「え!?あの写真の子、女の子だったの!?」
イッセーの言葉に驚く。昨日家に帰ったら教会の関係者が家に来てたんだって。でその一人が小さい頃この町に住んでいてイッセーと遊んでた子らしいんだけど、男の子だと思っていたら女の子だったのだ!これはびっくり。
「あぁ、俺も正直男の子だと信じてたから驚きを隠せなかったよ」
「そうでしたね、あの時のイッセーさんの驚き様はスゴかったです」
「ア、アーシア!そのことは内緒にしてくれって頼んだじゃないか!」
「あ、そうでした!すみませんイッセーさん!」
夫婦漫才なんてやりやがって、お前なんて部長に嫌われちまえばいいんだよイッセー!そんなことは絶対無いと思うけど。
「で?結局その二人は何しにこの町に来たんだ?」
「おーそうだった。実は昨日その二人が生徒会長のところに来たらしいんだよ」
「え!?教会の関係者がこの学園に!?」
またしても驚くおれ。よくのこのこと敵の懐に入ってきたな。相当のバカなのか相当の実力者なのか。
「その時、この町を根城にしている悪魔と話がしたいって言ったんだ」
「つまり部長と話しがしたいと」
「ああ、だから今日の放課後部室に来るって」
な、なんてことだ!このタイミングで教会関係者かよ。一難あるなこれは。
放課後
イッセーの言う通り、部室に二人の白いローブを着た若い女性がやって来た。
ソファーに部長と朱乃先輩、その向かいに教会の二人が座ってる。おれたちは部長たちの後ろに立っている。
一応みんな冷静な態度ではいるが、木場はいつ彼女らに斬りかかってもおかしくない雰囲気を纏っている。
重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは教会側の栗毛の女性だ。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
何してんの?そんな簡単に奪われていいものですか?あまりの事実に呆れ顔になるおれ。
「ん?三ヶ所から奪われた?エクスカリバーって一本じゃないの?」
「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」
呆れながらも口にした疑問に部長が答えてくれた。
「ゴメンなさいね。私の下僕に悪魔に成り立ての子たちがいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」
「はい。イッセーくんとその隣の人、エクスカリバーは大昔に戦争で折れたの」
栗毛の女性がうなずき教えてくれる。名前知らないからしょうがないけど隣の人は酷いな。
「今はこのような姿さ」
青髪に緑のメッシュをいれたもう一人の女性が傍らに置いていた、布に巻かれた長い物体を解き放つ。現れたのは一本の長剣だった。
「これがエクスカリバーだ」
ぞわっ!
何だこれ……?悪寒が半端ないぞ。見てるだけでこれが危険なのがわかる。
「大昔に戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新しい姿となった。その時七本作られたが、これはその内の一本」
へぇ~聖剣にもいろいろな過去があるんだなぁ。
「私の持っているのは『破壊の聖剣』。七つに分かれた聖剣の一つだ。カトリックが管理している」
得物を紹介し終えたのか再び布でエクスカリバーを覆った。
栗毛の女性も懐から長い紐の様なものを取り出す。すると、紐は意思を持ったようにうねうねと動きだし一本の日本刀となった。
「私のほうは『擬態の聖剣』。こんな風にカタチを自由自在にできるから、持ち運びがすっごく便利なの。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているの。こちらはプロテスタント側が管理しているわ」
自慢げに言う彼女。こちらからも同様なオーラを感じる。聖剣って恐ろしいな。
「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力をしゃべる必要もないだろう?」
「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔でも信頼関係を築かなければこの場では意味がないでしょう?それにこれくらいで悪魔に後れを取ることなんてないわ」
自信満々に言う栗毛の女性―――イリナ。絶対に悪魔に負けるはずが無いという自信が伝わる。
ふと隣から強烈なプレッシャーを感じ見てみると木場が物凄い形相で彼女たちと聖剣を睨んでいた。こんな木場初めてみたぞ。
「……それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」
部長が物怖じせず質問する。さすがは部長だ。
「エクスカリバーは各陣営が二本ずつ管理していた。残る一本は先の大戦で行方不明。そのうち各陣営なら一本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだのさ」
緑のメッシュをいれた女性―――ゼノヴィアが説明してくれる。堕天使といいこの町は好かれてますねぇ。
部長も同じようなこと思ったらしくため息をついていた。
「はぁー私の縄張りは出来事が豊富ね。で奪った連中は?」
「奪ったのは『神の子を見張る者』だよ」
それって確か堕天使の組織じゃなかったか?そんな奴らが何のために?
「奪った主な連中は把握している。グリゴリの幹部、コカビエルだ」
「コカビエル……。古の戦いから生き残る堕天使の幹部。聖書にも記された者の名前が出るとはね」
そんな大物が奪っていったなら尚更不思議だ。もしかしてコイツらが来た理由って奪還を手伝ってくれってことか?
しかしおれの考えはゼノヴィアの言葉に否定される。
「私たちの依頼―――いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入しないこと。―――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いにきた」
部長の眉が吊り上がる。
「ずいぶんな言い方ね。もしかして私たちがその堕天使と手を組んで聖剣をどうにかすると?」
「本部は可能性がないわけではないと思っている」
ぞくっ!
背筋を冷たい何かが通る。部長がキレたんだ。発するオーラがすごい怖い。
「上は堕天使と悪魔を信用していない。堕天使と悪魔が手を組んで、聖剣を神側から取り払えればどちらにも利益がある。だから先に牽制球を投げる。―――堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなたたちを完全消滅させる。たとえ、そちらが魔王の妹でもだよ。―――と、私たちの上司より」
「……私が魔王の妹だと知っているということは、あなたたちも相当上に通じているのね。ならば言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」
凛と言い放つ部長。か、カッコいい!さすがです!部長!
