力か……」

 

木場の魔剣により体を貫かれ苦悶の声をあげるライザーの下僕たち。

 

その全員の体が光だし、フィールドから消えていく。

 

『ライザー・フェニックスさまの『兵士』二名、『騎士』二名、『僧侶』一名、『戦車』一名、リタイア』

 

グレイフィアさんのアナウンスが響き、その場にいた敵の敗北を告げる。

 

「よし!」

 

「やったねイッセーくん!」

 

「……スゴいです」

 

木場と小猫ちゃんが駆け寄ってくる。すると、

 

『ライザー・フェニックスさまの『女王』一名、リタイア』

 

「「「え?」」」

 

相手の『女王』の退場を告げるアナウンスが響いた。誰が倒したんだろうと考えていると、

 

「あらあら、うふふ。みなさん揃ってボロボロですこと」

 

「朱乃さん!」

 

空から朱乃さんが降りてきた。全身ボロボロで着ている巫女服もズタズタだ。それでも相手の『女王』を倒してきたようだ。

 

「朱乃さん流石ですね!あの『女王』を倒すなんて」

 

「いえ、私一人ではきっと倒せませんでした。近衛くんが頑張ってくれたおかげです」

 

「じゃあやっぱり近衛は……」

 

「……はい」

 

そうか近衛はやられたのか……。ここでクヨクヨしてても、あいつは帰ってこない。だったら前に突き進むだけだ!

 

「じゃあみんな!部長のもとに行こう!」

 

『はい!』

 

新校舎に向かって駆け出す。部長今いきます!待っててください!

 

 

 

 

新校舎に入り、俺はプロモーションをする。

 

「プロモーション『女王』!」

 

体の奥から力が流れ込んでくる感じがする。再度、走り出そうとするが、

 

ズザーッ!

 

転けてしまった。もう足が限界なんだろう。

 

「イッセーくん!」

 

みんなが心配して駆け寄る。

 

「だ……大丈夫です。部長のもとに……行きましょう」

 

みんなを促して先を進む。何度も転びながら。

 

屋上の扉が見え、そのまま突き破り飛び出る。

 

「部長!」

 

ライザーと対峙している部長を見つけ叫ぶ。

 

「イッセー!みんな!」

 

「すみません、遅くなって」

 

「いえ、いいのよ。来てくれただけでも心強いわ。それより近衛は……」

 

「はい、敵の『女王』にやられました」

 

「そう……。じゃあライザーをさっさと倒してお見舞いに行きましょう!」

 

『はい!』

 

「そういうことだからライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

俺たちは全員ライザーに向き直る。しかし、奴は俺たちが来ても余裕の態度を崩さなかった。

 

「いやー素晴らしい。俺の下僕たちを倒してここまで来るなんて。初めてにしては上出来じゃないか」

 

追い詰められているのに俺たちを褒め称えるライザー。何か不気味だ。

 

「でもな……お前らの相手は俺だ。こんな状況を想定していなかったと思うか?」

 

パチン

 

奴がそう言って指を鳴らすと、俺たちの足元が光出す。

 

「これは!」

 

その正体に気付き、部長とアーシアを突き飛ばす。

 

「イッセー!何を―――!」

 

ゴオォォォォォォ!

 

部長たちを突き飛ばしたあとすぐ、俺たちの足元から火柱が燃え上がった。

 

それは手負いの俺たちを戦闘不能に落とすには十分過ぎるほどの威力を持っていた。

 

火柱が収まったあとフィールドに、

 

『リアス・グレモリーさまの「女王」一名、「騎士」一名、「戦車」一名、リタイア』

 

朱乃さんたちの退場を告げるアナウンスが響いた。

 

「朱乃!祐斗!小猫!イッセー!」

 

「俺は……大丈夫です。でも……他のみんなは……」

 

アーシアが来て傷を癒してくれる。すごいな。これほどの傷も癒せるなんて流石はアーシアだ。

 

「どうだ?俺の炎の力は。強力だろ?」

 

ライザーが勝ち誇った笑みを浮かべる。そしてアーシアに向けて怪しげな光を飛ばした。

 

「アーシア!」

 

アーシアはその場に倒れ込む。体を揺するが起きる気配がない。

 

「悪いな。彼女の回復力は異常だ。この戦いを長引かせないために少し寝かせてもらったよ」

 

「……朱乃……祐斗……小猫……」

 

目の前で大切な下僕を失った部長の目は虚ろだった。

 

「さぁ、リアス。君は四人の下僕を失った。残るそこのドラゴン使いももう戦えない。チェックメイトだ。……リザインするんだ」

 

今までに無い本気の目付きでライザーが部長を睨む。それに対して部長は、今すぐにでも負けを認めそうだ。……そんなことはさせねぇ!

 

「部長!俺はまだ戦えます!拳が握れます!体だって回復しました!ですから!……立ち上がってください!みんなの頑張りを無駄にするんですか!?」

 

「!……そうね、そうよね!朱乃たちのおかげでここまでこれたんですもの!下僕が諦めないのに主である私が諦めるわけにはいかない!」

 

再び部長の目に光が戻り立ち上がる。そうだ、それこそ部長の姿だ。弱気なんて部長には似合わない。

 

「イッセー、一緒にライザーを倒すわよ!」

 

「はい!」

 

覚悟を決め、ライザーに向かって駆け出そうとするが、聞いてはならない音が響いた。

 

『Burst』

 

瞬間、全身から力が抜け、一瞬体の全機能が停止した。意識が飛びそうになる―――それだけはダメだ!

 

何とか意識だけは繋げるが、四つん這いになり口から血反吐を吐いた。

 

「イッセー!」

 

「大丈夫…です……部長。ちょっと……転んだだけです。……まだ戦えますから」

 

再びライザーに向かう。奴はそれを受け入れ何発も殴ってきた。

 

最後、顔面に飛んでくるパンチはスローモーションに見え、そこで俺の意識は途切れた。

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