第1話
「おっはよー!」
「「死ねェェェェェ!」」
「うがっ!」
朝、登校し教室に入ると、罵倒とともに顔を殴られた。さっきまでチョー嬉しいことがあったから油断してて廊下まで吹っ飛んだ。
「いってぇな……。何すんだ!松田!元浜!」
「うるせぇ!黙ってろ!」
「お前だけは裏切らないと思ってたのに……!」
殴った張本人たちを睨む。それに負けじと睨み返される。
「まぁまぁ、二人とも落ち着―――」
「「お前も黙ってろ!」」
ズドン!
二人をなだめようとしたイッセーの顔に松田の左、元浜の右ストレートがそれぞれ綺麗に決まった。おー、すげぇ。パチパチ
「……でどうしたんだ?おれ、何かしたか?」
「何かしたかだと……?とぼける気か!」
「だから何をだよ!」
「学園のマスコットアイドルである塔城小猫ちゃんと登校してきたことだよ!」
「貴様はそれで学園全体を敵に回したぞ」
松田の言う通り、心なしか周りからの視線がいつもより冷たいような……。いやいや!そんなわけない!
「「さあ、教えろ」」
「いや……えと……それは」
遡ること三十分
ピンポーン
朝、珍しく家のチャイムが鳴った。
「ん?誰だ?……おーい遥香ー、今手が離せないから代わりに出てくれー」
「はーい」
朝食の食器を洗っていたため、居間でテレビを見ていたであろう遥香にお願いした。
「ふんふんふーん」
食器を洗い終わり、鼻歌混じりでまな板を片付けていたら、
「お兄ちゃん!」
「うおっ!」
ガン!
「いでぇ!」
突然の大声にビックリしてまな板を足に落とした。
「……何だよ、急に大声出しやがって。おかげでまな板落として痛いじゃねえか」
「お客さんだよ。お兄ちゃんに」
「?誰だ?こんな朝っぱら間から」
不信に思いながらもお客ということなので玄関に向かうとそこには、
「……おはようございます、近衛先輩」
「おーおはよう小猫ちゃん……小猫ちゃん!?ど、どうしたの?」
小猫ちゃんがいた。もちろん学生服で。
「……先輩と一緒に学校に行こうと思ったんですが……駄目ですか?」
上目遣いで聞いてくる小猫ちゃん。そんなことされたら断れるわけ無いじゃないか!断れる奴出てこい!まぁ初めから断るつもりなんてこれっぽっちも無いけどな!
「全然!もちろんオッケーだよ!」
バカみたいなテンションで返した。今思い返しても恥ずかしい……。
「じゃあ、準備してくるから待ってて」
「……はい」
いつもの三倍の速度で準備して戻ってくる。
「よし!行こっか」
「……レッツゴーです」
で現在にいたる。この事を正直に話したものならば、おれはすぐさまリンチの刑に処させるだろう。
「安心しろ近衛。すべて聞こえてたから」
「え?」
イッセーの声に下を向いてた顔をあげると、いつの間にか教室の真ん中にいてクラスの男子に囲まれてた。しかもご丁寧に机まで下げた上に体まで縄で縛られてる。
「この状況なに?」
すると、周りの男子どもが、
「女の子に朝から……」
「迎えに来てもらうなんて……」
「しかもそれが学園のアイドル……」
「塔城さんだなんて……」
『死ね!!!!』
本日二度目の罵倒。しかも女子からも、
「そんな……」
「小猫ちゃんが近衛に……?」
「イッセー×近衛は鉄板だと思ったのに……」
『不潔!』
わけんかんねぇ罵倒をされた。てか最後の奴!おれたちはホモじゃねぇからな!
