ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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第4章
第1話


「おっはよー!」

 

「「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」」

 

「またか!」

 

ガシッ

 

朝、教室に入るといつかと同じように罵倒とともに二つの拳が飛んできた。しかし、前回とは違い浮かれていなかったため反射的に受け止めた。

 

「危ねぇな……。何しやがる!松田、元浜!」

 

「うるせぇぇぇ!黙って殴られろ!」

 

「貴様はそれだけのことをやった!」

 

「……今度は何やったってんだよ……はぁ」

 

そう言いながら探ってみる。……まぁ、心当たりがないこともないけどな。

 

「で、今回は何に怒っていらっしゃいますか?」

 

「その顔は原因に気づいているな?」

 

「……まぁな」

 

「じゃあ言ってもらいましょうか」

 

ズイッ

 

松田と元浜が迫る。血走った目で近寄るな。怖すぎるわ。

 

「はぁ……。……おれが小猫ちゃんと付き合い始めたことだろ?違うか?」

 

『え?』

 

瞬間、教室の空気が固まる。……あれ?なにこの空気。おれヤバイこと言った?

 

確認するようにイッセーの方を見ると、手のひらを上にして首を横に振っていた。お前やっちまったなとでも言いたげな顔で。

 

やっべぇぇぇぇぇぇ!コイツらのことだからてっきり既に知っているかと思ってたぁぁぁぁ!ど、どうしよう?

 

おれがどうやってここから逃げ出そうか考えていると松田と元浜じゃない別の二人が、

 

「近衛さん!それは本当ですか?そうならおめでとうございます!」

 

「桜……いや、私もクラスメートと同じように近衛と呼ばせてもらおう。近衛、付き合うとは恋仲になることか?」

 

アーシアさんとゼノヴィアだ。二人はここに来てまだ日が浅いから学園の黒い部分に染まっていない。だから、純粋にお祝いの言葉を送れるしそんなことを聞いてこれる。

 

「あ、ありがとうアーシアさん。これは本当だよ。そうだよゼノヴィア。よ、よく恋仲なんて昔の呼び方を知ってるな」

 

「そうですか!これは後で小猫ちゃんにもお祝いを言わないといけませんね!」

 

「やっぱりか。いや、調べていたらそんな言葉が出てきたのでね。気になったから覚えてしまったのだよ」

 

二人の純粋な目に思わず返してしまう。眩しいな。おれには直視出来ないよ。

 

すると今度はあの二人が、

 

「近衛くん。それはどういうことかな?」

 

「僕たちに教えてくれるかい?」

 

叫ばず静かに淡々と丁寧に聞いてきた。生気の宿っていない瞳を向けながら。こ、怖ぇぇぇぇぇぇ!これならまだ叫ばれる方が断然マシだ!!!

 

「い、いや……それは……ですね」

 

「「それは?」」

 

「えっとー…………すみませんでしたぁぁぁぁぁあ!!!」

 

二人の威圧感に何故か謝ってしまい教室から逃げ出す。しかし、当然奴らは追いかけてくる。

 

「待てやごらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「逃げんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

『貴様には死あるのみ!!!!!』

 

松田と元浜だけでなくクラスの男子も追いかけてくる。鬼の形相で。

 

「もう、嫌だぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!」

 

おれの絶叫が校内に響き渡る。

 

 

 

その頃の小猫

 

 

 

「塔城さん。ちょっといい?」

 

「……うん。なに?」

 

「最近二年生の桜先輩とよくいるけど何かあった?」

 

「……いや、特にないけど何で?」

 

「あの人変態三人組の一人じゃない?だから弱味でも握られてるのかと―――」

 

その時、校内放送がかかった。

 

ピンポンパンポーン

 

『全校生徒に告ぐ。全校生徒に告ぐ。先ほど二年生の桜近衛が、一年生の塔城小猫と付き合っていることが判明した。これは緊急事態だ。もう一度言う。これは緊急事態だ。奴は今逃走中。見つけ次第確保し会議室まで連れてきてほしい。発見者および連行者には褒美を与える。以上』ガチャン

 

ピンポンパンポーン

 

「……えーとこれは……?」

 

「……そういうこと」

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……死ぬかと……思った」

 

あの後何とか逃げ切ることに成功したおれ。隣にはイッセーがいる。

 

「お疲れ。ほら、飲みな」

 

ポイッ

 

「サ、サンキュー」

 

カシュ ゴクゴク

 

「プハァ~。あ~生き返る。それにしてもマジでどうなってんのこの学園」

 

「そうだな。さすがに今回のこれには俺も驚いた。まさか校内放送を使ってくるとは」

 

そう、松田たちから逃げていたら突然元浜がいなくなったんだ。何処に行った?と思ったら放送がかかり、全校生徒におれと小猫ちゃんが付き合っていることをバラして協力要請なんてもんをしやがった。おかげで途中から追いかけてくる人数が増えて超焦った。

