ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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第7話

「さて、そろそろ説明してもらいましょうか」

 

ファミレスを出ると匙がそんなことを言ってきた。

 

「俺、実際どうして木場とエクスカリバーが関係あるのか知らないんだよね」

 

そうか、こいつは木場の過去を知らないんだよな。だからさっきの会話でも静かにしてたのか。

 

「……少し、話そうか」

 

改めて木場の口から過去の話を聞いた。

 

それはもう、聞いているだけで怒りが混み上がってくる話だった。

 

カトリック教会で秘密裏に行われていた『聖剣計画』。被験者は剣に関する才能と神器を有した少年少女。

 

来る日も来る日も辛い非人道的な実験を繰り返す。木場たちは人間として扱われなかった。

 

しかし彼らは夢があった。生きていたかった。特別な存在になれる『その日』を待ち続けた。

 

三百六十五日、毎日毎日何度も何度も聖歌を口ずさみながら、過酷な実験に耐えた結果が『処分』だった。

 

「……みんな、死んだ。殺された。神に、神に仕える者に。『聖剣に適応できなかった』、たったそれだけで、生きながら毒ガスを浴びたのさ。血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、僕たちはそれでも神に救いを求めた」

 

木場が語るのを静かにおれたちは聞いていた。

 

仲間のおかげで何とか研究所を抜け出せた木場だったが、毒ガスはすでに彼の体を蝕んでいた。

 

逃げおおせた木場は、イタリア視察に来ていた部長に助けられて、今に至る。

 

「同志たちの無念を晴らしたい。いや、彼らの死を無駄にしたくない。僕は彼らの分も生きて、エクスカリバーより強いと証明しなくてはいけないんだ」

 

……そこまで悲惨だったとは。おれ、教会側の人間全員嫌いになりそう。

 

と、この話を聞いてすすり泣く奴が一人。匙だ。奴は木場の手をとると、

 

「木場!辛かっただろう!キツかっただろう!ちくしょう!この世には神も仏もいないのか!俺は今の話で非常にお前に同情している!わかるぞ、その気持ち!」

 

お、おおー。意外と熱い男だな、匙元士郎。

 

「よし!俺は決めたぞ!お前たちに協力するぜ!会長がなんだ!どんなしごきだって受けてやる!だが、その前に必ず俺たちでエクスカリバーを撃破だ!」

 

ま、まあ結果オーライみたいになってしまったが、これで全員の参加表明が出された。

 

「じゃあ、早速話を進めていく。五人で探してもいいが二つに分けたいと思う」

 

「あ、それならおれ一人でいいぜ」

 

イッセーの言葉に提案する。だが当然そんな提案がすんなり通るわけがなく、

 

「一人でか?それは危険すぎる。せめて二人にしてくれ」

 

「大丈夫大丈夫。いざとなったら全力で逃げるから。この中だったら木場の次に速いしな。だからお前ら四人で行動してくれ」

 

「……わかった。ただし、見つけたら一人で突っ込まず必ず俺たちに連絡しろ。それが条件だ」

 

渋々オーケーを出したくれたイッセー。

 

「じゃあ今日の夜から行動開始だ」

 

『了解!』

 

こうして『エクスカリバー破壊団』が結成された。

 

 

 

 

『なあ、近衛。どうして一人だけで行動することに拘ったんだ?』

 

夜、予定通り散策を始めると九十九からそんなことを聞かれた。

 

「いや、ここ最近木場の話を聞いてから『復讐』について考えたくてさ。一人の時間が欲しかったんだよ」

 

『お前さんの父親についてか?』

 

「そうだ」

 

父さんはおれのせいで死んだ。だから父さんを慕っていた人間がおれを恨み、復讐を考えてもおかしくない。実際、何度か手紙を送られてきた。

 

母さんだっておれのことを恨んでいても当然だ。家を捨ててまで愛した男性をおれのせいで殺されたんだから。内心どう思っているのが気になって仕方ない。

 