部長の言葉に笑みを溢すゼノヴィア。
「ふっ。それだけ聞ければ十分だよ。私は最初から魔王の妹がそんなことをするはずが無いと思っていたからね。さっきのは本部の意向を伝えただけだ。そうしないともしものことがあれば恨まれるのは私たち、教会の者なのでね」
「正教会からの派遣は?」
「ない。奴らは今回の件を保留にした。仮に私たちが奪還に失敗した場合に備えて、最後の一本を死守するつもりなのだろう」
部長の質問に淡々と答えるゼノヴィア。その姿には少し怒りが見えた。
「たった二人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還するの?無謀すぎるわ。死ぬつもり?」
「そうよ」
「私もイリナと同意見だが、できれば死にたくないな」
部長の言葉に決意の眼差しで応える二人。
「……相変わらずあなたたちの信仰は常軌を逸しているわね」
「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」
「まぁね。それに教会は堕天使に利用されるくらいなら、エクスカリバーがすべて消滅してもかまわないと決定した。私たちの役目は最低でも堕天使の手からエクスカリバーを無くすこと。そのためなら死んでもかまわない」
すばらしい覚悟だな。おれにもそれくらいの覚悟があればまた違う道だったのかもな……。
「二人だけでそれは可能かしら?」
「ただでは殺られんさ。一応秘密兵器もあるのでね」
両者睨み会う!さて先に笑うのはどちらか!?なんてバカなことを考えてると、話が終わったようで席を立つ二人。
「それでは、そろそろ帰らせてもらう。行くぞ、イリナ」
「そう、お茶は飲んでいかないの?お菓子ぐらい振る舞わせてもらうわ」
「いらない」
部長の提案を無下に断るゼノヴィア。感じ悪いな。
「ゴメンなさいね、それじゃあ」
手を降るイリナ。こちらはこちらで何か胡散臭い。そんなこと無いと思うけど。
部屋を出ていこうとしたゼノヴィアだが、何かを確認するように一点を見ている。その先にはアーシアさんがいた。
「……兵藤一誠の家で出会ったとき、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?」
アーシアさんが『魔女』の言葉に体を震わせる。イリナもゼノヴィアの言葉に気づいたようで、
「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん?追放され、どこかに流れたって聞いたけどまさか悪魔になっていたなんてね」
奴らの言葉にアーシアさんはただ戸惑うばかり。
「大丈夫よ。ここで見たことは上には報告しないわ。あなたの周りにいた方々にこの状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」
「それにしても悪魔か。『聖女』と呼ばれていたのに、人間堕ちるところまで堕ちるものだな。まだ、我らの神を信じているか?君からはそんな匂いがする」
わけのわからないことを言うゼノヴィア。
「……捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから……」
悲しそうな表情で言うアーシアさん。それに対しゼノヴィアは布で包まれた聖剣を突きだす。
「そうか。それなら今ここで私に斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神なら救いの手を差し伸べてくれるはずだ」
なんて野郎だ。この期に及んでアーシアさんを貶しやがった。お前にそれをする権利があるのか?
怒りの沸点が限界まで達したところで二人の間に入る人影が一つ。イッセーだ。
「アーシアにそれ以上近づくな。近づいたら俺が許さない。……お前らは彼女が救いを求めたのに助けなかった。友達が欲しがっただけだぞ?」
「『聖女』に友人なんて必要か?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に何かしらを求めた時点で『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけたはずなんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」
―――ッ!まだアーシアさんを貶すのか!?どこまで彼女を陥れれば気がすむんだ……!
イッセーも我慢の限界の様で拳を血がにじみ出るほど握りしめていた。
「……自分たちで勝手に『聖女』に祭り上げ、少しでも求めたのと違ったら見限る……。教会ってのはバカの集まりか」
イッセーの言葉に視線を鋭くするゼノヴィア。
「我らを侮辱するのか?貴様はアーシア・アルジェントにとって何だ?」
「家族だ。友達だ。仲間だ。だからアーシアを助ける。守るんだ!お前たちがアーシアに手を出すなら、俺はお前ら全員を敵に回してでも彼女を守る」
ゼノヴィアの言葉にハッキリと告げるイッセー。
「それは私たち教会すべてへの挑戦か?一介の悪魔にすぎない者が大口を叩くね」
再度聖剣エクスカリバーに手をかける。このタイミングだ!
「あーそうだ部長。実はおれの家にも聖剣があるんですよ。しかもそいつ変わった奴でして」
「こ、近衛?どうしたの、こんな時に?」
こんな時だからこそですよ。このまま行ったら神側対悪魔側の戦いに発展しそうじゃないですか。そんなのゴメンだよ!
「ほぉーそれは興味深いな。話を聞こうではないか」
よしよし食い付いてきた!
「そいつは使い手をほとんど選ばないんですよね。悪魔のおれが触っても全然拒否しなくて」
「そんな珍しい聖剣があるのか……。これは是非持ち帰りたいものだな。どうだ?そこの奴、私たちに渡す気はないか?」
「あるわけねぇだろ。そいつは父さんの形見だ。そんな大事なもんてめぇらなんかに渡すかよ」
「その言い方聞き捨てならんな。よし、決めた。お前、私と勝負しろ。それで勝ったらその聖剣は私が貰う」
あ、あれ?またしても思惑通りいきませんでしたよ?最近いつもこうだなぁ~。
「負けた場合は?」
「何でも一つ言うことを聞いてやろう」
うーんどうするかなぁ。おれの目的は戦いを起こさないことだからな。これを承諾したら意味が―――。
「その勝負、僕が引き受けよう」
おれが迷っていたらそんなことを言う奴がいた。木場だ。
「貴様は誰だ?」
「君たちの先輩だよ。―――失敗だったそうだけど」