「すみません部長。もう少しだったんですが……」
「いいのよ。あなたは争いになるのを止めようとしてくれた。それだけで私は嬉しいわ」
謝るおれの頭を撫でてくれる部長。うぅ優しいな部長は。
あの後、何とかして勝負を止めさせようとしたが両者それぞれの思惑があり結局、校舎裏で行われることになった。何故かイッセー対イリナの戦いも。
「部長、結界張り終えましたわ」
「ありがとう朱乃」
これでどれだけ暴れても余程のことがない限り周りにはバレない。
「では始めようか」
そう言って着ていたローブを脱ぐゼノヴィアとイリナ。その下には体にピッタリ張り付く戦闘服を身に付けていた。何てエロいんだ!こりゃこうなって正解か?
「……近衛先輩、顔がイヤらしいです」
「すみません」
ご、ごほん!で、では気を取り直して勝負を見守りますか!
「イッセー、ただの手合いとはいえ、聖剣には十分に気を付けなさい!」
「はい」
冷や汗を垂らしながら返事するイッセー。実はこの前に『THE聖剣の恐怖!』というビデオを視た。それには聖剣使いと上級悪魔が映っていたのだが、聖剣に斬られた悪魔は傷口から煙をあげていた。その場所が消滅したらしい。文字通り消えてしまうんだ。
思い出しただけでも恐ろしい。イッセーの反応には同感だよ。
今度は木場を見てみると、
「笑っているのか?」
対峙しているゼノヴィアの言う通り、木場は不気味な微笑みをしていた。その周りにはすでに何本か魔剣が出現していた。
「うん、そうだね。壊したくて堪らなかったものが目の前にあるからね。嬉しくてついさ。悪魔やドラゴンの近くにいれば、早めに出会えると思っていたがここまで早いとはね」
その言葉からは歓喜と憎悪の感情が伝わってきた。それほどまでに木場の憎しみは深いというのか……。
「……『魔剣創造』か。これまた特異な神器だ。『聖剣計画』の被験者に生き残りがいたと聞いたが、それは貴様か?」
木場は応えない。ただ全身から殺気を放つだけで。
「兵藤一誠くん、再会した男の子が悪魔になっていたなんて……ショックだったわ」
「……俺だって再会した男の子が実は女の子でしかも聖剣使いなんて衝撃だったぞ」
「それはそっちが勝手に勘違いしただけでしょう!」
「いーや、あの当時は誰もが男の子だと思ったね!」
珍しくイッセーが口喧嘩している。しかも女の子の相手に。昔の名残か?
「もう、何なのよ!せっかく十数年ぶりにイッセーくんに会えるから楽しみにしてたのに!実際会ってみれば悪魔になっていたし、今もこうやって喧嘩するし!こうなったらエクスカリバーで斬っちゃうんだからね!」
理不尽だぁー。その理屈は理不尽だ。ほら見ろ、さすがのイッセーでも固まってるぞ。
「と、取り合えずブーステッド・ギア発動」
『Boost!!』
音声とともに倍加が始まる。
「……『神滅具』」
「それって『赤龍帝の籠手』?こんな極東の地で赤い龍の帝王の力を宿した者と出会うなんて……しかもそれがイッセーくん。あなたどんな運命の下に生まれたの?」
「知らない。てか俺の方が知りたいよ。まぁでもこいつのおかげで部長たちとも知り合えたからいいんだけどさ」
「―――ッ!な、何よ何よ!過去の思い出より今の出来事!?もう怒ったわ!私が神の名の下に断罪するわ!」
そんなイッセーとイリナを尻目に木場とゼノヴィアはすでに斬り合いを始めていた。
「はあぁぁぁぁ!」
「ふっ」
ガキィン!
木場の高速の剣を受け止めた!エクスカリバーの使い手は伊達じゃないか。
「『魔剣創造』に『赤龍帝の籠手』。さらにアーシア・アルジェントの『聖母の微笑』か。我々が異端視している神器ばかりだ。悪魔になったのも必然かな」
「僕の力は無念のなかで殺された同志の恨みが生みだしたものでもある!この力で、エクスカリバーを持つ者を打ち倒し、エクスカリバーを叩き折る!」
木場の言葉一つ一つから恨み、憎しみ、怒りが伝わってくる。
「この!当たり……なさいよ!」
ブン!
「おっと!当たったら大怪我だろうがよ!」
「いいのよ!そうなったら私が看病してあげるから!」
こちらもこちらで喧嘩しながら戦ってるよ。あのイリナって子イッセーのこと好き何だろうなぁ。
『Boost!!』
これで二回目の倍加。通常のエクソシスト相手なら十分だが、今回は聖剣使いだ。まだ力を溜める必要があるな。
「……気を付けてください。イッセー先輩は手を触れた人の服を消し飛ばす力を持っています」
おおっとここで味方からの攻撃だ!イッセー選手どう対処する!?
「なんて最低な技なの!女性だけじゃなくて男性も!?悪魔に堕ちただけじゃなく、心も邪悪に染まったなんて!」
さらに追い討ちをかけてきたイリナ選手!これは強力だ!
「……小猫ちゃん、どうして敵にネタバレするの?それにあの技はあの後、各方面からありがたいお言葉を頂いて改善したよ。今は相手の武具を弾け飛ばすだけだよ」
おー!イッセー選手二人の攻撃を一度に対処したー!これはすばらしい!てかやっぱりあの技注意が食らったんだな。改善後の能力も使い勝手があるな。
「そ、そうなの?イッセーくん。信じていいの?」
「ああ、これは事実だ。部長に聞いてもらってもいい」
部長の方を見てみると肯定するようにウンウンと頷いてた。
「ふむ、貴様のとこの『兵士』面白いな」
「そうだね。やっぱりイッセーくんらしいよ」
木場とゼノヴィアも斬り合いしながらも同じ意見を言っている。
足下から新たに魔剣を一本生みだし手に持つ。二刀流でゼノヴィアに斬りかかる。
「気を取り直して!燃え尽きろ!そして凍りつけ!」
片方は業火、もう片方は霧氷が発生する。さらに『騎士』の特性で四方八方から斬りかかる。しかしゼノヴィアはそれを見切り、最小限の動きで受け流す。
「『騎士』の軽やかな動き、そして炎と氷の魔剣か。だが甘い!」
ギィィィィン!