 

「今回は九十九が中にいたから良かったものを。ありがとな、九十九」

 

『なに、礼には及ばん。それよりお前も大変だな。人間は嫉妬深くて怖いものだ』

 

「俺もそう思う。これから大変だろうけど頑張れよ」

 

イッセーにも聞こえるように九十九が言った。それに同調するイッセー。どうやって周りに聞こえるようにしているのか不思議なところだ。

 

「小猫ちゃんのためにも頑張るが……お前だっていつかこうなるだろ。もしかしたらおれより酷いかもな」

 

「そうだな……はぁ」

 

「どうしたイッセー。ため息なんかついて。調子でも悪いのか?顔色も若干青いし」

 

「いや、昨日ちょっといろいろとあってな。今日は少し血が足りないんだよ」

 

よくわからないことを言うイッセー。血が足りない?どんなことをしたらそんな事態に陥るんだよ。

 

「なんだ、世のために献血でもしたきたか?」

 

「それならまだいいさ。部長とアーシアと一緒に風呂に入って鼻血を出しすぎたんだよ」

 

淡々とでも少し恥ずかしそうに話すイッセー。

 

「俺が風呂に入ろうとしたら、先にアーシアが入っててヤバイ!と思って謝り出ようとしたら後ろから部長がやって来たんだ。すると、『二人待ちもあれだから三人で入りましょうか』って言ってさ三人で入ったんだよ。そこからは天国であり地獄だった」

 

一息つくように手に持っている飲み物を飲む。そしてまた話し出す。

 

「最初は部長もアーシアも仲良く入ってたんだけど、部長が俺と一緒に浴槽に入ってあれこれしてたらアーシアが拗ねて部長と同じことをしてきたんだ。部長とアーシアのダブル攻撃のおかげで今まで耐えてた俺の鼻が決壊を起こしてそこからの記憶はない……はぁ」

 

話が終わったようでまたしてもため息をついたイッセー。それに対しおれは開いた口が塞がらず言葉を失っていた。

 

「おい、近衛。おい!大丈夫か?」

 

そんなおれを心配して声をかけるイッセー。そのおかげでなんとか言葉を取り戻した。

 

「あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと衝撃的過ぎただけだ。……てか部長とアーシアさんと一緒に風呂だぁぁぁぁぁ!?どうなったらそんな羨ましいことになるんだよ!この女たらし!」

 

「うるせぇぇぇ!それはこっちが聞きたいわ!アーシアとは前にも風呂で鉢合わせするし、部長は相変わらずスキンシップが激しいし!嬉しいけど正直戸惑ってんだよ!このロリコン!」

 

「んだとごらぁぁぁ!そんな贅沢な悩みで悩んでんじゃねぇ!どうせ毎日部長とアーシアさんとあんなことやこんなことしてんだろ!」

 

「してねぇよ!それならお前だって小猫ちゃんにいかがわしいことしてんだろ!」

 

「なんだと!」

 

「やるか!?」

 

「上等」

 

「かかってこい」

 

散々口喧嘩をしてからおれたちはイッセーの家以来の取っ組み合いを始めた。それは朝のHRの始まりを告げる鐘がなるまで続いた。

 

 

 

その日の部活

 

 

 

「イテテテテ、ったくこの野郎。本気で殴りやがって。手加減しろっての」

 

「それはお互い様だろ。お前の方が力強いんだから俺の方が被害はでかいわ」

 

「……動かないでください。貼りづらいです」

 

「イッセーさんもです。動くと傷に障りますよ?」

 

おれたちは互いに小猫ちゃんとアーシアさんに介抱されながら、朝のことについて罪を擦り付けていた。このような傷はアーシアさんの神器で一発で治るのだが、これくらいで使わせるのもあれだったので普通に治療することにした。

 

「どっちもどっちよ。それより近衛。どうして小猫と付き合い始めたことを私に教えなかったの?イッセーには教えたのに、少し不平等ではないかしら。あなたにとって私はそれくらいの存在だったの?」

 

部長がおれに向かって少し拗ねた調子で責めるように言った。こんな様子の部長もたまにはいいかな。

 

そんなことを思いながら口を開く。

 

「いやいや、そんなわけないじゃないですか!部長はおれにとってたった一人の主なんですから。別に隠そうとしたわけじゃないですよ。ただ部長にとって小猫ちゃんは大切な眷属で妹みたいな存在かな、って考えたら伝えるのは気が引けまして……」

 

最後の方は言葉を濁すようにごもごもと言った。だって意気地のない男だって思われるかもしれないじゃん!

