「うーん、これはどうかな?」
「……もう少し大人びた感じでもいいと思います」
おれは今、小猫ちゃんとデパートに来ている。部長の婚約パーティの後に頼んだ買い物の付き添いがこれだ。
実はあと少しで遥香の誕生日なんだ。それで誕生日プレゼントを贈るから選ぶのを手伝ってもらってる。という名目の一方的なデートだけどな。
「じゃあ……こんな感じ?」
「……はい、そんな感じ」
今は服屋に来ていて、これからぬいぐるみショップとアクセサリーショップにもいく予定。
「よし、良さそうな服も見つけれたし、時間も丁度いいから昼食にする?おごるよ」
「……いえ、そういうわけには」
「いいからいいから。こういう時は黙って男に甘えるもんだよ、それに女の子にご飯もおごらなかったって遥香にバレたら何て言われることやら」
「……そうですか。それではお言葉に甘えて」
「よし!じゃあ早速レッツゴー!」
良かったー。これで何とか木場先生からご教授してもらったことが無駄にならなくて済むよ。
ちなみに木場先生からは『女の子と出掛けた時は、さりげなくお金を払うのもいいけど、先に了承させてから払わないと機嫌を損ねる時があるからね』と承った。
そう言えば木場って、女子にモテるくせしてほとんど出掛けたこと無いんだって。出掛けたとしても部長と朱乃先輩くらいだそうだ。それも荷物持ち。それなのに何でこんな知識があるんだよって話だよな。
まぁそれは置いといて、案の定小猫ちゃんはとてつもない量のご飯を食べた。それを見越してバイキングにしといて良かったー!
「腹ごしらえも済んだし、食後の散歩がてら店を見に行きますか」
「……はい」
それから二時間、小猫ちゃんの意見を参考にしながらさまざまな店を回り、何とかプレゼントを決めることが出来た。
「いやー今日は本当にありがとう。小猫ちゃんのおかげで良いプレゼントが買えたよ」
「……それは良かったです。私も今日一日楽しかったです」
そう言って小猫ちゃんは小さく本当に小さく笑顔を見せてくれた。
「ブバッ!」
当然の如く鼻血を出すおれ。ここ最近よく鼻血を出すな。そろそろ出血多量で搬送か?
「……先輩、いかがわしいです」
半眼で睨んでくる小猫ちゃん。
「いやいや!そういうわけじゃないから!……あ、そうだこれ、小猫ちゃんにプレゼント」
買い物した袋の中から小さな紙袋を取り出す。
「……あの、これは?」
「今日買い物に付き合ってくれたお礼。さっきの店でジーッと見てたから欲しいのかなって思ったんだけど違った?」
「……いえ、そうではないですけど。でも、今日は」
「うん、あの時助けたお礼だけど、おれは小猫ちゃんと休日にいれるだけで十分なんだよ。それなのに買い物にまで付き合ってもらったから何かお礼がしたくてね」
ちょっと恥ずかしいから小猫ちゃんから顔を背けながら言う。だから小猫ちゃんの口元が緩んでいたことに気づかなかった。
「……そうですか。……ありがとうございます。大切にします」
「うん。じゃあ帰りますか」
「……はい」
こうして小猫ちゃんとの一方的なデートは無事成功した。
後日
「ほい、遥香。プレゼント」
「お?珍しいね。お兄ちゃんが誕生日プレゼントくれるなんて。どういう風の吹き回し?」
「どうしたもこうしたもねぇよ。ただ気が向いただけだ」
「のわりにはしっかりと女の子向けのプレゼントですけど?……もしかして、小猫さんと一緒に選んだ?」
「なっ!バッ、違ぇよ!そんなわけあるか!」
「だそうですよ、小猫さん」
「え?」
遥香の視線を辿り後ろを見てみると、いるはずの無い小猫ちゃんが立っていた。
「……そうですか、近衛先輩にとってあれは隠したい事なんですね」
いつも通りの無表情なのだがいつもと違って何故か怖い顔をしている。
「いや、それは……」
「……あんなことまでしてくれたのに。全部嘘にしたいんですね?」
「え!?お兄ちゃん女の子にあんなことしたの!?見損なった!」
「プレゼント贈っただけだよ!変なことなんてしてねぇよ!」
「……だけ何ですね。近衛先輩にとってあれはそれだけだったんですね」
「サイッテー。女の子にプレゼント贈ったのにそれだけだなんて」
もう何を言っても悪い方にしか転ばないだろうという状況におれは、
「もう嫌だーーー!」
叫ぶしかなかった。
後から、何で小猫ちゃんが来ていたのかを聞いたら、
「……遥香ちゃんに誕生日パーティーやるから来ないかって誘われたんで」
「お母さんも帰り遅いし、お兄ちゃんへのサプライズにもなるから良いかなって」
「「ねー」」
ねー、じゃねぇよ!お前らいつの間にそんなに仲良くなってんだ!?そのせいで散々な目にあったじゃねえか!って思ったけど口にはしなかった。したらどうなっていたことやら。ガクガクブルブル
まぁ、遥香のおかげで楽しい誕生日パーティーになったから良いけどさ。この後、母さんが帰ってきて一騒ぎあったのは内緒だ。