「ま、待て!話せばきっと―――」
「そういえば、こいつこの前小猫ちゃんとデパートに出掛けてたよ」
『な!?何だとォォォォォ!!!』
火に油を注ぐイッセー。何してんだ!ていうか……
「何故それをお前が知っている!」
「ふふふー、俺には密告してくれる者がいるからな」
「密告?……あいつか!」
この事実を知っていたのは三人。当の本人たちであるおれと小猫ちゃん。そしてもう一人、我が妹遥香である。
中学の時、初めてイッセーが家に来たときから、何故か知らんが仲の良い二人。今でもたまに連絡取り合ってるみたいだ。その時に面白いからっていう理由で教えたんだろ。
「俺に教えれば面白くなるかもって言ってたぞ」
「やっぱりかぁぁぁぁ!」
「それより、周りを気にした方が良いぞ」
「え?」
イッセーの忠告に周りを見てみると、視線だけで人を殺せるんじゃないかってくらいの奴がごろごろ。そして松田の一声で、
「やれ」
『うおおおぉぉぉぉぉおお!!』
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
「……どうしてこうなってる」
おれは今朝のリンチで気を失った。そして今目が覚めたんだが何故か木に吊るされてる。授業は!?先生たち何してんの!?
「今朝も言われたろ?学園全体を敵に回したって」
「それって生徒だけじゃなくて先生もなの!?……この学園怖ぇ」ガクガクブルブル
「それで、俺が部長に頼んでお前をここに吊るしても欠席扱いになら無いようにしたんだ」
「それは嬉しいけど……出来れば保健室に連れてってくれたら良かったのに」
「そうしたかったが周りが、吊るせ吊るせ!ってうるさかったから仕方なく」
「……あいつら後で覚えてやがれ」
クラスの男子どもに復讐を決意する。それはともかく何かすでに夕日が見えるんですけど。
「今何時?」
「午後四時」
「え!?……おれ一日中気絶してたの?」
「ああ。たまにボコられたり」
「絶対許さねぇ……!」
「まぁまぁ。あ、そうだ。今日の部活の定例会議、俺の家でやることになった」
「ん?何で……あぁそういえば今日あれか」
「おう、あれだ」
あれとは、年に一度の旧校舎の大掃除だ。表向きには業者に頼んでやることになっているが、実際は使い魔たちにお願いしている。ちなみにおれは九十九にもやらせている。
……そのせいで今朝は散々な目にあったがな。
「そういうことだから行くぞ」
「おう!…………ほどいてくれ」
イッセーの家
「で、こっちが小学生のときのイッセーなのよー」
「あらあら、全裸で海に」
「ちょっと朱乃さん!って母さんも見せんなよ!」
おれたちが到着すると、すでに他の部員たちは集まっていた。そして何故かイッセーのお母さんも。
不信に思ってたイッセーだが、すぐにその理由に気づき顔を赤らめる。イッセーのお母さんが部員にアルバムを見せていた。当然イッセーの。
それを部員たちは興味深そうに見ていた。特にこの二人は。
「……幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー……」
「私もなんとなく、部員さんの気持ちがわかります!」
「そう、アーシアあなたもわかるのね。嬉しいわ!」
何か二人だけの世界に入ってるし……。
「はぁー。……おい近衛、何してる?」
お母さんの説得を諦めたのか戻ってきたイッセーが聞いてきた。
「何って、アルバム見てんだけど?お前の」
「返せ!お前だけには見させねぇ!」
「わっ!?何すんだ!黙って見せろ!てか木場は良いのかよ!」
「うるせぇ!」
「何を!」
アルバムを取り合い取っ組み合いを始める。しかし狭い部屋なので当然、
「静かにしなさい!イッセー!近衛!今私たちは大事なことをしてるんだから!」
部長に怒られた。
「「……はい、静かにします」」
「ははは」
その光景を見て木場が笑ってやがる。このやろう!お前も怒られやがれ!
しかし、アルバムに視線を戻すと表情が変わった。それは予想外のものを見つけたような感じだ。
「……イッセーくん、これに見覚えは?」
「どれどれ?」
おれも気になりイッセーと一緒に見に行く。木場が指差していたのは一枚の写真だ。というよりもそれに写っている剣を指差している。
「いやー何分小さかったからな。覚えてないな」
そりゃそうだ。見た感じでも三、四歳くらいだろこれ。
「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて……」
その声のトーンはいつもと違っているし、目にはどす黒いものが浮かんでいた。
「これは聖剣だよ」
この一言から今回の事件は始まった。いや、すでに始まっていたのかもしれない……。