ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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第3話

パンッ!

 

部室に乾いた音が響く。部長が木場を叩いたのだ。

 

球技大会が終わった後、おれたちは反省会ということで部室に集まった。

 

部活対抗戦でおれたちはチーム一丸で戦った。しかし木場だけは非協力的で何度も部長に怒られていた。そして今も。

 

「どう?少しは目が冷めたかしら」

 

「…………」

 

部長が厳しく言うが木場は反応を示さない。

 

「どうしたの祐斗。あなたらしく無いわよ?」

 

「すみません、ちょっと調子が悪かっただけです。もういいですか?球技大会も終わって練習もしなくていいんで、夜の部活まで休ませてもらいます。今回は僕が一方的に悪いです。すみません」

 

「おい待てよ、木場!」

 

そう言って部室を出ていく木場をイッセーが追いかける。

 

「はぁ」

 

「部長、あいつどうしたんですか?イッセーの家で一枚の写真を見てから変わったんですけど」

 

ため息をついているに部長に質問する。

 

「その写真には何が写っていたの?」

 

「小さい頃のイッセーとその当時のイッセーと同じくらいの男の子、その後ろに木場が言うには『聖剣』が写っていました」

 

「―――ッ。そう、やっぱりあの子はまだ恨んでいるのね」

 

「木場と聖剣の間にどんな事があったんですか?」

 

前々から疑問に思っていたことを部長にぶつける。

 

「そうね、あなたたちも祐斗の仲間ですものね。知っていて損はないでしょう。わかったわ、イッセーには後から伝えるとしてあなたたちに教えるわ」

 

おれとアーシアさんは自然と佇まいを直していた。

 

「『聖剣計画』―――昔、秘密裏に行われていた計画よ」

 

「秘密裏に……」

 

名前からして怪しい計画だな。

 

「この計画は人工的に聖剣に適応できる人間を造ることが目的だったの。聖剣は悪魔にとって最大限の脅威、だけどその反面極端に適応者が少ないの。短くても十数年、長ければ百年以上現れない例もあったわ」

 

そ、そんなにか。そりゃあ人工的に造りたくもなるな。

 

「聖剣を扱うには因子と呼ばれるものが必要になるの。祐斗にはそれがあった。だから被験者に選ばれたわ」

 

「てことは木場は聖剣を扱えるってことですか?」

 

おれの言葉に首を振る部長。

 

「いえ、扱えないわ。祐斗と一緒に集められた子たち全員適応出来なかったわ。彼らは家族とも離ればなれにされ厳しい訓練やキツイ実験にも耐えたわ。それなのに教会側が下した結果は『処分』」

 

『処分』、いやな響きだな。

 

「彼らはただ聖剣に適応出来なかったというだけで殺されたのよ」

 

「そんな!主に仕える者がそのようなことをしていいはずがありません」

 

信じられないという風に叫ぶアーシアさん。おれもそう思いたい。

 

「そうねアーシア、でもこれは事実よ。私が祐斗を見つけたときにはすでに瀕死だったわ。それでもあの子は強烈な復讐を誓っていたわ。生まれたときから聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔としての生で有意義に使ってもらいたかった。祐斗の持つ剣の才能は、聖剣にこだわるにはもったいないものね」

 

な、なんて優しいんだ部長は!でも木場は部長の思惑とは反対に、

 

「聖剣を、それに関わる全ての人間を恨んでいるんですね」

 

「ええ、特に聖剣エクスカリバーを。あの子は一緒に育った子供たちのことも忘れてはいないのよ」

 

部室に重苦しい空気が流れる。それを破るように部長が、

 

「とにかく今は待ちましょう。ぶり返した聖剣への憎悪で頭がいっぱいでしょうから。それでいつもの祐斗に戻ってくれればいいのだけれど」

 

「はい」

 

木場のやつにも壮絶な過去があったんだな。おれも父さんを殺されたに等しいから気持ちはわかる。おれに母さんや遥香、健仁がいたように、木場にも部長たちがいたにも関わらず復讐を心に誓うなんて……根はどれだけ深いのだろうか。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あ、お兄ちゃんおかえり!小猫さんは?」

 

家に入ると遥香が聞いてくる。前に遥香の誕生日パーティーで来たとき以来、とても仲良くなった様子で毎日と言っていいほど聞いてくる。

 

「あのな~遥香。そんな頻繁に来るわけないだろうが」

 

「え~だってお兄ちゃんと小猫さん、最近仲良いじゃん。この前だって朝お迎えに来てたし」

 

「遥香、その話はやめてくれ。思い返すといろいろと複雑な気持ちになるんだ」

 

頭をおさえてお願いする。あれは今でも嫌な一日だった。小猫ちゃんと登校できたのは最高だったが、その後一日中吊られるってどういうこと!?マジあの学園恐ろしい。ガクガクブルブル

 

「……あの時はすみませんでした。私のせいで」

 

「いやいや、小猫ちゃんが謝ることじゃないよ。あれは……って何で小猫ちゃんがいんの!?」

 

声が聞こえる後ろを見てみると小猫ちゃんが立っていた。帰り道おれ一人だったよね!?