「なっ!」
おいおい!木場の魔剣を一振りで破壊したぞ!木場も驚きを隠せてない!
「我が剣は破壊の権化。砕けぬものはない」
そう言って長剣をくるくる器用に回し、天に掲げ振り下ろす。
ドォォォォォォン!
ゼノヴィアを中心に大きなクレーターができる。嘘だろ!?たった一振りで地面を破壊しやがった!
「これが私のエクスカリバー、『破壊の聖剣』だ」
『破壊の聖剣』。その名も伊達じゃないってことか。
「……真のエクスカリバーではなくてもこの破壊力。七本全部消滅させるのは修羅の道か」
これを見てまだそんなことを考えるのか。おれには到底計り知れないな。
『Boost!!』
三回目の倍加。あともう二回くらいかな?これで『兵士』相手に圧倒できるからな。
「もう!ゼノヴィアったら、突然地面を壊すのだもの!土だらけだわ!でも、そろそろ決めちゃいましょうか!」
今の衝撃で冷静さを取り戻りたのか、さっきとは明らかに動きが違う。どうするイッセー!
動きが速くなったイリナに対しイッセーは避ける避ける。
「やるわね!さすがはイッセーくんよ!」
「ありがとう!これでもご主人様に鍛えられているのでね!格上相手でも結構頑張れるんだよ!」
『Boost!!』
「いくぜ、ブーステッド・ギア!」
『Expiration!!』
四回目の倍加で止めたイッセー。もう少し待った方がいいと思うが相手がそんなことさせてくれないか。
何とかして武器を弾け飛ばそうとするイッセーだが、イリナの動きは身軽で何度も避ける。
だがイッセーも少しずつイリナの動きに慣れたのか追い付いてきた。あともう少し!ってとこでまた避けられる。
今度はイリナから仕掛ける。横凪ぎに剣を振るうがイッセーはそれを後方にステップして避ける。
「……ゴメンなさい。あなたを少し見くびっていたようね」
「お褒めにあずかりこう―――ッ!」
突然地面に崩れ落ちるイッセー。見てみると腹部の辺りから煙があがっていた。さっきの攻撃でかすったみたいだ。それだけなのにイッセーは立ち上がることが出来ない。それほど聖剣は恐ろしいということだ。
『Reset!』
「あと一度パワーアップしていれば今のは確実に避けれたわ。いい勝負も出来たはずよ。―――あなたの敗因は、相手との力量差がわからずに神器を使っていること」
イリナの言葉にショックを受けるイッセー。またしても自分の弱さを知ることとなった。
「はああぁぁぁぁぁあああ!」
木場が気合いを発し、手元に剣を作りだす。
「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力!どちらが上か勝負だ!」
二メートルを越える魔剣を手にゼノヴィアに斬りかかる。しかし彼女は心底落胆したように嘆息しただけだ。
「残念だ。選択を間違えたな」
ガキィィィィィン!
ゼノヴィアの一閃で木場の魔剣が折れる。
「貴様の武器は多種多様な魔剣とその俊足だ。破壊力?はっ!笑わせるな。特性上、そんなものはいらないはずだ。それもわからないとは」
ドン!
「ガハッ」
木場の腹部に聖剣の柄頭が深く抉り込む。口から血を吐く木場。
「今ので当分は立ち上がれないよ」
そんな奴を一瞥し、踵を返した。
「……ま、待て!」
木場が手を伸ばすが、勝負の決着は誰が見ても明らかだった。
―――イッセーたちが負けたのだ。
「『先輩』、次はもう少し冷静になって立ち向かってくるといい。リアス・グレモリー、先ほどの話、よろしく頼むよ。それと、下僕をもう少し鍛えた方がいい。センスだけでは限界がくる」
部長からイッセーに彼女の視線が移る。
「ひとつだけ言おう。―――『白い龍』はすでに目覚めているぞ」
『白い龍』?確かイッセーの神器にいるのが『赤い龍』。何か関係があるのか?
「あーそれと、そこのお前。あの話忘れるなよ」
今度はおれを指差しながら言う。
「え?あれって無効になったんじゃないの!?」
「そんなわけないだろう。貴様の代わりにこの『先輩』が戦ったんだから」
嘘だー!こんなことならおれが戦うんだった!
「じゃあねぇイッセーくん!裁かれたくなったらいつでもおいで!アーメン」
胸で十字を切り去っていく二人。どうしよう。母さんになんて言おう。
「お疲れイッセー。怪我大丈夫か?」
「ああ、アーシアのおかげでもう塞がったよ。ありがとな、アーシア」
「い、いえ。イッセーさんのお役に立てるなら私も嬉しいので」
イッセーに頭を撫でられ赤面するアーシアさん。この光景も見慣れたものだな。
「待ちなさい!祐斗!」
部長の制止する声が聞こえる。そちらを見てみるとここから立ち去ろうとしている木場と激昂している部長の姿があった。
「私のもとを離れるなんて許さないわ!『はぐれ』になんてさせない。留まりなさい!」
「……僕は同志たちのおかげであそこから逃げだせた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めないといけない……」
そう言って、この場から木場は消えた。
「祐斗……どうして……」
部長の悲しそうな声が部室に響く……。