 

その言葉を聞いて部長は息を吐いた。

 

「はぁ~。別に怒っているわけじゃないのよ?ただ同じ眷属同士で付き合うなら、真っ先に主に伝えるのが義理ではない?って話。べ、別にあなたに小猫がとられた嫉妬で言ったわけじゃないからね!」

 

「そんなことを言ったらそうですよって言ってるものじゃないか」

 

イッセーがポツリと呟いた。当然その言葉は近くにいたおれたち三人にしか聞こえなかった。だから突然笑い声を漏らしたおれたちに部長は怪訝な瞳を向けた。

 

「こ、こほん。とにかく、これから何かあったら逐一報告すること。近衛だけじゃなくて他のみんなもよ、わかった?」

 

『はい!』

 

返事をすると部屋の中央にある魔方陣が光だす。これは誰かがおれたちグレモリー眷属を召喚しようとしている証拠だ。

 

それを朱乃先輩が調べて誰を召喚したいのか告げる。

 

「これは……イッセーくんですわね。例の高級マンションの方ですわ」

 

「またあの人か……」

 

イッセーが少しめんどくさそうに呟く。そう思うのも無理はない。実際、一回呼び出してからイッセーのことを気に入ったらしく毎日と言っていいほど呼び出していた。ただ、羽振りは良いらしくこちらが請求する以上の物をくれるらしい。

 

「まぁ、ここでどう言おうと何も変わらないからな。じゃあいってきます」

 

転移魔方陣が使えないためいまだに自転車で通っているイッセー。しかし、それも依頼者には好評らしくイッセーも案外嫌っていない。だが時間はかかるので依頼が来たらすぐに向かわなければいけない。

 

「いってらっしゃい、イッセー」

 

部長に送り出しの言葉をもらって部室をイッセーが出ていく。すると、再び魔方陣が光だした。二連続とは珍しい。今度は誰だ?

 

再び魔方陣を調べた朱乃先輩から呼び出された人の名前が告げられる。

 

「今度は近衛くんですね。イッセーくんと二人で行ったあの人ですよ」

 

「あぁ、小向さんですか。珍しいですね。普段なら小猫ちゃんを呼び出すのに」

 

「……料理のお願いじゃないですか?」

 

あーなるほど。おれがあの人に呼ばれる理由のほとんどがそれだもんな。なら張り切って行きますか!

 

「では!おれもいってまいります!」

 

「えぇ、いってらっしゃい」

 

イッセーと同じく部長から送り出しの言葉をもらって魔方陣の中に入る。光が強くなり部室が見えなくなると体に違和感が発生する。これは転移するとき特有の感覚だ。少し変な感じだが嫌いではない。

 

その感覚が消え光も徐々に薄くなり次第に周りが見えてきた。そこは部室ではなく別の部屋だ。

 

「お、来た来た。こんばんわ近衛くん」

 

「こんばんわ、小向さん。早速ですが今日の依頼は?」

 

挨拶もそこそこに早速仕事を始める。最初の時から何度か依頼を頼まれているしさっきのでだいたいはわかるけど。

 

「うん、いつも通り料理を作ってくれ。お代はしっかり払うから」

 

「了解です。リクエストとかありますか?」

 

「うーん。夏だけど鍋にしてもらうかな」

 

「鍋ですか。わかりました。冷蔵庫の中勝手に使わせてもらいますね」

 

キッチンに行きまずは土鍋を探す。一人暮らしだからか整理整頓されていて探し物はすぐに見つかった。

 

そこからはベースとなる味付けをして肉や野菜、豆腐などを入れていく。

 

二十分後

 

「よし、できた!ほい小向さん」

 

「おー、美味しそうだ。では早速いただきます」

 

ふーふー、はむっ モグモグ

 

「うん、旨い!やっぱり近衛くんの料理は美味しいね」

 

「ありがとうございます。そう言ってもらえるだけで嬉しいです」

 

料理を作るやりがいは食べてくれる人の笑顔だよな。それを見るとまた頑張ろうと思える。

 

それから小向さんは三人前くらいあった鍋をペロリと完食した。

 

「ふぅ、食べた食べた。それじゃ今回の対価はなんだい?」

 

「そうですね。家にある食材を使ったのでそれが対価ですね」

 

「そう?じゃあこれは僕からのお礼ってことで」

 

そう言って某テーマパークのクッキー缶を取り出した。おー久しぶりに見たなこの缶。

 

「ありがとうございます。眷属みんなでいただきます。他に何かありますか?」

 

「いや、特にないよ。今日はありがとうね。助かったよ。またお願いするかもしれないからその時はよろしく」

 

「もちろんですよ。おれと小向さんの仲ですから。じゃあおれはこれで」

 

部屋の中央に移動し左手をかかげると左手から魔方陣が現れ床に描かれる。そのまま魔方陣は光だしおれの体は包まれた。

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