 

「……ずっと後ろにいましたよ?」

 

「マジで!?全然気づかなかった……」

 

「あ、小猫さんだ!いらっしゃい!」

 

「……はい、お邪魔します」

 

遥香が迎え入れ小猫ちゃんが入る。……母さん帰ってきたらまた驚くぞ。

 

「で、小猫ちゃん本日はどうしましたか?」

 

「……いえ、用事は無いんですが」

 

煮え切らない小猫ちゃんの態度。いつもと違うのは何となくわかるが。

 

「……祐斗先輩の話を聞いて、私も自分の過去を思い出して今日は一人で居たくなかったんです」

 

恥ずかしそうにモジモジする小猫ちゃん。部長の婚約パーティー以来、感情を表に出すようになったよなこの子。

 

「それでおれの家まで来たってこと?」

 

「……はい」

 

一人で居たくないからここに来た。部長や朱乃先輩のとこではなく。それっておれに気が…………ブシァ!ダラダラダラ

 

そこまで考えて鼻血を噴出させる。って量がちょっとヤバイ。このままだとガチで救急車行きだ。ティッシュティッシュ。

 

「……先輩何してるんですか」

 

「お兄ちゃん変態。何考えてんの」

 

二人の冷たい視線が突き刺さる。やめて!そんな目でおれを見ないで!

 

「ま、まぁおれのことはともかく、取り合えず小猫ちゃんは大歓迎だよ」

 

「うん!私も小猫さんと話したかったことがあるし」

 

「……ありがとうございます」

 

「ただ母さんがちょっとなぁ~」

 

そう呟くおれの言葉は早速楽しいガールズトークを始めた二人には聞こえていなかった。

 

 

 

次の日の昼休み

 

 

 

「―――ッ。あ、俺用事を思い出したわ。悪いけどちょっと出掛けてくる」

 

突然イッセーがこんなことを言ってきた。松田と元浜は不思議そうにしていたがおれは小声で、

 

「左腕か?」

 

「ああ、朱乃さんとこに行ってくる」

 

イッセーは小声で返して教室を出ていく。その時アーシアさんにも一応伝えていた。

 

「なぁ近衛、イッセーのやつ最近ああやってよく昼休み抜けるけど何してんだ?」

 

松田が聞いてくる。それに頷く元浜。

 

「うーん、それはなぁ……」

 

部長や朱乃先輩に左腕からドラゴンの気を吸ってもらってる、とは正直に伝えられないからな。どうしよう?……そうだ!こんな時はコイツらが流したあの噂を利用しよう!イッセーには申し訳ないが。

 

「実はな、部長と朱乃先輩のどちらかを連れて人がほとんど来ない場所に行ってんだよ。その後は人様には言えないような激しいプレイをしてるらしいんだ」

 

「なっ!?」

 

「てことは!」

 

「あぁお前らが流した噂もあながち嘘ではなかったってこと」

 

「イッセーのやつ!」

 

「なんて!」

 

「「羨ましいことを!」」

 

殺気に満ちた声で叫ぶ二人。ふははは!全て嘘だがな!これはこれで面白そうだから良いよな!

 

「てことはアーシアさんも!」

 

「小猫さんも!」

 

「「奴の毒牙に!」」

 

あ、あれ?予想外の展開になってきたぞ。

 

「いや、待て松田、元浜。おれはそこまでは―――」

 

おれの言葉を遮り、全てを理解しているぞって感じで頷く二人。

 

「近衛、それ以上は言わなくていい」

 

「お前の言いたいことはよーくわかる」

 

「いや、だから!そこまでは―――」

 

「「木場も襲われてるって言いたいんだろ」」

 

二人揃ってわけわかんないことを言ってるよ。あー面倒くせぇなコイツら!人の話は最後まで聞け!

 

「だから!小猫ちゃんとかは関係ないっての!わかったか!」

 

「え?それって……」

 

「イッセーではなくお前に……?」

 

あ、ヤバイ。またしても的外れな勘違いを生んでしまった。逃げないと!

 

「あーおれも急用思い出したわ。じゃあそう言うことだから!またな!」

 

そう言って全速力で教室から出ていく。しかし当然奴らも追いかけてくる。

 

「待てやごらぁぁぁぁ!」

 

「説明しろぉぉぉぉ!」

 

「「このロリコンがぁぁぁぁ!」」

 

「そんなこと叫びながら追いかけてくるんじゃねぇぇぇぇ!」

 

そのまま昼休みが終わるまで続いた。

 

ついでだが放課後、イッセーも無実の罪で追いかけ回された。すまん、イッセー。

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