おれ自身、逆恨みだが父さんの家の者たちを殺したいと何度も思った。その度に力を求めた。……なんかおれ、昔から力を求め続けたんだな。

 

『俺はそんなことないと思うがな』

 

「うん、おれもそれは考えたし、母さんにも何度も言われた。けど、やっぱりおれのせいで父さんが死んだことにはかわりない。だからどうしても考えちまうんだよな」

 

復讐か……。そんなことをしても死んでしまった者は生き返らないし、そんな事を望んでなんかいない。それくらいわかっているんだがね。

 

「なぁクロ、お前はどう思う?」

 

おれは隣を歩いている漆黒の毛並みをもった二つの尾の狐、使い魔のクロに声をかけた。犬っぽい名前だが案外気に入ってもらえた。

 

「くぅ~ん」

 

おれの言葉に体を擦り付けてくるクロ。

 

「はは、お前は優しいな。こんな不甲斐ないご主人様に付いてきてくれるなんて」

 

この日はそのまま何事もなく時間が過ぎていった。

 

 

 

数日後

 

 

 

「近衛、そっちの調子はどうだ?」

 

「全然ダメだ。現れる気配もない」

 

「こっちもだ。そろそろやばいな。部長たちに少し勘づかれてる」

 

「「はぁぁぁぁぁ~」」

 

イッセーとともにため息を吐く。そんなおれたちに近づく人影が二つ。

 

「よっ、どうした?そんな辛気くさい顔して」

 

「それより、あの話はどうなった?休日の件」

 

「なんだ、松田に元浜か。それならアーシアと桐生と小猫ちゃんは来るぞ」

 

「「マジか!?よっしゃぁぁぁあ!!」」

 

とても喜ぶ二人。そこまでか。

 

実は今度の休日に半日を遊び倒す計画を立てている。それにはおれたち四人と、アーシアさんと友達の桐生、小猫ちゃんに木場が集まる予定になっている。

 

この前聞いたらアーシアさんと小猫ちゃんは快く返事をしてくれた。木場も一応オーケーしてくれたが、今の状態だとな……。

 

「じゃあ予定通りでいいんだな?」

 

「ああ、そうなるな」

 

笑い合う松田とイッセー。おれはこういう何気ない瞬間が大好きだ。だから、木場にも想いを果たしてもらって心の底から笑ってもらいたい。

 

 

 

 

「よし、今日も頑張りますか!」

 

『一人寂しく探索な。ククク』

 

おれはあの日から一人で捜し続けている。何度かイッセーや小猫ちゃんから一緒に捜そうと誘いを受けたが断った。

 

「黙れ九十九。おれが望んでんだからいいだろう。それにお前らがいるんだからおれは一人じゃない」

 

隣にいるクロの頭を撫でながら言う。まったく、茶化すのもいい加減にしろ!

 

「あ、そうだ。なぁ九十九、今のおれの実力で聖剣使いや堕天使の幹部と戦うことはできるか?」

 

前に疑問に思ったことを九十九にぶつける。

 

『うーん、堕天使の幹部は無理だがあの聖剣使い二人なら何とかなるな。毎日俺の課題をクリアしているからな』

 

そう、ライザーの一戦が終わってから力の使い方がまだ甘いと言われ、九十九が出す課題を毎日こなしていたんだ。それはそれはもう部長の特訓にひけをとらないほど過酷で悪魔じゃなかったら死んでると思う。

 

「そうか。ならコカビエルは無理でもフリードなら何とかなるかな?」

 

そんな結論を出して今日も捜す。

 

しかし、いくら歩き回っても全然現れないので時間だし帰ろうかと思ったその時、

 

「―――ッ!」

 

遠くから魔力の波動を感じる。しかもこれはイッセーたちの魔力だ!てことは敵と遭遇したか!?

 

「場所は……あっちか!」

 

方向をある程度特定して、『疾風』を使い全速力で向かう。

 

走ること五分。ついに見つけた。場所は前に『はぐれ悪魔』を退治した廃工場だった。

 

「イッセー!みんな!無事か!?」

 

「近衛か!俺たちは何とか無事だ。でも木場がフリードとバルパー・ガリレイを追いかけて行っちまった。ゼノヴィアとイリナも」

 

おれが辿り着いたときはすでに戦いは終わっていた。

 

イッセーの話を聞くと、こちらも収穫が無いと思い帰ろうとしたその時フリードの奴が現れた。みんなの力で何とか追い詰めることが出来たが、突然バルパー・ガリレイが現れフリードに助言し形成が逆転する。その後はゼノヴィアたちも現れ部が悪いと判断した奴らは、例の光の玉を取り出してそそくさと逃げていったんだって。

 

戦闘態勢をイッセーたちが解き、息を整えていたら後ろに人の気配がした。

 

「力の流れが不規則になっていると思ったら……」

 

「これは、困ったものね」

 

聞き覚えのある声がする。後ろを振り向くと、

 

「あなたたち、これはどういうこと?説明してもらうわよ」

 

険しい表情の部長と会長が立っていた。

 

おれたちは一気に血の気が引いた。

 

 

 

「……エクスカリバー破壊ってあなたたちね、何てことをしようとしたの」

 

額に手を当てため息をつく部長。

 

「匙、あなたはこんなにも勝手なことをしていたのですね?本当に困った子です」

 

「ひぃ!す、すみません、会長!」

 

迫りくる会長に土下座する匙。あの勢いは何処にいったのやら……。

 

「近衛、よそ見しない!」

 

「は、はい!すみません!」

 

「まったく、今回のことは下手をすると悪魔界全体に影響を及ぼすことだったのよ?それはわかってるの?」

 

「はい」

 

「もちろんです」

 

「……はい」

 

部長の言葉に頷く。部長が考えている規模とおれたちが考えていた規模の違いはあるがそれは理解しています。

 

『すみません、部長』

 

三人で部長に頭を下げる。こんなことで許してもらえるとは思っていないが、こんなことでもしないと部長に申し訳ない。

 

ペシッ!ペシッ!

 

奇妙な音がしてそちら見てみると、匙が会長に尻を叩かれていた。しかも手には魔力が込められている。

 

「あうっ!あうっ!会長ぉぉぉぉ!許してくださいぃぃぃぃぃ!」

 

「ダメです、あなたみたいな、悪い子は尻叩き千回です」

 

うわーそんなに叩かれるのか。ご愁傷さまです。

 

「イッセー、近衛、小猫」

 

『は、はい!』

 

ギュッ

 

「……バカな子たち。こんなことして私が心配しないとでも思ったの?まったく……」

 

名前を呼ばれたと思ったら部長に抱きしめられた。まずはおれとイッセーが抱きしめられ、その次に小猫ちゃんが抱きしめられた。うぅ、部長の優しさが心に染みます。おれ絶対部長を裏切ったりしません!

 

「うわぁぁぁぁん!会長ぉぉぉぉ!あっちはいい感じで終わってますよぉぉぉぉ!」

 

「よそはよそ、うちはうちです」

 

ペシッ!ペシッ!

 

まだ叩かれ続けている匙。はたしていつ終わるのやら。

 

「さて、イッセー。あなたもお尻を出しなさい」

 

「え?ぶ、部長、さっきので許してくれたんじゃ……」

 

「そうはいかないわ。下僕の躾も主の役目ですもの。さぁ!あなたもお尻叩き千回よ!」

 

「そ、そんなぁぁぁぁぁ!」

 

ご愁傷さまだなイッセー!これも部長の愛だ。ありがたく受けとれ。

 

「近衛、あなたもよ?」

 

「え?」

 

イッセーがどうなるか楽しみにしていたら部長がそんなことを言ってきた。それって……。

 

「……ご愁傷さまです、先輩」

 

ポン

 

「ともに死のうぜ」

 

「い、嫌だぁぁぁぁぁぁ!」

 

小猫ちゃんからは慰めの言葉。イッセーからは同情をかけられおれの尻は死んだ。

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